隣の家の木の枝が自分の敷地内にまで伸びてきて、落ち葉の清掃が大変だったり、害虫の発生に頭を悩ませていたり…というお困りごとはありませんか?
特に一戸建ての住宅でよく聞くこの問題…。実はマンションも一戸建てに比べて敷地が広いので、多くの住宅と接している分、問題になりがちな案件です。
今回は相隣関係のうち、『樹木の越境への対処法』についてご紹介します。
隣家から「木の枝」が越境してきた場合
「隣の家から木の枝が伸びてきていて、車を駐車する際に邪魔になる!」
とか、
「隣の家から伸びてきた木の枝の影響で、毎年秋になると落ち葉でマンション敷地内の排水溝が詰まってしまう…」
という居住者の方々のお声を聞くことがあります。
「塀を乗り越えて越境してきたのだから、勝手に伐採しても問題ない!」と考えがちですが、本当でしょうか?
実は民法には越境してきた「木の枝」への対処について触れた条文が存在します。
民法 第233条1項
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
出典:Wikibooks
ここで重要なことが2点あります。
ひとつめは、「~枝を切除させることができる。」という部分です。
他人の樹木の枝が自分の敷地内に入ってきていても、切るように請求することはできるが、勝手に切ることはできないということです。
ふたつめに、越境していれば何でもかんでも「切ってください」と請求できる訳ではありません。
新潟地裁判例(昭和39年12月22日)によると、
①枝の越境によって明確な被害を被っていること
②枝を切除することで、依頼者が回復する利益と樹木所有者が受ける損失に不当な差がないこと
という見解が示されています。
すなわち、越境した木の枝によって被害を被っていることが明確でなければなりません。民法では「権利の濫用」が禁止されており、それに基づく見解になります。行き過ぎた請求は、権利の濫用として損害賠償責任を問われる事態になります。
先に述べた「車が駐車できない」「落ち葉で排水溝が詰まってしまう」というような明確な被害があれば切除を請求できるでしょう。
隣家から「木の根」が越境してきた場合
それでは越境してきた「木の根」へはどのように対処すべきでしょうか?
結論を述べますと、越境してきた「木の根」は樹木の所有者の承諾無しに勝手に切除できます。
民法 第233条2項
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
出典:Wikibooks
しかし、民法で禁止されている「権利の濫用」とならないよう、「木の根」を切ることで樹木が枯れてしまうことが予測される場合には、単に越境しているという理由だけでは不十分です。「木の枝」の場合と同様に明確な被害を被っていなければ(又はその恐れがなければ)、越境してきた「木の根」を切除することは出来ません。
まとめ
越境した「木の枝」と「木の根」では、対応が異なることをご理解いただけましたでしょうか?
住宅が密集する地域では隣地越境物によるトラブルは避けて通れません。越境しないように樹木所有者が管理することが原則です。
しかし、“越境したとしても被害が無いのであれば、事態を円満に解決しなさい”ということを民法や過去の判例は求めています。
越境トラブルの一番の解決法は、自らが主張できる権利を正しく理解したうえで、末永く付き合うことになるであろう隣家と円満な解決に向けた話し合いをすることですね!
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