不適切な分譲マンションの修繕積立金改定(案)例 4件の事例

福田 純行

こんにちは、福田です。お久しぶりで申し訳ありません。今回は当社の管理するある分譲マンションの「長期修繕計画(案)説明会」時でのエピソード4件の事例をお話ししたいと思います。(実名は伏せてあります)

不適切な分譲マンションの

目次

  • Aマンションの場合
  • Bマンションの場合
  • Cマンションの場合
  • Dマンションの場合
  • まとめ

 

 

Aマンションの場合:

所在:埼玉県 築:8年経過 戸数:29戸 構造:鉄筋コンクリート5階建て 設備:機械駐車設備18 現状積立金:平均3,500円/戸

今後25年間のシュミレーションの結果、現状のままでは1回目の大規模修繕工事で資金不足となる結果になりました。そして以下の参考改定案を提示しました。

来年~3年間 +5,000円値上げ (各戸の平均額)

4年目~3年間 +5,000円値上げ  (   〃  )

7年目~25年目 +5,000円値上げ (   〃  )

借入れが1,2回目の大規模修繕工事に発生する内容の段階積み立て方式を説明しました。

住民からの意見:不適切な現状の修繕積立金の額について、「なぜ早く教えてくれなかったの?なぜ今なの・・・」とありました。

回答:過去の説明不足を陳謝し、今後積立金改定に向けた検討を開始することとしました。この物件は当社が途中で引き継いだ物件で、前管理会社の簡単なものしかなかったので今回作成しました。この規模で平均積立金月3,500円/戸ではあまりにも不適切です。国交省の積立金の目安から参考に計算すると、250円/㎡×66.49㎡/戸=16,622円/戸になります。すでに8年目に入りましたが、今後の早めの積立金改定の対応が望まれる管理物件です。

 

Bマンションの場合:

所在:埼玉県 築:27年経過 戸数:19戸 構造:鉄筋コンクリート4階建て 現状積立金の平均額:12,000円/戸

今後25年間のシュミレーションの結果、現状のままでは3回目の大規模修繕工事で資金不足となる結果になりました。そして以下の参考改定案を提示しました。

来年~5年間 +5,000円値上げ (各戸の平均額)

6年目~25年目 +5,000円値上げ  (   〃  )

但し大規模修繕工事の3,4回目にそれぞれ借り入れが発生する内容となりました。

住民からの意見:シーンと静まり返り質問もない・・・。理事長が「これから住民アンケートを行い検討して行きましょう」と一言。但し借り入れなしの案で、責任施工方式案(設計コンサル費用が発生しない)シュミレーションを再作成してくださいと要望がありました。

回答:承知しました。積立金の見直しシュミレーションについては幾つもの案がありますので、今後いろいろな案を作成いたします。こちらの組合は金融機関からの借り入れに抵抗のある組合でした。いろいろな考え方がありますが、借り入れた以上は金利が発生することは否めない事実ですね。エレベーターも設置されていないマンションでしたので、上記の条件変更で再シュミレーションを行った結果は来年~5年間+6,000円UP,それ以降25年目まで+4,500円の改定で黒字運営が可能となりました。

 

Cマンションの場合:

所在:千葉県 築:9年経過 戸数:31戸 構造:鉄筋コンクリート7階建て 設備:機械駐車設備28 現状積立金の平均額:4.000円/戸

今後25年間のシュミュレーションの結果、現状のままでは1回目の大規模修繕工事で資金不足となる結果になりました。そして以下の参考改定案を提示しました。

来年~3年間 +5,000円値上げ (各戸の平均額)

4年目~3年間 +5,000円値上げ  (   〃  )

7年目~11年目 +5,000円値上げ (   〃  )

12年目~25年目 +3,000円値上げ (   〃  )

借入れが1,2回目の大規模修繕工事に発生する内容の段階積み立て方式を説明しました。

住民からの意見:この計画案の信頼性について知りたい・・・と質問がありました。

ひとつひとつについてご説明するには時間がかかりすぎるので、このケースに似た物件の計画案をご提示いたします。質問者は無言でした。明らかに今回のシュミレーションは信じられない様子です。例えるとある初めての病院であなたは癌ですと診察されてとても信じ難く、別な病院の診察を受けたい気持ちとほぼ同じですね・・・。よくわかります。後日よく似た物件の計画案を参考にご提示しました。

