分譲マンション駐車場の総入替えのデメリットとは │マンション管理組合

田中一直

先日、あるマンションの駐車場の空き区画問題を議題とした理事会に参加してきました。
このマンションでは、ここ数年で、駐車場の空区画が増加傾向にあり、管理組合収入に支障を来たしているため、今後の対応策を検討していました。

【駐車場の状況】
・住戸数58に対し駐車場区画数60(うち空区画 8) ※平面式46(空区画 3)、機械式14(空区画 5)
・駐車料金は近隣の月極駐車場より月額1,500円程度安い
・管理組合のルールで2年毎に区画の総入替え抽選を行い使用者を決定している
駐車場の空区画増加の原因は、自動車そのものの保有率の低下に起因することも多いのですが、このマンションでは全戸を対象に行ったアンケート調査によりますと、ほぼ全世帯が自動車を保有しているという結果がでていました。

アンケート結果により判明したことは、自動車保有者のうち数名は、マンション内の駐車場ではなく、近隣の月極駐車場を使用されていることがわかりました。
外部の駐車場のほうがマンション内駐車場より駐車料金が安い場合には、このような状況が起こりますが、そもそもこのマンションの駐車場は外部の駐車場より駐車料金が安いので、料金面での問題ではないことは明らかであったため、アンケート回答者数名に聞き取り調査を行った結果、その理由は、駐車場の定期的な総入替え制度による駐車場が固定できないという不安感によるものだということがわかりました。

マンションによっては、駐車場の公平な利用を目的として、定期的な抽選等により駐車区画の総入替え制度を運用しているマンションが多くあります。
公平性というメリットがある反面、今回のようなデメリットにより空区画が増加するようなケースが他のマンションにおいても生じる(既に生じている)こともあると思います。
駐車場の総入替えの運用にあたって、駐車場区画に「機械式駐車場」などの車両制限区画がある場合は上記のマンションと同様のことが起こる可能性は高いと感じています。
最近の機械式駐車設備には、ハイルーフ車(車高の高いワゴンタイプの車両)が駐車できる仕様のものも増えてきましたが、少し前の機械式駐車設備は、ほぼハイルーフ車は駐車不可でした。
このような状況のマンションで、駐車場の総入替えを行った結果、これまで駐車できていた車両が抽選等により駐車場に置けなくなる可能性があり、置けなくなった車両は、マンション外の月極駐車場等を契約せざるを得なくなります。

このような状況を防ぐため、ハイルーフ車の所有者に優先権を与えたうえで抽選を行うような運用をしていることもありますが、この場合、新たにハイルーフ車の購入を検討している人にとっては、優先権が与えられないため、いつまでもハイルーフ車対応区画を確保できない可能性が高いため、駐車場総入替えのメリットである公平性の観点からは疑問が残ります。

いつまで置けるか(いつから置くことができるか)が不確定なマンション内の駐車場を契約するより、より確実に区画を確保できる外部の駐車場を契約するようが多少の料金差があってもそちらを選択したいという考えになることは理解できます。
このようなことは、世帯数より駐車場の区画数が少ないマンションにおいても同様に入替え抽選による、抽選漏れ(ハズレ)リスクを回避するために、同様のことが起こることも予想されます。

上記のような結果、管理組合として駐車場収入が減ることになり、管理組合の収支に支障を来たすこととになります。不足した収入は管理組合組合員全員が補うこととなりますので、管理費の値上げ等につながることとになりますので、駐車場を使用していない人も含めた問題となります。

駐車場の総入替えには、公平性の確保というメリットがある反面、場合によってはデメリットが生じることもありますので、実施については駐車場の状況がある程度公平な条件(駐車車両の制限がなく区画位置などによる格差があまりない等)で使用できる前提がないと、デメリットが大きくなることも視野に入れる必要がある感じました。
また、管理組合としての観点と組合員(居住者)の観点の両面から考えてバランスをとった制度とすることが大切だと思います。

 

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田中一直

あなぶきハウジングサービス 田中 一直(たなか かずなお)
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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