隣の家が火事に!?知っておきたい『失火責任法』

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こんにちは。あなぶきインシュアランス香川です。入社して火災保険を取り扱い始めてから6年経ちましたが、『火災保険』といえど『火災』の事故対応をしたことは実はほとんどありません。いつもは、台風による風災事故とか、給排水設備からの漏水事故とか、なんかわからないけど壊れちゃったという事故とか、そんな事故ばかりです。
そんな中、先日火災による事故の報告が入りました。隣家が火事になり、その火で建物に損害が出たという内容です。修理費用はばかにならないです!建物の修理費用を隣家に出してもらうことはできるんでしょうか?

1.損害賠償責任は法律で定められている

故意または過失によって他人の権利を侵害したる者はこれによって生じたる損害を賠償する責めに任ず
引用:民法 第709条

要するに、自分が他人に迷惑をかけた場合、きちんと相手に対して損害賠償をしないといけないということが民法709条に定められているということです。相手から損害賠償してよ!と言われたら、自分に責任がある部分についてはきちんと賠償しなければなりません。もっとも、相手から言われる前に、自分が悪いと思ったらちゃんと損害賠償はしましょう。

では、始めにお話ししたようにお隣の家から火が出て自分の家も火事になったとしましょう。
「お宅の火事でうちが燃えたんだから、お宅に責任あるでしょ?!修理費用払ってよ!!」
って言いたくなりますよね。
お隣さんは修理費用を払ってくれるんでしょうか?

2.失火責任法とは

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
引用:失火ノ責任ニ関スル法律

「民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときはこの限りではない。」という内容です。

民法第709条の規定は上でお話した損害賠償についての条文ですが、失火の場合はこれは適用しません、ということですから、失火の場合は失火者つまり火元は損害賠償の必要はないということです。
失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)は明治32年に定められたものをずっと使っています。当時の日本家屋は木造がほとんどでした。木造住宅は燃えやすいため、火災が生じた場合に延焼して損害賠償範囲が無限に拡大する可能性があることを懸念して制定された法律です。

このため、隣家からのもらい火で自分の家が火事になったとしても、隣家は賠償責任がないので自分でどうにかするしかありません

3.重大な過失(重過失)とは?

さて、失火責任法の条文をみると、『ただし、重大な過失があったときはこの限りではない』と書いています。
重過失として認められるのは、わずかな注意さえ払っていれば予見、防止できたのにそれを漫然と見過ごしたような場合です。誰がどう考えても危ないとわかるし、少し注意していれば火事が起こるのを防げたのに、その人の不注意で第三者に損害を与えたのであれば、火元は損害賠償をしてしかるべきということですね。

では火元に重大な過失がある場合というのはどういう事例でしょうか?
ここでは実際に重大な過失として判断された事例を紹介します。

①天ぷら油
主婦が台所のガスこんろにてんぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして、台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火し、火災が発生した例(東京地裁昭和57年3月29日判決)。

②暖房器具
電気こんろを点火したまま就寝したところ、ベットからずり落ちた毛布が電気こんろにたれさがり、毛布に引火し火災になった例(札幌地裁昭和53年8月22日判決) 。

・点火中の石油ストーブから75cm離れた場所に蓋がしていないガソリンの入ったビンを置き、ビンが倒れて火災が発生した例(東京地方裁判所平成4年2月17日判決)。

・石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火して火災が発生し、隣接の建物等を焼損したことにつき、重過失があったとして不法行為責任が認められた例(東京高裁平成15年8月27日判決)。

③寝たばこ
寝たばこの火災の危険性を十分認識しながらほとんど頓着せず、何ら対応策を講じないまま漫然と喫煙を続けて火災を起こした者には重過失がある(東京地方裁判所平成2年10月29日判決) 。

これらはあくまで事例の一つですから、個々の事案によって法律上の判断が異なる点は承知しておいてください(事案ごとに細かい事故状況などが異なるためです)。

4.賃貸物件で失火した場合には要注意!

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
引用:民法 第415条

これは、例えば賃貸物件の退去時に、部屋を元の状態に戻して返さなければならない場合が当てはまります。
失火責任法では民法第709条については重過失がなければ免除すると書いていますが、民法第415条については何も触れていません。つまり、賃借人(物件を借りている人)は賃貸人(物件を貸している人。家主)に対し修繕した状態で建物を引き渡す契約上の責任があり、この契約責任は失火責任法により免除されません。

もし、賃貸の部屋を借りていて火事になった場合、その部屋を直すのは持ち主である家主ではなく、借りている人ということです。
もちろん、その火が隣室にも燃え広がってしまった場合、その部屋は契約関係にないので失火責任法により修繕する必要はありません。

5.まとめ

今回は、主に法律の話を中心に火災についてお話をしました。基本的には失火責任法によって損害賠償責任は負わないものの、重過失が認められた場合にはその限りではありません。しかも、火事の場合は損害額が高額になることも多いですから、万が一に備えて個人賠償責任保険に入っておくべきだと思います。
なお、賃貸物件を借りる際には、不動産会社から『借家人賠償責任』という特約のついた火災保険に入るよう、義務付けられることも多いです。
この二つについては下記のブログでも触れていますので、ぜひご確認ください。

さまざまな場面で活躍する「個人賠償責任保険」とは
お部屋を借りる方へ!賃貸用の火災保険とは?

個人賠償責任保険、借家人賠償責任の保険料はそんなに高いものではありません。小さな負担で大きな補償を買うことができるコスパの良いものです。ご自身が契約されている保険の内容を確認し、もし補償がないようであれば是非一度代理店にご連絡されるのもよいのではないでしょうか?

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