こんにちは、新年最初の投稿をする木須です。
今回は、少し趣向を変えて、建築家についてのお話。リフォームを主の業務にする私として、建築に関わることも公開していこうと思います。みなさん、昨年、東京・上野にある『国立西洋美術館』が世界遺産に登録されたと、話題になっていたのをご存知でしょうか?『国立西洋美術館』は、“近代建築の三大巨匠”の1人「ル・コルビュジェ」という建築家が設計した建物です。
“近代建築の三大巨匠”とは、コルビュジェをはじめ、「ミース・ファン・デル・ローエ」、「フランク・ロイド・ライト」の3人を指します。
「誰???」「そんな人、知らない。」
という方も多いことと思いますが、現在の建築物の考え方や建て方、指針等といった礎を作った建築家たちといっても過言ではありません。
そこで世界遺産という観点から、この御三方を順にご紹介しようと思います。知っている建物も登場するかもしれません。
今回は第1回目として、「ル・コルビュジェ」の世界遺産から。まず、簡単に「ル・コルビュジェ」とはどんな人物なのか、をご紹介します。
- ル・コルビュジェとは
- 国立西洋美術館の何がすごいのか
- 世界各地のコルビュジェ世界遺産
- まとめ
ル・コルビュジェとは
ル・コルビュジェ(Le Corbusier)1887 – 1965
※本名:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ(Charles-Edouard Jeanneret-Gris)。
※ル・コルビュジェとは、画家としての側面もある自身が創刊した雑誌のペンネーム。
スイス生まれ、フランスで活躍した20世紀を代表する近代建築理論家の巨匠。
時計の文字盤職人の父と、ピアノ教師の母の次男として生まれます。
家業を継ぐために、時計職人を養成する地元の装飾美術学校で彫刻と彫金を学んでいた1907年、当校の校長がその才能を見出し、建築設計の道に進むことになります。
その7年後には、鉄筋コンクリートの建築方法「ドミノシステム」を発表。この建築方法は、鉄筋コンクリート造の水平スラブ(いわゆる床・天井を構成する面)と、周囲でそれを支える最小限の柱、各階へのアクセスを可能とする昇降装置(階段等)を構成要素とした考え方で、現在のマンション構造の最初の考え方とも言えます。
1922年に、従兄弟のピエール・ジャンヌレと共に事務所を設立してからは、数々の建築を手がけます。1925年 パリ万国博覧会(アールデコ博)では、当時の建築を否定するような装飾のない『レスプリ・ヌーヴォー館』、1931年 コルビュジェの主張する“近代建築の五原則(ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面)”の代表作と言われる『サヴォア邸』、第二次世界大戦後の1952年「ドミノシステム」を実践した集合住宅『マルセイユのユニテ・ダビタシオン』、1955年 鉄筋コンクリート造での自由な形状を表現した『ロンシャンの礼拝堂』など、様々な代表的な建築を設計しています。
また、当時の装飾品や芸術品としてのインテリアの脱却を図るため、機能性を持たせた設備としての家具「LCシリーズ」を1929年~発表。
最先端の金属やアルミの素材の加工技術や機能的なデザインは、時代を超えた今でも傑作として人気を集めています。
1965年、南フランスのカプ・マルタンで海水浴中に心臓発作で、78歳死去。
現在、コルビュジエの建築模型や図面・家具は、20点以上がニューヨーク近代美術館に収蔵されており、現行の第8次紙幣の10スイス・フランにはル・コルビュジエの肖像と作品が描かれています。
国立西洋美術館の何がすごいのか
ル・コルビュジェという人物が、なんとなく「そんな人なんだなぁ」ということがわかったかと思いますが、最初に挙げた西洋美術館の写真を見ても、「ただの地味な四角いコンクリート造りで、どこにでもありそう・・・」と思った方も多いでしょう。
事実、世界遺産登録になった7月当時は「どこがすごいの?」と話題になっていました。
日本の世界遺産と言えば、日光東照宮や法隆寺、姫路城や金閣寺含めた古都京都地域といった、誰もが目を見張る建物が多いのは確かです。
今回の『国立西洋美術館』が、なぜ世界遺産に登録されたのか?少し紐解いていこうと思います。
今回は、日本にある『国立西洋美術館』含め、コルビュジェの17作品が登録になりました。最もコルビュジェが活躍したフランスが10作品、次いでスイスが2作品、ドイツ・アルゼンチン・ベルギー・インド・日本がそれぞれ1作品という結果です。
実は、2009年と2011年に登録を見送られ、今回が“三度目の正直”。それは、前回2回までの推薦書の内容が“偉大な建築家”を前面に押し出していたため、ユネスコから「人物を評価することはできない」とされていました。
