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新・その車は停められる? 機械式駐車場の注意点

川村京祐

皆さまこんにちは。株式会社ヨコイの川村です。

これまで
・その車は停められる? 機械式駐車場の注意点
・続・その車は停められる?機械式駐車場の注意点

という記事を書いてきましたが、

今回は『新・その車は停められる? 機械式駐車場の注意点』 というタイトルです。

まるで某映画シリーズのような記事タイトルで、『3回に分けるほど注意点があるの…?』と思われるかもしれませんが、今回の記事はどちらかというとこれまでの記事の+α的な内容となっています。

1.電気自動車(EV)って停められる?

電気自動車、”Electric Vehicle”を略したEVとも呼ばれる自動車は海外メーカーを中心にラインナップが増えていて、メーカーによっては全ての車種をEVのみにすると表明したりしています。
そんなEVですが、機械式駐車場に停められるかどうかというと、

収容諸元さえ満たしていれば、問題なく停めることが出来ます。

ガソリン車やディーゼル車と電気自動車の違いはガソリンや軽油を燃やして回るエンジンと電気の力で回るモーターという動力源だけで、別に車そのものの形はどちらも大して変わりませんので当たり前といえば当たり前です。
しかし、EVにはひとつ注意すべき点があります。

例えばBMW社の5シリーズという車を挙げます。
2024年現在、ハイブリッド車を含めたガソリン/ディーゼル車と電気自動車の両方を1つの車種でラインナップしている例はあまりなく、このBMW 5シリーズはその数少ない例です。
そして下の表はBMW 5シリーズの諸元をまとめたものです。

諸元表
ガソリン車とディーゼル車(いずれもハイブリッド)、EVの3種類のラインナップの諸元です。
最低地上高こそEVのみ8mmほど他より低いですが、全長、全幅、全高は3台とも全く同じ数値です。
しかし重量に着目すると、EVである『i5 eDrive40』は車両重量が2,000kg (2t)を超えており、ガソリンエンジンのハイブリッド車である『523i』と比べると440kgも差があります。
他の2台がFR (後輪駆動:後ろの車輪が駆動する) なのに対してディーゼルエンジンのハイブリッド車である『523d xDrive』のみ4WD (四輪駆動:四輪全てが駆動する) ですが、構造が複雑で重くなりがちな4WD車よりもEVのFR車の方が重いことが分かります。

大量のバッテリーを車に積んでいるので、どうしてもガソリン車などと比べると重くなる傾向があります。
特に大型の高級EV車などは重量が2,500kgを超えるものも少なくなく、こうなると収容できる機械式駐車場はかなり限られてしまいます。

機械式駐車場にEVを駐車することを検討する際には、全幅や全高などだけでなく重量にも注意してください。

 

2.機械式駐車場でEVは充電出来る?

自分の愛車がEVで、諸元などに問題なく機械式駐車場に入庫出来るなら、ついでに充電も出来ればわざわざディーラーなど充電設備のある所まで車を走らせる手間が省けますが、実際のところEVを充電できる機械式駐車場はあるのでしょうか。

EV充電設備がある機械式駐車場はあります。

特に東京都では『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例』が2022年12月に改正されました。
駐車場に関係する内容としては戸建住宅以外で10台以上の駐車区画を有する建物は1台分以上の充電設備の設置が2025年4月から義務化されます
詳しくは東京都が2023年10月に配布した資料を確認してもらえればと思いますが、少なくとも東京都ではEVが1台は充電できる新築マンションやビルが増えていくことになります。

機械式立体駐車場に関しては『技術上、安全上又は法令上の事由により受電設備の設置が困難であると認められる駐車区画』の一つに挙げられており、この条例は適応されません。

しかしながら『※ただし、充電設備設置の技術発展等を踏まえ、当面の間に限り、適応から除く。』という注釈があり、今後機械式立体駐車場にもEV充電器の設置義務が課せられる可能性があります。

