【徹底解説!】理事長選任が困難な分譲マンションで『第三者管理方式』を導入するポイント

松井 久弥 松井 久弥

こんにちは。あなぶきハウジングサービスの松井です。
分譲マンションの管理組合では、『管理者である理事長を選任して管理運営を行うこと』が定められています。

しかし、中には色々と事情があって“理事長が選任できないマンション”もあります。

たとえば「高齢者が多くて役員の成り手がいない…」「投資用のワンルームマンションやリゾート型のマンションで実住者がほとんどいない…」といったケースです。

今回はそんな “役員の選任ができないマンション” において、管理組合役員を区分所有者以外の第三者がおこなう「第三者管理方式についてご紹介します。

 

第三者管理方式とは?

従来までは標準管理規約において、マンション管理組合の役員は「現に居住する区分所有者」に限定されてきました。
しかし、役員のなり手不足も背景にあり、平成23年の標準管理規約改正において、現住要件(居住している区分所有者に限定)が撤廃されました。
さらに、平成28年の改正において「外部専門家を役員として選任できることとする場合」として、標準管理規約に条文案が記載されました。

これまでは区分所有者に限定されていたマンション管理組合の役員を外部専門家が就任できるように見直されたのですが、これは誰でも役員に就任できるということではなく、主旨として「より適正なマンション管理を行うため、個々のマンションの事情を考慮し、必要に応じて選択的に導入する方式である」といえます。

また、標準管理規約では第三者管理方式について、『3つのパターン』が想定されていますので、マンション管理組合の事情に応じて”どのパターンが望ましいか”選択することになります。

第三者管理方式の3つのパターン

理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型

役員の一部(理事長、副理事長、理事または監事等)に外部の専門家が就任するパターン

理事会の構成員として、区分所有者である他の役員と共に管理組合の執行をおこなう

外部管理者理事会監督型

外部の専門家を管理者(理事長)として選任し、理事会は監事的立場となり外部管理者を監視するパターン

監視する立場の理事会の役員に、さらに別の外部専門家を選任することも考えられる

外部管理者総会監督型

外部の専門家を管理者(理事長)として選任し、理事会は設けないパターン

区分所有者からは監事を選任して監視するとともに、監査法人等の外部監査を義務づける

 

全てのパターンにおいて最終的な意思決定機関は総会であり、その役割は重要となります。

 

どのようなマンションが第三者管理方式の対象となるのか?

第三者管理方式を採用するマンションについて、具体的な事例をご紹介します。

投資型ワンルームマンションやリゾートマンションの事例

居住している区分所有者がおらず、また居住地も遠方(全国各地に居住)であるため、役員のなり手がいないだけでなく、理事会や総会を開催しても出席者がほとんどいないようなマンション

高齢者が多いマンションの事例

築年数が経過して、修繕や耐震改修・資金計画等の大きな問題が顕著化してきたが、区分所有者の高齢化が進み、実質的に区分所有者だけでは検討が出来ないマンション。自主管理で比較的多い。

賃貸化・空室化が多いマンションの事例

賃貸率・空室率が高く、現に居住する区分所有者が少ないため、役員のなり手が固定化されており、一部の区分所有者に大きな負担がかかっているマンション。

 

第三者管理方式が検討された背景

国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の報告書によると、専門家を活用する第三者管理方式を検討した背景として、下記のようなことが挙げられています。

◆高度経済成長期の頃より大量供給されたマンションの高経年化が進行するとともに、自主管理マンションや小規模マンションにおいて、区分所有者の高齢化や賃貸化・空室化が進んだ結果、計画的な大規模修繕や老朽化等により臨時に発生する費用、耐震改修や建替えなど、専門性や多額の費用が必要な事項が増加した。

◆一方、管理組合(区分所有者)は、役員のなり手不足、管理費や修繕積立金の収支悪化、不適切な役員の長期継続による管理の混乱や内部対立等の問題を抱えつつ、困難な合意形成および執行(資金確保や工事等の実施)をしなければならない事態が顕著化してきた。

◆こうした背景から、マンション管理業者やマンション管理士が理事会に代わって管理者になる管理方式や、一部の管理組合連合会のように専門家を役員に派遣する方式など、外部の専門家をコンサル・顧問等ではなく、管理組合の役員として活用するケースが出てきた。

◆しかし、外部の専門家を管理組合の役員等に登用する場合には、適正な監督や利益相反取引の防止など、所要のルールの整備が必要となる。

◆以上のことから、「管理組合あるいは区分所有者が、個々のマンションの実情に応じつつ居住資産価値の最大化を図れるよう、多様なマンション管理方式を適時かつ安心して選択できる仕組みを提供する」という観点から、外部の専門家を活用した管理方式について国が検討を続けてきた。

 

「第三者」として委託する相手は?

