マンション管理組合の会計│複数の工事代の仕訳の仕方を考えてみよう

久米 則子

こんにちは、あなぶきセザールサポートの久米です。
マンションを維持していくためには清掃や工事などを計画的に行わなければなりません。築年数が経っていくにつれ工事しなければならない箇所も増え、ひと月にいくつかの工事を並行して行うこともあるでしょう。取引が多くなっていくと仕訳も複雑になっていきます。今回は複数の工事を行った場合の仕訳の仕方ついて考えてみましょう。

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目次

  • 例題
  • 解答
  • 考え方
  • まとめ

 

例題

管理組合の下記の取引に関して3月の仕訳を考えてみましょう。
この管理組合の会計年度は4月1日から3月31日であり、期中の取引において企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとします。

 

・取引
(管理組合が発注した工事)
①非常照明補修工事           75,000円
②排水管塗装工事           368,000円
③壁補修工事              21,000円
④消防設備不備箇所改良工事      580,000円
⑤エレベーター改修工事      3,500,000円
⑥エレベーター工事に伴う部品交換   800,000円

(工事完了状況)
①②③…3月末完了
④⑤⑥…3月末未完了

(支払状況)
①②…3月末に普通預金より全額支払い
③…4月末支払い予定
④⑤⑥…3月末に普通預金より工事費の一部である
2,500,000円を手付金として支払い

 

解答

この例題の正しい仕訳は以下の通りとなります。

無題

考え方

発生主義ですので、工事が完了した時点で費用として計上します。

①共用非常照明修理工事 75,000円
②排水管塗装工事   368,000円
この2つの工事は3月末現在工事が完了しており、工事代金も普通預金から支払い済みですので、以下の仕訳を計上します。
無題

③壁補修工事 21,000円
この工事は3月末現在工事が完了していますが工事代金は未払いですので、以下の仕訳を計上します。

無題1
④消防設備不備箇所改良工事 580,000円
⑤エレベーター改修工事 3,500,000円
⑥エレベーター工事に伴う部品交換 800,000円
この3つの工事は3月末工事が完了していませんので費用として計上しません。が、手付金として一部普通預金より支払いをしているので勘定科目は『前払金』となり、以下の仕訳を計上します。
無題2

上記を合算し、解答のような仕訳となります。

また、この『前払金』については、工事完了後に費用計上することを忘れないようにしましょう。例えば4月に工事が完了し4月末に普通預金から残金を支払をした場合は、下記の仕訳を計上します。

無題4

 まとめ

3回にわたってマンション管理組合の仕訳についてお話しました。今回は複数の取引をあわせた仕訳をご説明しましたが、一度に考えるととても複雑です。取引ごとに紐解いて仕訳をおこしていくと良いでしょう。解答としては仕訳を合算しましたが、ひとつひとつ仕訳をすることも間違いではありません。実務では取引ごとに仕訳を計上した方が仕訳を計上した本人も、他の人が見てもわかりやすいでしょう。

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久米 則子

あなぶきハウジングサービス マンション会計課:久米 則子(くめ のりこ)
新卒で入社してから経理一筋。ホテル業の経理、マンション販売の経理、マンション管理業の企業会計とさまざまな業種の経理業務に携わってきました。現在はマンション管理組合の会計業務に従事し、スピードと正確性を重視し、忙しい時こそ笑顔で!をモットーに仕事に取り組んでいます。管理業務主任者を取得し、資格を活かした会計業務のお役立ち情報をお届けしたいと思います。
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