こんにちは、仲井です。
…何事もそうですが、成功の秘訣は「同じことを何回も繰り返すこと」です。野球の練習でも、ランニング、ストレッチ、キャッチボール、トスバッティング、ダッシュ、素振り…毎日同じことをやっていますよね。そこで、これから過去問を3~5回、テキストを横に置いてじっくり解くことをお勧めします。なぜなら、本番では毎年同じような知識が繰り返し出題されているからです。「過去問は最高の予想問題」といえるのです。
さて、今回は、民法の代理がテーマです。代理の分野は幅広いですが、出題の中心となる「無権代理」を整理しましょう。
- 無権代理って何?
- 相手方を守る制度の概要
- ここがポイント!
- その他の注意点
無権代理って何?
A(本人)が代理権を与えていないのに、B(無権代理人)が、C(相手方)と契約してしまったなどという場合が「無権代理」です。この場合において、本人Aが、無権代理を追認するか、追認拒絶するか、ハッキリしてくれないとき、相手方Cの地位が不安定といえます。「その契約の効力が生じるのか生じないのか、どっちかに確定してくれよ」というわけです。そこで、Cを保護する方法が4つあります。
相手方を守る制度の概要
1催告権
まずは、本人Aに対する「催告権」があります。相手方Cが本人Aに対して「認めるかどうかハッキリしてよ」と言えます。
そして、一定期間内に本人Aからの返事がない場合、「追認拒絶」とみなされ、本人に効果が帰属しないことに確定します。本人Aとしては、人が勝手にやったことにいちいち答えていられません。答えなかったからといって、全て追認となってしまったら、たまったもんじゃありません。放っておけばよいのです。
2取消権、履行・損害賠償請求
次に、無権代理人Bに対する関係で、相手方Cは、「取消権」の行使や、「履行または損害賠償請求」ができます。
すなわち、相手方Cは、本人Aの追認があるまでは、無権代理に基づく契約を取り消すことができ、これによって契約の効力が生じないことが確定しますし(「こんなトラブルに巻き込まれるのはゴメンだから、この取引から金輪際手を引きます」)、また、一定の条件を満たせば、無権代理人Bに対して、代理行為の履行または損害賠償請求をすることができます(「一番悪いのはBなんだから、Bが現物あるいはお金を渡せ」)。
なお、履行・損害賠償は、とても重たい責任ですので、制限行為能力者には請求できません(問題文に年令が出てきたら少し気にかけてください)。
3表見代理
さらに、本人Aに落ち度があって、代理権があると相手方Cが信じるにつき正当な理由(=善意無過失)がある場合、「表見代理」が成立します。「表見代理」の主張が認められると、本人Aは、「Bが勝手にやったことなんだから効力がない」と言えなくなります。これで本人に効力が生じることが確定しますね。
この本人Aの落ち度は、①委任状を間違えて渡してしまうなど、本人が代理権を与えていなかったのに「与えたよ」と表示した場合、②賃貸を頼んだのに売買をされた場合など、本人が与えた代理権の範囲を越えた場合(そんないい加減な者に、そもそも賃貸等の代理権を与えたこと自体が、本人の落ち度です)、③与えた代理権が、破産などで消滅しているのにもかかわらず、契約をされてしまった場合(そんないい加減な者に、かつて代理権を与えたこと自体が、本人の落ち度です)の3つのパターンがあり、この落ち度は、たいてい問題文に書いてあります。
ですから、その3つのパターンを問題文から読み取りさえすれば、あとは、相手方Cが善意無過失(代理権があると信じるにつき正当な理由がある)かどうかをチェックすればよいのです。
逆に、問題文に「無断で」契約したなどと書いてあれば、本人Aに落ち度はなく、無権代理は成立しないことになります。
ここがポイント!
以上が概要ですが、相手方Cは、無条件で保護されるわけではありません。相手方Cの保護の度合が高くなるのに比例して(=AやBの責任が重たいなど、効果が大きくなるのに比例して)、相手方Cに求められる条件も厳しくなっていきます。以下のように考えましょう。
1催告権
まず、「催告権」は、相手方Cの条件が一番緩やかで、悪意の(無権代理と知っている)相手方Cにも認められます。「相手方Cは、無権代理人Bにうまく言いくるめられているかもしれないし、それぐらい認めてあげてもいいのではないか。なぜなら、本人Aとしては、悪意の相手方Cに催告権を認めても、催告を無視すれば追認拒絶となり、何ら不都合はないのだから」というわけですね。
2取消権
「取消権」は、善意の(無権代理と知らない)相手方Cに認められます。しかし、相手方Cが悪意の場合、最初は本人に対して効力を生じさせるべく契約していたのに、後になってその契約を効力が生じないことにしてしまうのはおかしいので、取消権は認められません。
3履行・損害賠償請求、表見代理
そして、「履行または損害賠償請求」は、無権代理人にとても重たい責任を負わせますし、「表見代理」は、いわば無権代理で無効だった契約が有効になってしまうわけですから、相手方Cには、一番厳しい条件、すなわち、善意無過失であることが要求されます(「取消権」は、善意であれば足り、無過失までは要求されません)。
以上の通り、催告権は悪意でも可能、取消権は善意のみ可、履行・損賠請求と表見代理は善意無過失のみ可と押さえましょう。
その他の注意点
最後に、4つの保護の制度は、あくまで相手方Cのための制度であって、Bなどを保護する制度ではありません。そこから2つの注意点が導かれます。
まず、他の民法の分野と同じく、図を必ず書いて、ABCのうち、誰が本人、無権代理人、相手方なのか、最初にしっかり把握することです。
たとえば、先に述べた取消権は、無権代理人には認められませんので、人物を取り違えてしまうと、設問に対する答えが逆になってしまう可能性があります。
次に、先述の4つの保護の制度は、イメージとして相手方Cが選べるものです。
つまり、表見代理が自動的に成立するわけではなく、相手方Cは、表見代理を主張してもいいし、表見代理を主張せずに、履行または損害賠償を請求してもいいわけです。
つまらないヒッカケにひっかからないようにしましょう!
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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