いよいよ消費税率の改定(8% → 10%)が近づいてきました。
マンション管理組合においても、消費税率の改定は大きな影響をもたらします。これまで税率は( 3% → 5% → 8%) と段階的に引き上げられてきましたが、直近で予定されている10%への改定が税率の最終ゴールではなく、今後においても更に税率が変更する可能性もあると考えられます。
マンション管理組合の運営においては、管理費や修繕積立金などの収入面においては不課税のため、管理費そのものの額を変更しない限り、消費税率が改定しても管理費の額には直接的な影響はありません。
消費税率改定により、自動的に管理費が値上げとなることはないことに安心される方もいるかもしれませんが、実はマンション全体の維持管理のため管理組合が支出している費用(管理委託費・共用電気代など)には消費税が課税されるため、消費税率の改定等は、管理組合の収支には大きな影響を与え続けているのです。
●消費税率の変遷と管理組合の収支シミュレーション
例)1986年築、100世帯、管理費は全戸1万円/月、毎月90万円の維持管理費用が必要
1988年 税率:0% 【年間収入】1,200万円 【年間支出】1,080万円 【収支】+ 120万円
1989年 税率:3% 【年間収入】1,200万円 【年間支出】1,112万円 【収支】+ 88万円
1997年 税率:5% 【年間収入】1,200万円 【年間支出】1,134万円 【収支】+ 66万円
2014年 税率:8% 【年間収入】1,200万円 【年間支出】1,166万円 【収支】+ 34万円
2019年 税率:10%(予定) 【年間収入】1,200万円 【年間支出】1,188万円 【収支】+ 12万円
消費税制度が導入される前の1988年と比較して、消費税率が10%になったときには、年間で約100万円の支出が増えることになります。管理組合として管理費の収入額に変化はありませんが、支出額だけが増えることになりますので、対策を講じないとそのうちに収支がマイナスに転じてしまうことが考えられます。
一般的に、この対応としては、維持管理費用の支出削減などで対応をしている管理組合が多いと思いますが、適切にマンションを維持管理をして行くうえでは、支出の削減にも限界があるため、収支を健全な状態に保つためには、管理費等の値上げは避けられないと感じています。
また、今後においても、消費税率がさらに改定される可能性もあると思いますので、その都度、管理費等を値上げを議案化して区分所有者の同意を得るのは管理組合(理事会)としても大変な労力が必要だと思います。
そこで、今回は、マンションの管理規約において、消費税率の引き上げ(引き下げ)に連動して、消費税相当額を区分所有者へ負担いただく規定の導入をご提案したいと思います。
このような規定を設けることで、消費税率改定の管理組合収支への影響を抑えることができると思います。
上記の消費税相当額を、仮に「税制負担金」という名称で、以下に管理規約への追加案を考えてみましたので、参考にしていただければと思います。
(例)
第○条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する費用に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金
三 税制負担金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。
3 第1項第三号の税制負担金は、管理費および修繕積立金の総額に消費税法等にもとづく税率を乗じて算出するものとし、税率等の改定があった場合には、その改定に連動してその額を変更するものとする。
田中一直
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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