これを踏まえて機械式駐車装置の各メーカーはEV充電対応装置の拡充を行っています。

弊社の製品でもEV充電に対応しており、既に納入した物件もございますし、他メーカー様でもEV充電対応機種が増えています。

また2024年4月23日より弊社はTerra Charge 株式会社と提携し、弊社製駐車装置にTerra Charge社のサービスである『テラチャージ』のEV充電器を設置するプランの提供を開始しました。

テラチャージのEV充電サービスを採用することで自宅でも外出先でも一つのスマートフォンアプリでEVの充電が可能になります。
自宅(マンション)においてEV充電に使用した共用部の電気料金はテラチャージから還元されますので、管理組合様がご利用者様から電気料金を徴収するなどの手間が省けます。

ヨコイ製駐車装置にテラチャージの充電器を設置したイメージ画像

テラチャージの充電器を設置したヨコイ製駐車装置

充電器利用開始時

充電器利用時はスマートフォンの専用アプリを使用します

 

また機械式駐車場の利用者数が低迷し、駐車装置そのものを撤去して平面化を検討している管理組合様もいらっしゃると思いますが、機械式駐車装置を撤去した跡地にも充電器の設置は可能です。

倉庫とEV充電器

平面化後に設置した倉庫へのEV充電器設置は前例がありません

弊社では機械式駐車装置の撤去(平面化)時のオプションとして専有倉庫または専有倉庫+EV充電器設置プランのご提案も準備しております。

条件等はありますが、既存の機械式駐車場にも充電器を設置することが出来ます。
興味のある方はお気軽に弊社までお問い合わせください。

テラチャージとの提携についてはこちらのプレスリリースをご確認ください。

3.機械式駐車場でEVを充電する際の注意点

なんだか宣伝になってしまいましたが、機械式駐車場でもEV充電が出来るものがあることが分かっていただいたかと思います。

しかしながら駐車装置内でEVを充電する時にはいくつか注意しなければならない点があります。

1.充電ケーブルや充電コネクター、車の充電ポートのリッド(ふた)について

EVを充電する際にはEV充電器がコンセント型でしたら車載の充電ケーブルを利用、ケーブル付でしたらそのまま車の充電ポートに接続します(充電ポートが独自規格のテスラは変換アダプターも利用)。
機械式駐車場ではケーブル付の充電器はパレットなどに設置するには大きく、物理的制約の少ないコンセント型が主流です。

給油口・充電用ポートの位置の代表例

上の画像は代表的な給油口及び普通充電ポートの位置を表したものです。
2000年代以降のガソリン車などはトラックや一部のスポーツカー以外は車の右後ろか左後ろのどちらかに給油口があります。
しかしEVの充電ポートの位置はメーカーによってまちまちで、しかも同じメーカーでも車によって充電ポートの位置が異なります
(例:2024年式の日産自動車製のEVですと、リーフはボンネット部、サクラは右後に普通・急速充電用ポートがあり、アリアは左前に急速充電用、右前に普通充電用ポートがあります)
例えば先ほどのテラチャージの充電器を設置した弊社装置の写真では運転席から見て右後側に充電器がありますが、充電ポートが左前側にある場合は充電器から充電ポートまでかなりの長さの充電ケーブルが必要になります。

自動車メーカー純正の充電ケーブルもメーカーによってまちまちですが、5~7.5mほどの長さです。
充電ポートまでケーブルが届かないという物理的問題で充電が出来ない可能性があります

また充電ケーブルはパレットの外にはみ出さないようにしないといけないことにも注意しなければいけません
もしケーブルがはみ出しているとパレットの昇降時にパレットと装置の間にケーブルが挟み込んで故障や事故が起こってしまう可能性があります。

各メーカーもその対策を考えており、例えば先ほどの弊社のテラチャージの設置例では充電非対応のパレットに対して、充電対応パレットは左右の立ち上がりの高さを上げてケーブルをはみ出しにくくしています。

