毎年、分譲マンションでは管理組合の通常総会が開催されます。各議案の中に『役員選任の議案』があります。
今回は、管理組合役員の選任手続きや資格要件等について考えてみましょう。
管理組合役員の「選出」というと、“単に選び出すだけのこと”に対し、「選任」は“任務に就かせる”という意味合いがあります。また、「互選」という場合は、翌年度の役員を決める際に、役員の中からある役に就く人を互いに選挙して選びだすことをいいます。
建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」という。)は、管理者の規定があるのみで、その他の役員の規定は設けていません。
マンション標準管理規約では、理事長、副理事長、会計担当理事、理事(理事長、副理事長、会計担当理事も一括して「理事」と呼ばれます。)および監事といった役員を置くものとしています。
理事長、副理事長および会計担当理事は、「理事の互選」により選任されます。
1.役員の選出方法
管理組合役員はどのように選ぶの?
管理組合によっては、下記①~③のような個別の選出方法を採用するケースや、マンションの戸数や階数に応じて合理的な選出方法として、いろいろな組み合わせパターンを採用している管理組合もあります。
①立候補制:役員を公募して、立候補者の中から選出する方法です。
②推薦制 :現役員が中心となって、役員候補者を選出する方法です。
③輪番制 :各フロアーをグループ別にして、その中から輪番で役員を選出する方法です。
役員選出の基本は、輪番制です。
新築マンションでは、「全員が役員を公平にする」という前提で、比較的導入しやすいのが輪番制です。
初年度の総会時にあらかじめ役員選出順番を決めておき、該当年度ごとに役員を区分所有者全員が交代で持ち回る制度です。
しかし、年数が経過しますと、売買や引越しなどで空室が増え、高齢者、賃貸などの特別事情も増えてきます。
また、「役員選出方法は公平であるべきだ」と理想論を言った人が理事会にも出てこない場合もあります。
輪番制に支障をきたすような場合は、当然、都度の見直しが必要です。
2.役員の選任方法
マンション標準管理規約の「役員」に関する条文には、こう書いています。
・理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
・理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。
輪番制採用の場合、輪番制で選出された方を、議案書に記載し、総会の場で承認を諮ります。
可決承認された場合、晴れて役員になれます。その後、話し合い(互選)で役職を決めます。
101号室 ○○さん
201号室 □□さん
301号室 ▽▽さん
401号室 △△さん
501号室 ××さん
ここで間違いやすいのは、輪番制で選出された役員を、総会で一括承認してしまうことです。
「この方々が今期の役員となります。よろしいでしょうか? 異議なし!賛成!」
総会後の互選で、理事長さんは○○さん、副理事長さんは□□さん、会計担当理事は▽▽さん、理事は△△さん、次に監事は××さん、という選出・選任方法で運営されている管理組合を多く見かけますが、
「監事は、総会での承認が必要」が正解です。
まあ、ここまでは教科書的ですが、実際の互選となるといろいろとあるようです。
- 話し合いで、活発に意見が出て、さっさっと役職を決めた。
- 輪番で選出された役員が総会の場に出席せず、役職を決められない。
- 仕方なくクジ引きで役職を決めたが、頑なに理事長職を受けない。
- 役員5名のところ、2名しか出席せず、互選どころではない。
- 理事を引き受けたものの、理事会に顔を出さず、行事にも参加しない「幽霊理事」がいる。
先が見えない「曲がったレール」でも、終着駅に向かわないといけません。
3.役員の資格要件
役員の資格要件の緩和ってなあに?
家庭の事情や仕事の都合で理事会に出席できない、などという理由をつけて役員を拒否する方や、区分所有者の高齢化や賃貸化などにより、役員のなり手を確保することが難しくなっているマンションがあります。
平成23年7月27日、国土交通省から、理事会(執行機関)の適正な体制等の確保を目的に、改正マンション標準管理規約が公表されました。
役員のなり手不足等の実態を踏まえ、非居住の区分所有者を取り込まなければ、管理組合運営が円滑に進まない現実があって、役員の資格要件の緩和策として、「現に居住する組合員のうちから」を「組合員のうちから」に変更し、総会で選任できるようになりました。
外部居住者の役員就任に道を開いたことになります。管理規約を改正することにより、部屋を賃貸している区分所有者も役員に就任することができます。
管理組合役員は、家族の者でもなれるの?
区分所有法上は、管理組合役員となりうる方の資格に制限はありません。
管理規約を改正すれば、「区分所有者の配偶者や親子など、密接な関係がある方など」も役員にできます。
「区分所有者のみ」の制限を解除し、「区分所有者の家族もなれる」と制限を緩和するマンションも増えてきております。
余談になりますが、法人が区分所有者の場合、法人関係者も役員になることもできます。ただし、毎回違う社員が理事会に出席するとなるとマンションの事情が分からず、面倒な面もあります。この場合、管理組合役員の任務に当たることを「当該法人の職務命令として受けた者」に限定するなどの条件を付けるなど、規約や細則に定めておくことが望ましいです。
役員の任期は何年なの?
通常、役員任期は1年または2年任期が多いようです。一方、個人的資質・モラル、能力に着目して総会において選任された長期役員の方もおられます。一方、「不適切な役員」による長期継続も見られます。この場合、管理の混乱、内部対立等の問題が顕在化していることが多いです。
健全なマンション管理を阻む危険を予防するために、
- 総会などで役員の半数は必ず入れ替わること
- 継続して役員をする場合、役員年度制限を設ける
- 再度役員を引き受ける場合、年度間隔制限などを設ける
など、条件を設ける必要もあります。
いずれにしても、管理組合は最高意思決定機関ですので、総会の場で十分に議論することが必要ですね。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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