みなさん、こんにちは仲井です。今回は、「制限行為能力」の分野の「成年被後見人」にスポットをあてて説明します。では、早速中身に入っていきましょう。
目次
- 成年被後見人の主なポイント
- 近年の改正点について
成年被後見人の主なポイント
1 成年被後見人とは
成年被後見人は、経済的な判断能力を欠いている者というイメージであり、このような者に保護者を付け、契約等の法律行為を制限すること等を通じて、本人の財産等の保護を図るのが成年後見制度です。
民法では「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる」「後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する」と規定されています。
2 成年被後見人の法律行為
民法では、「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない」とされています。
すなわち、「事理を弁識する能力を欠く常況」のもとでの法律行為ですので、取消しの範囲は広く、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外は、取り消すことができます(たとえ、同意を得た行為でも、単に権利を得る行為(たとえば、物をもらうこと)でも、行為の意味が分かっていないため、取り消すことができることにご注意ください)。
この規定があることによって、成年被後見人は、契約等の効力を争う際に、「私は契約時に経済的判断能力を欠いていた」ということをいちいち証明しなくて済みますし、契約等の相手方にとっても、「この人は成年被後見人だから、契約をしても、後で取り消されるかもしれないな」と予測がつきやすいのです
なお、契約等の「取消し」自体は、原則として、成年被後見人が単独でおこなうことができます。
3 成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可
成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可についても触れておきましょう。
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
成年被後見人の居住の安定を図るための規定で、たまに本試験で出題されます。
近年の改正点について
ここからは、成年被後見人に関する近年の改正点について、説明します。
1 成年後見人による郵便物等の管理
家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物等を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができます(この嘱託の期間は、6か月を超えることができません)。郵便物の転送を嘱託できるということですね。
そして、成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができます。もっとも、成年後見人は、その受け取った郵便物等で成年後見人の事務(=財産に関するものというイメージで十分です)に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければなりません(なお、この交付された郵便物等を除き、成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った郵便物等の閲覧を求めることができます)。
2 成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限
成年被後見人が死亡した場合、成年後見人の任務は終了するのですが、それでは火葬ができないなど、一定の不都合が生じてしまいます。
そこで、成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、一定の行為をすることができます。
一定の行為として、①相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為、②相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済、③その死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(①②を除く)が挙げられます(ただし、③の行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません)。
…これぐらいにしておきましょう。
成年被後見人の分野は細かいですが、知識があれば簡単に解けてしまいます。また、この分野は、近年の改正点も含みますし、宅建業法でも用語が登場するので、その意味でも一応準備しておきたい分野といえるでしょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
最新記事 by 仲井悟史 (すべて見る)
- 宅建合格講座!宅建業法|「手付金等の保全措置」を解くときのポイント - 2020年8月28日
- マンションで居住者イベントを実施する3つのメリット - 2019年4月6日
- マンション入居者イベントのオススメ企画|初心者向け - 2019年3月27日