マンション管理組合と自治会(町会、町内会)との関わり方について

綾部 祐太

こんにちは。あなぶきハウジングサービス 綾部です。

皆さんは地域の自治会(もしくは町会、町内会。以下「自治会等」という)に加入されていますか?後述のとおりマンション管理組合と自治会等は別の組織ですが、自治会等は思った以上にその地域において重要な役割を担っており、全く無関係でいることはなかなか難しいのも現実です。
今回は、管理組合と自治会等とのより良い関わり方について考えていきたいと思います。

【”全く別の組織”が原則】

本来、管理組合と自治会等は運営目的が異なる全く別の組織ですが、(主に運用面における利便性の観点からだと推測しますが)管理組合運営の中で両者を一体的に扱い、管理費等と自治会等の会費(以下「自治会費等」という)を一緒に徴収・管理するマンションが以前から比較的多くあると思います。
しかし、自治会費等の支払いや脱会等に関するトラブルが全国で相次いで発生して問題となり、それを受けて、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」(管理規約の見本のようなもの)及び「マンションの管理の適正化に関する指針」(国土交通省が定めた指針)が2016年3月に改正され、管理組合業務と自治会等とを峻別するよう、文言が変更されました。
ちなみに、裁判例もいくつかありますが、管理組合が区分所有者や入居者に対し自治会等への加入を強制(あるいは退会を認めない)することは、たとえその旨が管理規約に定められていても、拘束力は認められないようです。
(参考)管理組合と自治会等の違い

管理組合 管理組合 自治会等
運営目的 建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うこと 地域住民の親睦、福祉、防犯、文化等にかかわる諸活動を行うこと
構成員 区分所有者全員 地域住民
加入/退会 区分所有権を取得した時点で強制加入(譲渡した時点で資格を喪失) 個人の任意

 

<2016年3月改正 「標準管理規約(単棟型)及び同コメント」より抜粋

第32条 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
十五 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成 ←この文言が削除されました。

第32条関係(同コメント)
⑧ 従来、第十五号に定める管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が掲げられていたが、「コミュニティ」という用語の概念のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3 条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。なお、これに該当しない活動であっても、管理組合の役員等である者が個人の資格で参画することは可能である。

<2016年3月改正「マンションの管理の適正化に関する指針」より抜粋>
7 良好な居住環境の維持及び向上
マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。

≪国土交通省ホームページより≫

 

【自治会等の役割】

一方で、自治会等の役割についても考えたいと思います。地域にもよりますが、主に次のようなことが挙げられます。
・回覧板や配付物等で様々な情報(行政の広報、イベント、ニュース、ゴミ収集等)を発信する。
・行事(お祭り、運動会、防災訓練等)により住民同士の交流を促進する。
・清掃、パトロール活動等により地域の衛生・安全を維持する。
・共用施設や設備の維持管理(ゴミ集積所、集会施設、防災備品や除雪用具等)
・慶事弔事に伴う支給(祝金や弔慰金) 等

また、私がマンション管理業務に携わる中で、以下のような経験をしたことがあります。
・管理組合から市へ要望(例/マンション前の道路上にミラーを設置してほしい等)を出す際、市の職員から「直接ではなくその地域の自治会等を通じて意見を提出するように」と言われた。
・特定の種類のゴミ(資源物)のみ、通常のゴミ収集では回収されず、自治会等が管理する集積所からしか回収されない。
行政の役割の一部を自治会等が代わりに担っている側面があるようです。未加入だからといって対応してもらえないというわけではないのかもしれませんが、頼み辛い思いをする可能性があります。

【管理組合ができることは?】

以上のことから、できればマンション入居者が全員自治会等に加入するのが望ましいとは思いますが、強制はできないので、管理組合としては、加入するかどうかは各入居者の意思に任せるしかありません。
一方で、管理組合が総会等の場で呼びかけを行う等して、自治会等への加入を促進することはできるでしょう。また、前掲「マンションの管理の適正化に関する指針」のとおり、国土交通省は、適切な峻別や代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば管理組合が自治会費を代行徴収するのは差支えない、としています。本来は自治会等の担当者が各入会者から直接会費を徴収するが原則ですが、事務手続上可能であれば、管理組合が管理費等と同じタイミングで自治会費等を代行徴収することができるようです。

 

いかがでしたか?戸建、集合住宅に関わらず、その地域コミュニティの中で生活するという側面は変わりません。皆様のより良い地域生活のためにこの記事が役立てば幸いです。

 

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綾部 祐太

あなぶきハウジングサービス 東日本支社 分譲管理事業統括
綾部 祐太(あやべ ゆうた)
東京都出身。2013年入社。
入社から現在まで一貫して分譲マンション管理業務に従事しています。
日々の業務を通じて培った知識や経験をもとに、皆様がより快適なマンションライフを送ることができるよう、有益な情報を発信してまいります。
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士
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