火災が多かった江戸の町。「火事と喧嘩は江戸の華」といわれるように、江戸時代の火消しは現在の消防士と違うようです。こんな流行歌がありました。
「火消し若衆」
火事とけんかと 一番まとい
そいつはおいらに まかせておきな
白に黒文字 め組のとび衆
いきでいなせで 男っぷりなら エー日本一
エンヤラヤレコノ 日本一
纏は、組のシンボルであり、自分の組の持ち場を示す目印でもあり、組の仲間の団結の象徴。今と違い、江戸時代の消火活動は、火を消すのではなく、延焼を最小限に食い止め、周辺の建物を片っ端からぶっ壊す、いわゆる「破壊消火」です。
町火消したちは、火元の家屋は置いておいて、風下側の家屋を中心にとにかく猛スピードで周辺家屋を壊しまくり延焼を防ぎました。江戸時代の木と紙でできた家屋は燃えやすい反面、壊しやすく、町火消しの主力は鳶職の職人だったので、壊し方にも精通していたのかもしれません。
では、私たちが住むマンションの消防訓練について、考えてみましょう。
※こちらの記事は2016年10月に投稿された記事を加筆・修正しております。
目次
- 消防訓練の基本(通報・連絡、初期消火、避難誘導、応急救援)
- 自主防災訓練
- 消防計画作成の重要性
- まとめ
消防訓練の基本
江戸時代と違って、マンションには、消火に関するいろいろな設備があります。
例えば、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、泡消火設備、ハロゲン化物消火設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報器具・設備、避難器具、排煙設備、連結送水管、非常電源設備など。さらに、消火器具、消防機関へ通報する火災報知設備、誘導灯、誘導標識、消防用水、非常コンセント設備、無線通信補助設備などもあります。
消防設備には、消防隊員が使用する消火器具、居住者が初期消火で使える消火器具、火災が起きると自動的に感知し、消火器具が作動するものがあります。マンションの規模などで消防設備の設置状況に違いがありますので、事前にチェックをしておきましよう。
通報・連絡
火事が起きたら、「火事だ!!」と大声で周囲に知らせる。もうこれしかありません。事前に消防計画書に通報・連絡担当が決まっていれば、その方が近隣と消防署に火災発生の連絡をします。
初期消火
火災が起きたと同時に、初期であれば火を消せるかもしれません。事前に消防計画書に消火班が決まっていれば、その方が消火器や屋内消火栓で初期の消火活動を行います。
避難誘導
初期消火でも消えないようであれば、避難するしかありません。すぐ避難しましょう。
避難にあたり、お年寄りやお子さんがいるかもしれません。エレベーターは使えませんので、避難方法を事前に検討する必要があります。
応急救護
避難者のケガなどの応急処置行い、重度、軽度に分けて対応をします。
マンションの階ごとに把握し、場合によっては、救急車を呼ぶ訓練も大事です。
自主防災訓練
一般的な消防訓練の場合
最初は、通報・連絡班が非常ベルを鳴らし、マンション住民に火災を知らせます。また、消防機関へ通報する火災報知設備が管理事務室などにある場合は、それを使って、消防署にも連絡します。
いきなり、「火災です!」というと、相手の方はビックリしますので、消防署に事前に消防訓練をすることを連絡しておきましょう。
119番に電話し、「訓練火災!訓練火災!こちらは○○市○○町の○○の○○マンションです。××から火が出ました。」と通報・連絡します。
あとは、消防署の誘導で対応してください。
通報と同時に、消火班は初期消火をするために、消火器(訓練時は水が入ったもの)をもって、火災現場に駆け付け、消火にあたります。初期消火でも手に負えない場合は、避難誘導班と一緒に、お子様やお年寄りなどの避難・誘導を行います。
居住者には、「○月○日○時に非常ベルを鳴らしますので、音が聞こえたら、エレベーターを使用せずに、階段で降り、○○の所定の場所に集合してください。」と事前に、広報しておきましょう。
介護班の場合は、階別の負傷者を把握し、応急処置をし、ケガの状態を見て、救急車を手配する訓練をします。
居住者が、避難場所に集合した所要時間を測り、記録します。階別に記録するとわかりやすいです。また、非常ベルの音が聞こえにくいお部屋はなかったかなどを確認し、消防訓練は終了となります。
消防訓練に消防署の立ち合いをお願いした場合
消防署の立ち合いがある場合は、消防計画書にあるように組織だった活動がなされているか、消火や避難に問題はなかったかなどを見てもらいます。避難訓練終了後に、消防署の方が講話をしていただける場合があります。頼めば、水消火器で消火訓練もできます。また、実際の消火器を使って消火訓練もできます。
消防署に地震体験車を依頼した場合
消防署によっては、地震体験車で震度7を体験できます。地震体験車は少ないので事前の打ち合わせをしましよう。
マンションの敷地が狭い場合は、地震体験車が駐車できない場合があります。
消防計画作成の重要性
火災や震災などの災害から住民の生命、身体、財産を守ることも管理組合の重要な役割の一つです。組合員の中から防火管理者を定め、消防計画を作成し、これに基づいて消火、通報および避難の訓練を定期的に実施しなければなりません。
共同住宅の消防計画書(雛型)はインターネットでダウンロードできます。
居住者が50人以上のマンションでは、防火管理者を置かなければなりません。防火管理者は、延べ500㎡以上では甲種防火管理者講習を終了した者であることが必要です。
居住者が50人以上のマンションでは、法令上の定めはありませんが、年1回程度の定期的防災訓練が、飲食店が入っている複合型マンションの場合には、年2回以上の消火訓練および避難訓練が義務付けられています。
消防計画作成にあたり、消防法に基づく点検の重要性を理解し、消防・防災計画の実施体制を明らかにすることができます。避難計画にあたり、高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿の作成も大事です。
災害時に必要とされる道具・備品・非常食類の備蓄や災害発生時における安否確認体制の整備なども検討しておくことをお勧めします。
まとめ
せっかく消防訓練を計画しても、参加者が少ないと意味がありません。
事前に「日頃の消防訓練が大事であり、居住者同士、顔を合わせる良い機会ですので、ご参加ください。」などと広報をしっかりしておきましょう。訓練後の飲み物やお子さんにはお菓子などを配るのもいいかもしれません。
平成27年9月1日発行の「今やろう。災害から身を守る全てを。東京防災」「防災マップ」が都民に配布されました。わかりやすくまとめられています。消防訓練と同様に、地震等の災害の備えも大事です。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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