回答:機械駐車設備(28)台があるため、メンテナンス費用、更新費用がかさむことの説明をしましたが、こんなに今後修繕費用がかかるのは認めたくない様子でした。また計画修繕工事費用については10年後、20年後の工事費を算出するのはあくまで推測なので、内容を確定・保証するものではありませんと説明しました。今後の消費税率や建築工事単価の変動、建物の劣化状況の確認する必要があること、また、最低でも5年毎の見直しを推奨しますと説明をしました。28台のパズル式機械駐車設備のあるマンションの設定額としては4,000円/戸の設定はあまりにも不適切でした。9年間も積立金の改定をしなかった遠因は管理会社(当社)にありますが、実は管理組合の義務として長期修繕計画(案)の作成は分譲マンションの標準管理規約で定められていますので、当事者は管理組合なのです。と同時にアドバイスを怠った管理会社にも責任があります。

 

Dマンションの場合:

所在:神奈川県 築:9年経過 戸数:60戸 構造:鉄筋コンクリート7階建て 設備:機械駐車設備60 現状積立金の平均額:9.000円/戸

当社のリプレイス物件です。今後25年間のシュミレーションの結果、現状のままでは1回目の大規模修繕工事で資金不足となる結果になりました。そして、以下の参考改定案を提示しました。

来年~3年間 +5,000円値上げ (各戸の平均額)

4年目~25年目 +5,000円値上げ (   〃  )

の借入なしの段階積み立て方式を説明しました。

住民からの意見:長期修繕計画(案)を作成する前から、当社の長期修繕計画(案)の信頼性について不安をお持ちの組合でした。理事会の議事録を見ると、管理会社の長期修繕計画(案)の内容次第では、再度、他へ依頼する予定と明記してありました。

今年から初めてのお付き合いが始まる組合さんです。こちらからセカンドオピニオンを受けられたらいかがですかと提案しましたが、第三者の有識者にチェックを依頼するにも伝手がない様子でした。いざ作成して提出。説明会の実施後、他への依頼はされませんでした。

回答:※60台の機械駐車設備があり更新費用も決してお安くありませんでしたが、一般管理費の見直しで年間270万近く浮いた費用を修繕積立金へ繰り入れることが可能になったので改定金額の設定はさほどきつくはなりませんでした。しかし、機械駐車設備費用を含む積立金としては、9,000円/戸は不適切な設定でした。

 

まとめ

以上4件の事例をご説明いたしましたが、いずれも十分な積立金設定がされていませんでした。区分所有者は毎月一般管理費と修繕積立金の合算合計金額を支払っているため、一般的には積立金の金額は正確に把握されていないのが現実です。また、大幅な改定が必要な場合、高年齢の住民が多い分譲マンションでは年金収入によるところが大半なので厳しい状況が現実としてあります。共同住宅の性といってよいのかどうかわかりませんが、多数決の原理で総会決議がされますので大きな問題ですね。

現在は新築分譲マンション・中古マンションの購入者に対して長期修繕計画(案)の説明が重要事項として説明することが必須になっています。分譲マンション購入者の方は長期修繕計画(案)についての十分な知識を持っていただき、マンション購入の際には売主に必ず確認するようにしましょう。

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福田 純行

あなぶきハウジングサービス:福田 純行(ふくだ よしゆき)
前職の設計事務所時代に手掛けた設計・監理物件は北海道は北見市から南は長崎の佐世保市まで。今となってはとても懐かしい。現在は主にマンションの大規模修繕工事に関するコンサルティング(大規模修繕工事の改修設計・長期修繕計画(案)の作成等)を担当。人が住むマンションのストーリーを一つずつ守るのが役目です。
目指せ、「チェンジ・ザ・ワールド」・E.クリプトン・・・・グルーブな仕事を
皆さんのために。
有資格:一級建築士
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