築36年~40年のマンション大規模修繕工事|3回目と4回目の大規模修繕とは

福田 純行

こんにちは。あなぶきハウジングサービスの福田です。

今回は、築年数が36~40年以上のマンションが実際に大規模修繕工事を行うときのお話です。

築36年から40年辺りは『第3回目の大規模修繕工事』を迎えるころですね。
と、同時に設備系の大規模修繕工事も発生する時期になります。

たとえば、給水管の劣化現象としては赤水とか水の出が悪くなる現象が発生したり、消防設備・共用照明器具等の劣化が顕著に現れます。排水管は以前主流であった鋼管や鋳鉄管などはほとんど見られなくなりましたので、一般的に40年以上の耐久性が見込めます。

そんなわけで、3、4回目の大規模修繕工事は設備系の改修を伴うことから、工事費用が一段と必要になってきます。

 

3回目の大規模修繕工事

さて、建築系の大規模修繕工事は3回目の場合、1、2回目とはちょっとだけ違うことがあります。それは屋上のアスファルト防水の改修方法です。
一般的に、屋上のアスファルト防水(露出が多い)は、第1回目の大規模修繕工事で『かぶせ工法』で改修します。
新築時のアスファルト防水を撤去せずに、ある程度の補修を行い、すっぽりと同じアスファルト防水をかぶせてしまう工法です。
なので、新築時の防水層もある程度防水性能が残っているため、十分防水性能は確保できるようになります。

但し、3回目の大規模修繕工事となると、そうとも限りません。
2回目までは『かぶせ工法』で対処できますが、3回目の工事では今までの防水層は基本的に全撤去します。(その時の劣化状況にもよりますが…)

新築時から数えると3層分の防水シートを撤去することになります。
さすがに4回もかぶせることはなかなか難しいのです。
こういった理由で、3回目の屋上の工事費(撤去費用)が通常の大規模修繕工事より増えることになるんです。

残念ながら平安時代の十二単みたいに行かないのです…。
建築防水の技術からすれば、100年コンクリートの時代だというのに、これはちっとも進歩がありませんね…(笑)
もうすでに500年コンクリートの時代(主な代表建築として竹中工務店の施工した奈良の「朱雀門」に使用されています)だというのに、防水技術はなぜか進みません…。メーカー様の技術力を期待します。

ところで、なぜ、“防水保証は10年”なのでしょうか?
実は10年というのは「無償で治します」という期限が10年間で、実際はケアすることで15年くらいの耐久性がある場合があるんです。
5~6年毎に保護塗装(トップコート塗り)を行い、こまめに部分補修を繰り返し行えば十分に10年以上の耐久性はあります。

以前の記事でも触れましたが、建物は『雨水との戦い』なのです。
「雨仕舞」が良いマンション、悪いマンションがあるのは事実ですが、マンションの購入者はそれについての知識がほとんどないために善し悪しの区別がつきません。
プロの設計士ですら、平気で「雨仕舞」をなおざりにしているのを良く見かけます。

「建物の開口部に庇があるか」、「窓に水切りはあるか」、「オーバーフローの設備はあるか」、「住宅の屋根の軒先は十分にあるか」…などなど、建物の耐久性にすべて影響するのでとても大切なことなのです。

4回目の大規模修繕工事

さあ、4回目ともなると建物についても、だいぶ不安になってきますよね。
今でもコンクリートは50~60年しか耐久性が無いと思っていらっしゃる方がほとんどです。
ならば、給水管・排水管の取替工事がほぼ35年目~45年目辺りになりますので、もしコンクリートの寿命が50年だとすれば、設備の大規模修繕工事はなぜか無駄なことに見えてきますよね。
コンクリートの耐久性は新築時の施工性にもよりますが、必要な補修工事を繰り返すことでその性能は十分に維持することができます。

国交省の推奨する12年サイクルで、大規模修繕工事を繰り返すことで十分な耐久性、いや資産価値の維持が可能になりますのでご安心してください。
設備の大規模修繕工事を行い、80~100年コンクリートを目指したいですね。
みなさんの次の代、またその次の代まで住めることになったらいいですね!

ちょっと話がそれましたが、4回目の大規模修繕工事時には外壁塗装の問題が発生します。
外壁塗装も、やはり十二単みたいには行きません。基本的には大規模修繕工事時には既存の塗装の上に新しい塗装を塗り重ねていきますが、さすがに4回目となると新築時から数えると5層分になるので少し無理があります…。
4回目はコンクリートが露出するくらいまで超高圧洗浄機で塗膜をはがし取ります。なので、また工事費がかさむことになります。

3、4回目の大規模修繕工事、設備改修と36~40年目あたりは、特に改修工事費がかさむ時期ですので長期修繕計画(案)でしっかりと見据えた計画修繕が必要になりますね。

まとめ

2009年6月にスタートした「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」があります。
その主旨は質の高い住宅を造ることでこれを長く使い、さらに世の中の住宅市場での流通を広く高めことを目的としています。

日本の住宅は寿命が短く、建て替えによる産業廃棄物の問題や建築資材・エネルギーの浪費等の問題があります。
ましてや、住宅ローンが終わればまた建て替えというとてつもない出費が待ち構えていることになります。

この法律によって認定されたいわゆる100年住宅が「認定長期優良住宅」といわれるものです。
その中でも「長期優良マンション」の数はまだまだ少なく、まだ誰しもが積極的に選べる時代ではありませんが、偽の認定証が出回るほど期待は高まってきています。(必ずしも一般のマンションに80~100年の耐久性がないわけではありません。)

是非、今後に注目していきたいですね。

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福田 純行

あなぶきハウジングサービス:福田 純行(ふくだ よしゆき)
前職の設計事務所時代に手掛けた設計・監理物件は北海道は北見市から南は長崎の佐世保市まで。今となってはとても懐かしい。現在は主にマンションの大規模修繕工事に関するコンサルティング(大規模修繕工事の改修設計・長期修繕計画(案)の作成等)を担当。人が住むマンションのストーリーを一つずつ守るのが役目です。
目指せ、「チェンジ・ザ・ワールド」・E.クリプトン・・・・グルーブな仕事を
皆さんのために。
有資格:一級建築士
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