足場を使わない高層建物のタイルの外壁調査について

中西克彦

マンションやビルの高所での外壁タイルの調査は、足場を使わずに屋上からロープに固定したブランコに腰掛けて、外壁を調査する方法があります。

今回はそのロープでの高所の外壁タイル調査を見学してきました。

1.ロープブランコ外壁調査の実施

話の始まりは、岡山市内の10階建て賃貸マンションで、管理人さんが外壁タイルの浮き上がりを発見したところから始まります。

管理人さんは、建物のオーナーに連絡し、オーナーは事故があっては大変と、当社に調査と対応の依頼をしてきました。

どの程度のタイルに異常があるかどうかを確認するため、ロープブランコによる調査をすることにしました。

2.ロープによる外壁調査の概要

①【外壁タイルの調査概要】

タイルの調査は「打診棒」という良くしなる棒についた鋼製の玉をタイルの上を転がします。タイルの裏側に空間があると、カラカラと音が変化するので「タイルが浮いている」と分かります。

浮いているタイルにチョークでしるしを付け、インターカムで地上の書記の女性に伝えて、図面に手早く転記します。

 

調査のメンバーは、外壁調査3人と図面に記帳する1人の計4人です。30代の男性1人、女性1人、50代の男性1人の3人が調査を行います。

 

②【必要な装備】

ロープ高所調査はどんな装備が必要なのでしょうか。

まず体を高所から支える安全なロープが必要です。ロープ高所作業では、労働安全衛生規則において、ロープは19.0kN(約1.94t)の引張荷重を掛けた場合において破断しないものを使用するように指定されています。

さらにロープはカラビナという金具で繋がれます。カラビナの耐力は11.5kN(約1.17トン)以上と定められています。

 

ロープの不具合を避けるため、ロープは2本セットで使用します。

ロープで降下する際は、ロープにつけた下降機を操作して降下していきます。

下降機はクライミング器具で有名なPETZL(ペツル)製でした。

もちろん、体にはハーネスを着用し、頭部を保護するためヘルメットを着用しています。

万が一、急に落下しそうになった場合は、ロープにつけた「墜落阻止器具」がロープにブレーキをかけて止まります。調査をしていた30代の男性は1度これに助けられたとのことです。

 

 

また、調査のための道具(打診棒・メジャー等)は全て、腰のベルトから落下防止のワイヤーで固定して、高所から道具を落とさないようにしています。

安全のための装備にはかなり神経を使っています。

 

③高い場所の調査は怖くないのだろうか?

あとで伺ったところ、今回の調査者の前職はビルの窓クリーニングとのことでした。高い場所は慣れているそうです。

ちなみに窓クリーニングよりも外壁調査のほうが給与が良いので5年前にこの仕事に転職したとのことでした。

 

3.まとめ

高層建物の外壁調査は、今回のようなロープブランコで高精度の調査ができます。

マンション等の大規模修繕工事の場合、工事の見積りをする際、タイルの補修数量については工事が始まるまではわかりません。

そのため「足場設置後に外壁調査を行い、タイル補修数量の実数で実費精算とする」として、過去のデータからタイルの補修数量を仮決めして後精算する」ことがあります。

その場合のリスクとして、「外壁タイルの補修数量が工事途中で見積金額を大きく上回り、予算オーバーになる恐れ」が挙げられます。

今回のようなロープによる外壁調査を大規模修繕工事の前に行うことで、外壁タイルの補修数量を正確に把握することができます。

大規模修繕工事を検討される方はぜひご検討ください。

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中西克彦

あなぶき建設工業 中西 克彦(なかにし かつひこ)
2013年入社。中四国・近畿を中心にマンション大規模修繕工事の現場管理をしています。
県外の物件に行くときはアプリで美味しいお店をチェックすることが楽しみです。
保有資格:1級建築士・1級建築施工管理技士
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