今回の推薦書の内容を、作品の影響力に置き換え、【ル・コルビュジェの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献】という、
近代建築の新しい考え方を革新的な作品で示して、世界に広げたこと。が評価されたのです。
ですので、そもそも日本にある『国立西洋美術館』単体が世界遺産になったのではなく、世界各地にあるコルビュジェの建築作品たちが世界遺産になったわけです。
それを踏まえて、もう一度『国立西洋美術館』を見てみましょう。
建物の1階は、柱で支える半外のピロティ形式になっています。
(前述した、コルビュジェが掲げる近代建築の五原則の1つですね)
屋上を平らにして屋上庭園にし、屋根以外に別の用途に使っていることも、昭和34年当時としては、画期的でした。
ゴシック調の王宮貴族の権力を示すような優美な建築が主だったヨーロッパにおいて、産業革命後、社会が新しく時代の中心となった中級階級のために、機能を重視した生活空間を目指しました。その中で、コルビュジェの鉄筋コンクリートを使った「ドミノシステム」や「近代建築の五原則」の理論のもと、床+柱の水平垂直の建築が台頭しだしたのです。
「現代だと当り前」「今だったら普通に建設できる」は、コルビュジェの理論や考え方があったから。
「ただのコンクリートの四角い箱」と思うのは、コルビュジェの建築理論がいまなお受け継がれ、浸透していることを意味します。
それこそが“すごい”ことで、世界遺産に登録された理由です。
日本には、国立西洋美術館の目の前にある東京文化会館や、神奈川県立図書館・音楽堂・・・など、数え切れないほどのコルビュジェの弟子たちが設計した建築が各地に存在します。
“見慣れた”ものには、歴史が存在し、誰かが先駆者になっているもの。近代建築においては、ル・コルビュジェがその1人ということです。
世界各地のコルビュジェ世界遺産
そんなコルビュジェのすごさがわかったところで、今回世界遺産登録された他16作品をご紹介します。
1. ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(フランス)
銀行家の2世帯邸宅。
現在はル・コルビュジエ財団の本部が入っています。
2. ペサックの集合住宅(フランス)
3. サヴォワ邸(フランス)
行政官の夫妻が週末を過ごす別邸として建築。近代建築の五原則の代表作品として非常に有名。
4. ナンジェセール・エ・コリ通りのアパート(フランス)
最上階の2フロアは、ル・コルビュジエのアトリエと住居があり、生涯を通じた住居となりました。
5. マルセイユのユニテ・ダビタシオン(フランス)
第二次世界大戦後の復興期に建てられた集合住宅。自身が提唱した「モデュロール」が最も厳格に適用されている建築。
6. サン・ディエ工場(フランス)
メリヤスなどの織物工場。
7. ロンシャンの礼拝堂(フランス)
カニの甲羅をモチーフにした屋根が特徴的な礼拝堂。
“箱”の形状を超えたコルビュジェの代表作。
8. カップ・マルタンの小屋(フランス)
地中海に臨む、妻イヴォンヌに贈った休暇小屋。
9. ラ・トゥーレットの修道院(フランス)
10. レマン湖畔の小さな家(スイス)
両親のために建てた長さ20m、幅3mの小さな家。
11. イムーブル・クラルテ(スイス)
ル・コルビュジエが最初に手がけたアパートメント。
12. ヴァイセンホーフ・ジードルングの住宅(ドイツ)
1927年に開催されたジードルング住宅展に出展された住居。
13. クルチェット邸(アルゼンチン)
外科医のための、住居+診療所の邸宅。
14. ギエット邸(ベルギー)
画家の依頼で建てられた3階建て箱型邸宅。
15. チャンディーガル(インド)
パキスタンの分離独立に伴い、インド高官の依頼によって進められた都市計画。写真はその中の議事堂。
などなど・・・さすがに写真だけでも見応えがあります。
まとめ
こうして見てみると、いかにコルビュジェが
小屋からランドスケープまで多種多様な建築を設計していたかがわかります。
いつかすべてを見てみたいところですが、この夢は叶うのでしょうか?!
ということで、ご興味のある方はまず上野の『国立西洋美術館』に足を運んでみてください。
美術品を見に行くのではなく、その建物を見に行くのも乙なものです!それでは次回は、「ミース・ファン・デル・ローエ」と世界遺産をご紹介します。
木須 拓己
分譲マンション管理会社で専有部(お部屋内)の様々なサービス開発・企画の立案、リフォーム&リノベーション・室内クリーニング、インテリア商品販売等、お客様の快適な生活をサポートする部署の担当。分譲マンションの管理会社を15年務めた実体験及び情報をわかりやすく伝えるために日々仕事に励んでいます。仕事での心情:ニーズを形にする
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