充電対応パレットと非対応パレット

EV充電対応パレット(右)は非対応パレット(左)と比べ左右の立ち上がりが高くなっている

 

EVの充電ポートのリッド(ふた)や充電ポートに挿しているコネクターにも注意する必要があります

充電ポート

上の写真は充電ポートを上から撮ったものです。
開いたリッド(ふた)がパレットからはみ出した状態になっており、充電コネクタとケーブルの接合部もややはみ出しているように見えます。
写真の駐車装置では横行パレット(1階の左右にのみ動くパレット)にEV充電器を設置しているので大きな問題はありませんが、上下に動くパレットに充電器が設置されている場合は先ほどご説明した充電ケーブルと同様、パレットと装置の間に挟み込んでしまう危険性があります。

車検証などに記載されている寸法が駐車装置の収容諸元内の車でも、開いた充電ポートのリッドを含めた幅だと収容諸元を超過してしまう場合があります。

充電ポートのリッドを開いたときの幅をカタログやウェブページに記載している自動車メーカーはほとんどありません。
機械式駐車場にEVを駐車することを検討されている方はこの充電ポートを開いたとき、または充電コネクターを挿したときにそれらがパレットからはみ出さないか自動車販売店に確認を取ったり、実測することをおすすめします。

前項目の最後に『条件等はありますが、既存の機械式駐車場にも充電器を設置することが出来ます』と書いたのは充電器や駐車装置の仕様や設備の問題もありますが、既存の機械式駐車装置のパレットが小さい場合、大半のEVの充電ポートのリッドを開くと収容諸元を超過してしまい、駐車した状態で充電できる車種が限られてしまう場合があるためです。

 

2.急速充電について

スマートフォンなどでは2015年頃まで充電器は急速充電を謳うもので12~15Wのものが主流でしたが、2024年現在はUSB PDの普及などで25~30Wで充電できるようになり、バッテリー容量が増えつつ充電時間が短くなっています。

EVでも普通充電と急速充電の2種類の充電器があり、例えば日産リーフ(60kWhバッテリー搭載車)の場合は、普通充電(コンセント型)が満充電まで23.5時間かかるのに対し、急速充電だと80%まで1時間で充電できるとしています。(日産:リーフ [ LEAF ] | 航続距離・充電 | 充電方法 (nissan.co.jp)より)

圧倒的に充電時間が短いし、機械式駐車場にも急速充電器は設置できないのかと思われる方もいらっしゃると思います。
しかし急速充電器そのものの値段が高い(数百万/1台)上にマンションに急速充電器を設置するには電気契約の変更とキュービクル(高圧受電設備)の増設なども必要になります。

高速道路のサービスエリア、大型商業施設、自動車販売店などには急速充電器が設置されていますが、外出先では短時間で充電する必要があるため急速充電器を採用しています。
時間的余裕がある自宅等では普通充電で充電するのが一般的な方法と言えます。

4.まとめ

今回は機械式駐車場というよりはEVの注意点の説明が多くなってしまいました。
EVの普及に関しては価格が高い、航続距離が短い、インフラ整備が追い付いていないなどのデメリットがまだ大きく、普及しているとは言い難い状態ですが、それでも少しずつ台数を増やしています。

また東京都のような新築物件に対する条例によるEV充電設備の設置義務化が他の自治体にも波及する可能性もあります。

機械式駐車場メーカーの弊社としてはEVの動向に注視しつつ、より魅力的なご提案が出来るよう開発や他社との協業などに努めてまいります。

拙文ではございますが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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川村京祐

株式会社 ヨコイ
川村 京祐 (かわむら きょうすけ)
大阪府出身。2018年入社。

入社以来、機械式駐車装置の新設の営業に携わり、2023年より既存の装置の保守の営業に携わっています。
機械式駐車装置についてまだまだ勉強中ですが、皆様のお役に立てそうな情報を発信出来たら幸いです。
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