電子帳簿保存法と収入印紙

竹林貞治

皆さんこんにちは。

ホームライフ管理株式会社の管理本部です。

2024年1月1日より電子帳簿保存法が施行されましたが皆さんは対応できていますか?

当然、ホームライフ管理でも電子帳簿保存法の対応を行ってますが、先日、社員の方からこんな質問を頂きました。

「取引先から電子で書類を頂いたので電子帳簿保存法の対象になると思うのですが、この書類を印刷した場合収入印紙が必要になりますか?」

さて、この質問に対して皆さんは答えられますか?

何となくこうかなと答えられる人は多いかもしれませんが、自信をもって答えられる方は少ないのではないでしょうか。

今回は改めて収入印紙はどんな時に必要なのか、そもそもとして電子帳簿保存法の対象となると収入印紙が不要となる根拠、そして質問に対する答えとして取引先から受け取った電子文書を印刷したら印紙税はどうなるのか?を見ていきましょう。

印紙税とは

まず収入印紙、つまり印紙税はどのような場合に課されるのかを確認するために印紙税法を見てみましょう。

印紙税法の第三条には次のように記載があります。

印紙税法 第三条

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

引用:印紙税法 | e-Gov 法令検索

 

つまり「課税文書」を作成した時に印紙税が課されるということですね。

課税文書の内容についての詳細は省きますが、同法の別表第一にて規定されており、20種類あります。

主要なものとしては契約書や領収書が課税文書になります。

これで印紙税がどんな時どんなものに課されるかが少しイメージできたと思います。

電子で作成した文書には収入印紙が必要なのか

それでは次に課税文書が電子で作成された場合には印紙税が課されるのかを見ていきましょう。

電子で作成された場合の取り扱いについて参考となる内容として、「印紙税法基本通達第44条」「国税庁の文書回答事例」「第162回国会の質問注意書及び答弁書」の三つをご紹介します。

・印紙税法基本通達第44条

まずは印紙税法基本通達の第44条を見てみましょう。

印紙税法基本通達 第44条

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

引用:第7節 作成者等|国税庁

同条を確認するとわかるとおり、「用紙等」つまり紙に記載して交付することが「作成」となります。

つまり紙を使用していない電子データを送信する場合、印紙税は対象とはなりません。

・国税庁の文書回答事例

続いて国税庁のホームページにて掲載されている文書回答事例を確認してみましょう。

その中に「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」という内容があります。

こちらの事例の別紙1-3から一部抜粋します。

印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。

上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。

しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

引用:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について 別紙1-3

つまり電子メールで送信したとしても課税文書の作成には当たらない為、印紙税は課されないということになります。

・第162回国会の質問注意書及び答弁書

最後に第162回国会の印紙税に関する質問注意書とそれに対する答弁書を確認しましょう。

質問注意書より一部抜粋

五 電子商取引でもインターネット上で契約書などが交わされることがあるが、添付ファイルなどの形で交わされる電子文書については印紙税の課税対象外となっている。

引用:印紙税に関する質問主意書:質問本文:参議院

答弁書より一部抜粋

五について

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

引用:印紙税に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院

上記質問注意書と答弁書を確認すると、電子文書に関しては印紙税の対象外ということがわかります。

以上三つの内容を確認しましたが、全て電子で作成された文書には印紙税は課されないという結論となることがわかります。

電子文書を印刷した場合の取り扱い

さて、電子文書であれば印紙税が課されないということが改めてわかったところで今回頂いていた質問に関して考えてみましょう。

質問は「取引先から電子で書類を頂いたので電子帳簿保存法の対象になると思うのですが、この書類を印刷した場合、収入印紙が必要になりますか?」でしたね。

この質問に答えるために国税庁の質疑応答事例の「写、副本、謄本等と表示された契約書の取扱い」にある照会要旨と回答要旨を一部抜粋して確認してみましょう。

【照会要旨】

一つの契約について契約書を正副2通作った場合には、そのうち正本だけに印紙を貼ればよいのですか。

それとも正副の2通とも印紙を貼らなければならないのですか。

また、副本としないで写しとした場合はどうなりますか。

【回答要旨】

単なる控えとするための写、副本、謄本等は、原則として課税文書にはなりませんが、写、副本、謄本等であっても、契約当事者の双方又は相手方の署名押印があるなど、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかである場合には、課税文書になります。

引用:写、副本、謄本等と表示された契約書の取扱い|国税庁

上記の回答でわかるとおりただ印刷をして控えとした場合であれば課税文書とはなりません。

これは電子文書の場合でも同様であり、控えとしての印刷であれば、そもそもとして最初に確認した課税文書の作成にはあたりません。

よって印紙税の対象外であり質問の回答としては、控え等として印刷した場合であれば収入印紙は必要ないという回答になりますね。

最後に

いかがでしたでしょうか。

今回は社員の方から頂いた質問をもとに電子帳簿保存法での印紙税の取り扱いを見ていきました。

インボイス制度に続き電子帳簿保存法と変化が多く大変ではございますが、本記事が少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。

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竹林貞治

ホームライフ管理
管理本部 人事総務部 総務課
竹林 貞治(たけばやし さだはる)

10数年人事総務部で過ごし、約4年ほどマンション管理員をサポートする部署へ異動。現在は人事総務部へ出戻ってきました。
支えるだけの『縁の下の力持ち』にとどまらず、自ら動くことによってチームが活発になる『潤滑油』になることをモットーにしています。

マンション管理員をサポートする部署在籍時はマンション管理員による的確な事務手続きや担当フロントとの良好なコミュニケーション、
居住者のためにより快適な空間を提供するためにマンション管理員のスキル向上をサポートしていました。
人事総務部へ異動となりましたが引き続きマンション管理員研修にも携わることとなりましたのでこれからもよろしくお願いいたします。


ちなみに人事総務部では障がい者雇用に携わり手話を覚え、現在も聴覚障がいの社員と手話で会話していることが特技かな??
週末はボーイズリーグや少年野球の審判をして体を動かし健康も気にかけていますが一向に痩せないのは何故だろう・・・。

保有資格
・マンション管理士
・管理業務主任者
・警備員指導教育責任者
・宅地建物取引士
・マンション維持修繕技術者
・賃貸不動産経営管理士
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