こんにちは。元気いっぱい夢いっぱい。あなぶき建設工業の西口です。
人生常に発見の連続、そして日々勉強。
マンション・ビル等の新築・大規模修繕工事の現場監督を経て、現在は建設統括本部という部署で各現場の安全、品質検査等の業務を行っております。
現場でのお客様との関わりを大切にして、日々の業務に努めております。
そんな業務の中での発見や気づきなどを発信し、
少しでもブログ読者の皆様に有益な情報がお届けできれば幸いです。
本記事では、主にマンション管理組合様・マンションオーナー様向けにブログを書いていこうと思います。特に大規模修繕工事など工事に関わる内容を中心に管理組合様に向けてブログを発信していきます。
今回は、大規模修繕工事のタイル張替工事における『クローンタイル』という選択肢についてご紹介いたします。
『クローンタイル』とは
皆さんクローンタイルをご存知でしょうか?
クローンといえば、1 9 9 6年7月にイギリスで「ドリー」と名付けられたクローン羊が誕生したニュースを思い出す方もいらっしゃるかと思います。
まず、クローンという言葉の語源は、ギリシャ語で「小枝」という意味だそうです。「挿し木」でブドウの木やリンゴの木などの挿し木をイメージするとクローンの語源が「小枝」というのも納得できるのではないでしょうか。現在では遺伝的に同一である個体や細胞を指す生物学の用語として使われています。そんなクローンについてですが、大規模修繕工事において『クローンタイル』というタイルがあります。
『クローンタイル』とは、マンション・ビルなどの既存タイルを再現して製作するものになります。現地のタイルをサンプルとして採取して特殊技法によりタイル製作をする為、既存タイルとクローンタイルはほぼ同等の色・柄・艶を再現した仕上がりになります。
『クローンタイル』の特徴について
※現地タイルとクローンタイルの比較状況です。手に持っているタイルはすべてクローンタイルです。
クローンタイルの素材・製作方法
主に2種類の素材があり、通常の磁器タイルと熱硬化ウレタン樹脂のどちらかの基板の上に特殊技法による塗装を施します。
磁器タイルでクローンタイルを製作する場合は、素地タイルに色を付けます。
熱硬化ウレタン樹脂でクローンタイルを製作する場合は、現場で採取したタイルを元にシリコンの型を製作し、熱硬化ウレタン樹脂を流し込み成型したものに色を付けます。
耐久性
クローンタイルの色付けには、超耐候性変成無機塗料を使用しており、フッ素塗料と比較しても耐久性の勝るデータをメーカーも示しており、太陽の紫外線等による劣化もほとんどありません。
発注枚数・納期
タイルの製作は1枚から可能ですが、数量が多ければ1枚当たりの単価が抑えられます。
納期に関しては、基板の種類により異なります。基板が磁器タイルの場合で、サンプル製作1~3週間程度、本製作に1~3週間程度となり、熱硬化ウレタン樹脂の場合で、サンプル制作に2~4週間程度、本製作に3週間~1.5ヶ月程度が納品の目安です。
通常、磁器タイルの新規窯焼きによる特注タイルを製作する場合はサンプル製作とは別に、2~3ヶ月程度かかる為、クローンタイルを使用することで工期への遅れを最小限に抑えることができます。
クローンタイルとその他タイル材料の比較
大規模修繕工事のタイル張替工事におけるタイル材料の準備は主に3つのパターンがあります。
1つ目は新規窯焼きにより、現状のタイルに近い風合いのタイルを特注で製作するパターン。
2つ目はタイルメーカーが販売している類似品タイルを使用するパターン。
3つ目はクローンタイルを使用するパターンです。
現在の大規模修繕工事の大半が、1つ目の新規窯焼きの特注タイルもしくは、2つ目の類似品タイルを使用しています。
特注タイルのメリットは、現場のタイルの風合いに合わせて比較的まとまった数量のタイルを比較的安価に制作できることです。しかし、釉薬や顔料の配合、焼成時間や温度により現場のタイルを忠実に再現するのには限界があり、バラツキが生じる場合があります。
次に類似品タイルはメーカーが大量生産をしているタイルの為、安価に仕入れることができる点が最大のメリットです。しかし、現状の色や風合いが合うタイルが見つかることは稀です。
クローンタイルは、色・柄・艶を精巧に再現して仕上げることができ、現場のタイルと比較しても見分けがつかないほどの仕上がりを実現することが可能です。しかし、特殊技法による製作の為、タイル一枚当たりの単価は格段に上がります。あくまでも目安ですが、45二丁掛タイルで1枚当たりの材料単価が2,500円~3,000円程度になります。材料単価は発注枚数にもよりますが、枚数が多くなるほど1枚当たりの単価を抑えられる傾向にあります。
『まとめ』
先述した通り、クローンタイルはタイル一枚当たりの単価が通常の新規窯焼き特注タイルに比べて高いのが現状ですが、数量を限定して採用してみることもポイントの一つです。
納期が早いというメリットもある為、例えば、『駐車場の移動期間が決まっており工期を延長できない。しかしタイル張替が追加で必要。そんな場合に、クローンタイルであれば、工期内に工事が完工できる。』という事例や『エントランスなど少量ではあるが、目立つ箇所のタイル張替の為、意匠性を考慮してクローンタイルで施工したい』など状況に合わせてクローンタイルの使用を検討してみることをおすすめいたします。
クローンタイルは経年により風化した色合いまでも再現できる比較的新しい技術です。まだまだ一般の方への認知度は高くありませんが、選択肢の一つとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。
西口洸平
西口 洸平(にしぐち こうへい)
新築工事、大規模修繕工事の現場監督を経て、
現在は建設統括本部にて現場の後方支援を行っております。
趣味ではありませんが、好きなことは現場近くや出張先で美味しいご飯を食べることです。
ご飯を食べると思わず『ウマッ』と声に出てしまうので、会社の人によく笑われます。
経験豊富な上司や好奇心旺盛な後輩がいる会社で毎日楽しく働いております。
本ブログでは現場で培った経験等を活かし、ブログ読者の皆様に
有意義な情報発信となるよう努めて参ります。
保有資格:1級建築施工管理技士
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