【マンション標準管理規約改正】オンライン理事会・総会において気を付けるべき留意点

立花晴太郎

こんにちは、あなぶきハウジングサービスの立花です。

コロナ禍において私たちの生活スタイルは大きく変化しました。代表的なもののひとつに「オフライン」から「オンライン」への変化があります。これまでお店で買い物をしていたものがオンラインショッピングになり、会社に出勤していたのがテレワークに変わったりと、皆さんも日常生活の様々な場面でオフラインからオンラインの変化があったのではないでしょうか。

マンション管理業界においても例外ではなく、管理組合の会合(理事会・総会等)もオンライン化が急速に進んでいます。

そのような中、2021年6月22日に国土交通省が示す「マンション標準管理規約」が改正されました。

今回の改正においては「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」にて検討が重ねられてきました。この検討会は元々、改正マンション管理適正化法で策定が義務付けられた基本方針や管理計画認定制度の認定基準等について議論する目的で設置されましたが、コロナ禍における対応などを踏まえて急きょ標準管理規約の改正が検討されることになったそうです。

この新たに改正された標準管理規約において、管理組合の会合のオンライン化を推進するにあたっての留意点が示されていますので一緒に確認してきたいと思います。

標準管理規約改正によるオンライン化の留意点

(定義)

第2条
(※一~九までは従前と同様です)
十 電磁的方法 電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に定めるものをいう。
イ 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で
接続した電子情報処理組織を使用する方法あって、当該電気通信回線を通じて情報が送
信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録される
もの
ロ 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことが
できる物をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
十一 WEB会議システム等 電気通信回線を介して、即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等をいう。

※下線部が改正により追記

まずは定義を示した第2条の部分です。
難しい単語が並んでおり条文を読んだだけでは内容が分かりづらいかと思いますが、マンション標準管理規約コメント(以下、「コメント」)によると「電磁的方法」の具体例として電子メールの送信ウェブサイト(ホームページ)への書込みの利用CD-R等の交付による方法等があると記されています。
WEB会議システムについては、最近は皆さんもビジネスやプライベートにおいても利用する機会が増えているのではないでしょうか。
当社が提案する「オンライン理事会(総会)」においても、WEB会議システムを利用しています。

(理事長)
第38条
(※1~2までは従前と同様です)
3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4 理事長は、〇か月に1回以上、職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。

第38条に関する条文自体は、今回の改正による変更はありませんでしたが、コメントにおいて第3項、第4項に関する理事長の報告について、WEB会議システム等を用いて出席し報告を行うことも可能であるが、WEB会議システム等を用いない場合と同様に、組合員や各理事からの質疑への応答について適切に対応することが必要であることに留意するべきである、と記されています。
WEB会議システム等を利用することで利便性は大きく向上しますが、その反面、質疑への応答が適切に行われない状況になってしまっては、適切な管理組合運営が出来なくなってしまいますので、十分留意する必要があります。

(招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。

※下線部が改正により追記

第43条においては、WEB会議システム等を用いる場合の開催方法について追記されました。
コメントでは「開催方法」については、当該WEB会議システム等にアクセスするためのURLが考えられ、これに合わせて、なりすまし防止のため、WEB会議システム等を用いて出席を予定する組合員に対しては個別にID及びパスワードを送付することが考えられるとしています。

(議決権)
第46条
(※1~5および7は従前と同様です)
6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。
※電磁的方法が利用可能な場合
8 組合員又は代理人は、第6項の書面に代えて、電磁的方法によって提出することができる。

※下線部が改正により追記

総会における議決権の取り扱いについて定めた(議決権)第46条の条文です。
コメントにはWEB会議システム等を用いて総会に出席している組合員が議決権行使する場合の取り扱いは、通常の出席者(WEB会議システムを用いずに出席)同様に取り扱うこととしています。ただし、第三者が組合員になりすました場合やサイバー攻撃大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合には、総会の決議が無効となるおそれがあることを留意する必要があると記されています。

WEB会議システムを用いた総会等は、今後ますます増えていくことと思いますが、集会形式にはなかった新たな課題があることを認識し、対策を考えていく必要があります。

(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条の第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

※下線部が改正により追記

第47条第1項に定める総会の定足数についてコメントでは、議決権を行使することができる組合員がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席組合員に含まれると考えられる。これに対して、議決権を行使することができない傍聴人としてのWEB出席者は、出席組合員に含まれないと考えられるとしています。あくまでも議決権を行使することができる組合員しか出席組合員としてカウントしてはいけないということです。

これらの点を含め、特にWEB会議システムを用いた総会の運営については、ルール策定と機材が重要ではないでしょうか。特に機材については、事前に予算等の確保も必要です。
例えば、集会形式とWEB会議システムを併用する形で総会を開催する場合は、
・集会会場内の通信回線確保
・集会会場内の機材準備
集会場へ直接出席した方が、WEB会議システム等で出席した方の映像と音声を明確に認識できるようにする=大画面の用意(プロジェクター+スクリーン)、スピーカー・マイクの設置など、出席人数の総数により機材構成も変化

なお、「理事会」についても、基本的に総会に関する規定をを準用することとしていますが、議決権行使の方法等を、規約や細則において定めることも考えられるとされています。また、理事会の定足数については、理事がWEB会議システム等を用いて出席した場合、出席理事に含まれるとコメントされています。

 

最後に

今回のマンション標準管理規約の改正は、基本的にコロナ禍への対応を踏まえて改正されたものです。しかし、コロナ禍をきっかけに私たちの生活スタイルが大きく変化をした今、おそらくコロナ禍が終息した後も利便性向上が図れる手段・新たな脅威発生時でも管理組合運営に支障を来さないための方法として、確立されるのではないかと思います。

当社、あなぶきハウジングサービスにおいても「オンライン理事会・総会」を積極的に提案しています。

マンションによって事情は様々ですが、今回のマンション標準管理規約改正を機に皆様のマンションに合ったオンライン化のルールを考えて頂ければと思います。

※ちなみに「オンライン理事会」「オンライン総会」はあなぶきハウジングサービスの登録商標です。

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立花晴太郎

あなぶきハウジングサービス 立花 晴太郎(たちばな せいたろう)
宮城県仙台市出身。分譲マンション管理(フロント)業務、新規受託営業に従事し、様々な地域の様々なマンションに携わらせていただきました。「より快適なマンション」へのヒントになるような情報を提供していきます。
保有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、マンション維持修繕技術者
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