平成22年4月までは、マンション管理組合の財産の分別管理の方式として、「原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式」というのがありました。今回は、マンション管理適正化法の改正理由を織り交ぜながら、マンション管理業者の実態についてお話します。
あるマンション管理業者が法制度上の盲点を潜り抜けると、さらに法規制が強まります。当然、その影響は、管理組合様にも波紋が広がります。
目次
- マンション管理適正化法改正前の財産の分別管理の不備
- マンション管理業者に対する規制と管理会社の実態
- マンション適正化法改正点
- まとめ
マンション管理適正化法改正前の財産の分別管理の不備
マンション管理適正化法の公布以降、管理会社に業務委託していた管理組合のお金が、管理会社に横領される事件が発生。横領事件等を受けて、管理会社の管理組合のお金の取り扱いについての見直しが図られました。法改正前の財産の分別管理の方式には、以下の不明確なところがありました。
過去には、分別管理を行わず管理組合から預かったお金を会社の運転資金に流用した管理会社がありました。これは、もう論外です。
マンション管理業者に対する規制と管理会社の実態
マンション管理業者に対する規制
マンショ管理業を営もうとする者は、国土交通省に備えるマンション管理業者登録簿に登録を受けなければならず、この登録期間は5年です。マンション管理業者には、管理委託契約前の重要事項説明、契約内容を記載した書面の交付、修繕積立金等の財産の分別管理、管理実績、財務諸表等の情報開示等の業務規制があります。月次収支報告、決算書類作成、重要事項説明書の作成、管理委託契約書の作成、理事会や総会準備などの事務処理も大変な労力ですが、マンション管理業者は、その事務所ごとに、管理事務の受託を管理組合数30組合につき1人以上の割合で成年者である専任の管理業務主任者を置かなければなりません。
管理会社の実態
一般社団法人マンション管理業協会の協会会員一覧では、平成28年6月21日時点の協会正会員数は365社となっています。協会に加入している業者は、全事業者のわずか2割にも達していません。マンション管理新聞社が調査・公表した「2015年マンション管理会社の受託管理戸数ランキング」によると、全2,320社のうちの上位15位だけで、50.5%のシェアを占めています。この調査結果をみると、マンション管理業界は、新築マンション市場の低迷で、寡占化の進行とリプレイスの激化の再燃化が加速していることが分かります。ますます「管理の質」が問われてきます。「管理の質」という前に、マンション管理業者としての資質確保は勿論のこと、マンション管理適正化法等についての理解不足がないようにしなければなりません。
マンション管理適正化法の改正点
平成22年5月1日からマンション管理適正化法が改正されました。改正ポイントは、以下のとおりです。
- 修繕積立金と管理費等を徴収後1ケ月以内に収納口座から保管口座へ移し換える
- 管理組合名義の保管口座については、管理会社による印鑑とキャッシュ・カードの保管管理を禁止
- 管理会社に翌月末日までの月次報告(会計区分ごとの収支報告と収納状況
- 管理費等の保証額を修繕積立金等金銭の1ケ月分相当額以上とする
マンション管理組合の財産の分別管理の方式については、「原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式」から、「分別管理イ、ロ、ハの方式」に変更となりました。これらの新方式については、次回、詳しくご紹介します。
まとめ
マンション管理適正化法の改正により、マンション管理会社への業務規制が強まり、管理組合における3つの財産の分別管理の方式も変更になりました。これらの変更事項は、当然、管理組合様にも影響があります。管理事務にかかわる事項は、重要事項説明書に記載されています。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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