こんにちは、仲井です。宅建試験を受験される方は、願書は出しましたか?以前講師をしていたとき、願書を出し忘れて講義中に泣き出してしまった受講生がいました。そうならないよう、まだ出願していない方は、早めに出願の準備をなさってください。さて、今回は、「委任」を解くときのポイントです。比較的出題の少ない分野ですが、点数がとりやすいことが多いので、手を抜かずに学習しましょう。
目次
- 委任とは
- 主なポイント
- ヒッカケに注意
委任とは
委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託する契約です。また、法律行為でない事務の委託を準委任といい、委任の規定が準用されます(ですから、委任と準委任を区別する必要はありません)。
たとえば、何かを調査したり、探したり、仲介したり、管理したり…。治療や弁護もそうですね。要は、他人に物事を頼む行為のことであるとイメージしましょう(頼んだほうを委任者、頼まれたほうを受任者といいます)。
委任は、結果を重視する請負と違い、たとえ失敗しても途中の過程を重視する、すなわち、強い信頼関係に基づく契約といえます。ですから、請負と違い、容易に他の人に再委任することはできません。
主なポイント
では、まずは、委任の主なポイントを説明します。正確に押さえるようにしましょう。委任は強い信頼関係に基づくということが実感できるはずです。
1 受任者の報酬
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません。すなわち、委任は、原則無償(ボランティア)で、特約があれば有償です。
そもそも民法は、明治時代にヨーロッパ大陸から渡ってきた法律であり、その価値観や互助の精神の影響があるかもしれませんし、委任は、強い信頼関係に基づくものです。要は、民法は、「お互いの信頼関係に基づいて動いてるんでしょ。お金は関係ないよね。お金を要求することはハシタナイですよ」と考えているのです。実際、他人にちょっと物事を頼んだだけでいちいち報酬が発生したら、ギスギスした世の中になると思いませんか?
2 受任者の注意義務
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います。
いわゆる善管注意義務と呼ばれるものであり、強い信頼関係に基づく委任においては、比較的高度な注意義務が要求されます。
3 受任者による報告
受任者は、①委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、②委任が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を報告しなければなりません。この言い回しは、正確に押さえるようにしましょう。
4 委任契約の終了
委任は、①委任者または受任者の死亡、②委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと、③受任者が後見開始の審判を受けたことによって終了します。
これらの終了事由は、委任は強い信頼関係に基づくということから説明がつきますね。たとえば、最初に信頼して事務を委任した(あるいは受任した)のに、後で相手に破産等の事由が生じてしまうと、当初の期待と違うことになってしまいます。逆に、委任者が後見開始の審判を受けた場合は、むしろ受任者は委任者のために事務を続けなければならないといえます。
5 委任の解除
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます。当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければなりません。ただし、やむを得ない事由(急病など)があったときは、この限りではありません。いわゆる「無理由解除」と呼ばれるもので、 この言い回しも正確に押さえましょう。
「あなたが何となく気に食わなくなった」でも解除できますし、そもそも理由なんか要りません。委任は、強い信頼関係に基づくので、お互いの信頼関係がなくなれば、自由に解除することを認めているのです。
ヒッカケに注意
1 善管注意義務について
強い信頼関係に基づく委任においては、善管注意義務という、高度な注意義務が要求されます。要するにベストを尽くせということであり、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」(極端な話、放置しようが、サボろうが自由)ではないので注意しましょう。
2 報酬について
善管注意義務、受任者の報告義務、無理由解除のいずれも、報酬の有無は関係ありません。
委任は強い信頼関係に基づくので、受任者は、たとえ無報酬でも、善良なる管理者の注意義務や委任者に対する報告義務を負います。また、報酬があろうとなかろうと、信頼関係が失われれば、解除することが可能です(もっとも、相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、相手方の損害を賠償しなければなりませんが)。
3 委任契約の解除について
「相手方に不利な時期の場合は、委任契約を解除することができない」…さて、この記述は正しいでしょうか、誤っているでしょうか。
委任契約の解除の内容をもう一度確認しましょう。「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、損害を賠償する必要はない」…どうでしょう?「相手方に不利な時期の場合は、委任契約を解除することができない」とはどこにも書いていませんね。したがって、冒頭の記述は誤りです。
このように、たとえ相手方に不利な時期であっても、解除自体はすることができますので、注意しましょう。
いかがでしたでしょうか?そろそろ砂漠のように範囲が広い民法が、手のひらでコロコロ転がせるような時期になってきたのではないでしょうか。民法も残すところ今回含めあと3回です。科目が変われば気分も変わります。引続き頑張りましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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