第三者を役員として選任するマンションでは、
「役員のなり手不足」「専門的知識が必要な課題を抱えている」
という2つの問題が想定されます。
特に専門的知識を有する者としては、そのマンションが抱えている課題に応じて選択的に検討していくことになると思います。

以下は一般的に想定される外部専門家の例です。

①マンション管理会社

②マンション管理士

③NPO法人等のマンション管理組合連合会

④弁護士、税理士、司法書士、建築士などの専門家

 

第三者管理方式を導入するメリットとデメリット

メリット

◆ 専門的な知識を持った者が役員に入ることにより、課題の解決に向けた対応立案やスピードアップが期待できる

◆ 区分所有者の負担が軽減する

◆ 役員の変更(輪番制)による管理組合活動レベルの不安定化を解消できる

◆ 意思決定のスピードアップ

デメリット

◆ 区分所有者の意見が反映される仕組みが無いと、合意形成が形骸化する恐れがある

◆ 区分所有者による適切な監督が必要となる

◆ 利益相反取引の防止対策を講じる必要がある(例:外部専門家が自社で工事を受注して利益を得るようなケース)

◆ 費用が発生するケースがある(有償で外部専門家に委託する)

 

第三者管理方式を導入の手続き① 理事会承認

まず最初に自分のマンションにおいて「役員を第三者に委託する必要性があるかどうか」十分に検討することが必要です。役員のなり手不足解消や、管理組合の問題解決のために、他の手段よりも第三者管理方式が有効であるかどうか、比較検討しながら進めていきます。

そのうえで、第三者管理方式を進めていくこととなった場合には、次のような点を決めていきます。

・ 誰に委託するのか(マンション管理会社に管理委託している場合は、最初の相談相手に成り得るでしょう)

・ どのなパターンにするか(①理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型 ②外部管理者理事会監督型 ③外部管理者総会監督型)

・ 区分所有者による適切な監督をおこなうための具体的な方法

・予算化(有償で委託する場合の費用見積りを取得して予算化する)

・ 管理規約の改定(条文案の作成)

・ スケジュールの決定(総会開催日、事前の説明会日程、第三者委託の開始日等)

 

第三者管理方式を導入の手続き② 総会承認

第三者管理方式に変更するための総会決議は、通常は管理規約の改定が必要となるため、特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議)となります。

また、総会の出席者が少ないマンションであることが予想されるため、総会の議案書には、検討に至った経緯や委託先・監視方法・費用等について詳細を記載します。特に、管理者(理事長)を外部の第三者に委託するケースでは、透明性をもった運営ができるよう予め一定のルールを設けておくことが望ましいでしょう。

透明性を確保するためのルール例

◆ 工事の発注については、発注先・金額・内容に関する裁量や相見積りを取る場合のルール・承認方法等を予め定めておく

◆ 理事会で決議しなければならない事項を明確に定めておく

 

第三者管理方式を導入の手続き③ 運用開始

総会決議の後に、正式に外部の専門家による第三者管理方式をスタートします。開始後は、利益相反取引の防止や業務執行のチェック体制の充実を意識して、透明性をもった管理組合運営ができるように心がけます。具体的には、
「毎月収支報告書だけでなく管理運営状況報告書を提出してもらい、どのような意思決定や発注がおこなわれたか区分所有者に公開する」
等の手立てが考えられます。

 

まとめ

第三者管理方式を検討するポイントは、「大原則として区分所有者が管理組合の運営主体である」ということです。区分所有者全員の代表である理事会メンバー(役員)は、可能な限り区分所有者が務めて、所有者の意思を管理組合の運営に反映していくことが求められます。

一方で、居住資産価値の維持・向上の観点では、必要に応じて専門家のサポートを受けることも重要となり、さらに役員のなり手不足や大きな課題を解決するために、外部専門家を役員に入れて運営していく第三者管理方式も選択肢の一つであるということです。

第三者管理方式では透明性を持った運営が重要ですが、それ以上に必要なこととして、”委託する外部専門家との信頼関係”が挙げられます。居住資産価値の最大化をはかるためのパートナーとして、お互いに信頼関係を持つことできるようなコミュニケーションが、第三者管理方式を導入して成果を得るための第一歩ではないでしょうか。

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松井 久弥

松井 久弥

あなぶきハウジングサービス:松井 久弥(まつい ひさや)
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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