こんにちは、仲井です。今回から、宅建合格講座「権利関係」の「建物の区分所有等に関する法律」(建物区分所有法)の学習をします。まず、今回は、管理組合の「管理者」の分野について、管理組合法人の「理事」の内容も交えながら、説明をいたします。では、早速中身に入っていきましょう。
目次
- 管理者の権限
- 区分所有者の責任等
- 選任および解任
管理者の権限
マンションの区分所有者は、全員で、建物等の管理を行うための団体(管理組合)を構成しますが、区分所有者が多人数・多忙であることが多いため、区分所有者に代わって一定の権限を行使する者が置かれる場合がある、ということは、イメージができるのではないでしょうか。
これが「管理者」で、管理者は、共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、および規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負います。
それらの職務に関し、管理者は、区分所有者を代理します。
以上のように、管理者は、広範囲にわたり、区分所有者を代理しますが、この管理者の代理権限に関し、たとえば、「この場所は権限がありません」「一定金額以上の権限はありません」等、制限を加えることが考えられます。もっとも、このような内部的な制限がある場合、「管理者には広範囲な代理権がある」と思っている第三者を保護する必要性が生じることが考えられます。そこで、少し細かい知識ですが、建物区分所有法上、「管理者の代理権に加えた制限は、善意の(=制限を知らない)第三者に対抗(=主張)することができない」とされています。
区分所有者の責任等
代理人が、代理権の範囲内で、代理行為をおこなった場合、行為の効果は、本人に帰属します(これは、「権利関係」民法の「代理」の分野で学習しましたね)。そこで、管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為については、区分所有者が責任を負いますが、建物区分所有法上、区分所有者の責任の割合は、共用部分の持分割合と同一の割合とされています(ただし、規約で建物等の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合によります)。
選任および解任
1 管理者の選任および解任
では、管理者は、どのように選任・解任されるのでしょうか。
区分所有者は、「規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって」、管理者を選任し、または、解任することが「できます」。管理者を置くことは任意である、ということがポイントです。
なお、解任についてですが、「建物区分所有法や規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、(民法の)委任に関する規定に従う」とされていることにより、管理者の解任や辞任には正当な理由は不要とお考えください(民法の「委任」は強い信頼関係で結ばれた契約ですので、契約をやめること等について理由は必要ありません)。
また、集会の決議以外にも、管理者を解任する方法があり、管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、「各区分所有者」は、その解任を裁判所に請求することができます。
2 管理組合法人について(理事の選任・解任等)
ここで、管理組合が「管理組合法人」になった場合における、代表者の選任等についてコメントしますが、その前に、「管理組合法人」について説明します。
まず、「法人」とは、株式会社のように、「法」によって自然「人」(=自然を愛する人という意味ではありません!人間という意味です)と同様の取扱いをすることを認めたものをいいます。すなわち、法人は、自然人と同様に、権利等を有する能力(権利能力)が認められています。したがって、株式会社の場合、団体自身が債権等の権利を有したり、債務を負ったりするわけです。これによって、取引等の便宜が図れます(逆に、犬には権利能力がないため、犬小屋の所有権はないということですね)。
話が少し横道にそれてしまいましたが、管理組合は、一定の条件のもと、このような「法人」になることができます。すなわち、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨ならびにその名称および事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによって、「管理組合法人」とすることができます。この管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理します。
そして、管理組合法人には、「理事」を置か「なければなりません」。理事の設置は必要的である、ということです。なお、このことから、「理事が欠けた場合または規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任(「解任」は含まれない)により退任した理事は、新たに選任された理事等が就任するまで、なおその職務を行う」とされています(少し細かい知識です)。
以上、管理組合の管理者や管理組合法人の理事の選任・解任にかかわる内容を見てきました(管理組合法人の成立要件である「4分の3」という数字も大事です)
なお、ほかにも管理組合法人に関しては、特別な規定があります。この機会に、以下のことも押さえておきましょう。
1 管理組合法人の理事は、管理組合法人を代表する
2 管理組合法人には、管理組合法人の財産や理事の業務の執行の状況の監査等をおこなう「監事」をおか「なければならない」(必要的)。
…今日はこれぐらいにしておきましょう。
建物区分所有法は、近年、細かいところからも出題されています。学習していて「細かいな」と感じても、ざっと内容を読んでおくだけでもだいぶ違ってきます。もちろん、細かい知識にとらわれて、過去問題集で繰返し出題されている基礎的な知識をおろそかにしてはならないのは言うまでもありません。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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