今回から数回に分けて、マンション居住者向けの管理組合会計についてお話しします。
第1回目は「マンション会計業務の報告の重要性」についてです。
各マンションの管理組合さんの決算書類を見ますと、いろんなスタイルが見受けられます。マンション特有の科目があり、会計処理に違いがある場合もあります。ここでは、会計業務を理解するための基礎的なポイントを理解しましょう。
マンション会計の受託責任(定期的な報告が大切)
マンション管理全般を管理会社に委託している場合、管理会社は事務管理業務の一環として、管理組合の会計業務を代行します。
しかし、自主管理のマンションの会計担当理事はどんなことをすればよいのでしょうか。ここでは、自主管理マンションの会計担当のつもりで、会計業務についてお話ししますね。
管理会社が入っていなくて、全部自分たちで仕事をするわけですから、会計担当となると、管理費や修繕積立金の集金から各業者への代金支払まで、やるべきことはたくさんあります。組合員のお金を預かるわけですから、責任も重大です。
マンション管理組合は、居住者の方が安心して快適に暮らしていけるよう、「日常の清掃」や「給水・エレベータなどの設備点検」、「修繕工事」まで様々な仕事を担っています。これらの仕事を行うためには、当然ですが、お金がかかります。
自主管理マンションの会計担当の方は、組合員に対して、
・そのお金を決められた目的で使ったのかどうか
・集めたお金で間に合ったのかどうか
・預かっているお金がいくら残っているか
などについて、定期的に報告する必要があります。(会計の受託責任)
管理組合は年1回、1年間に収入や支出がどれだけあったのか、決められた予算に対して、その範囲内でお金を使ったのか、それともオーバーしてしまったのかを報告しなければなりません。(決算報告)
また、管理組合の財産は全体でいくらあり、現金・預金や長期積立保険、住まい・る債などがどれだけ残っているか、これから払わなくてはならないお金(未払金、借入金など)はいくらあるのかについても報告する必要があります。
これらの会計報告書を作成し、監事の監査を受けたうえで、組合員の皆さんに報告する義務があります。
こうした決算報告が行われないと、毎月納める管理費・修繕積立金等のお金が、目的どおりに正しく使われたのか、その結果を知ることはできません。また、数年ごとに行われる大規模修繕工事に必要な資金状況を知ることもできません。
会計報告から管理組合の活動がわかる
日本では、管理組合の会計基準というものは制定されていませんが、一般的には、管理組合の会計に関する一定の情報をまとめるには、「貸借対照表」、「収支計算書」「その他の書類からなる会計報告書」を用います。
会計報告書から、こんなことが分かってきます。(一例です)
- 管理費や修繕積立金等がきちんと目的どおりに使われたのか。
- 収入と支出に過不足はなかったのか。
- 現在の管理組合の財産はどれだけあるのか。
- 修繕積立金は予定どおり積み立てられているのか。
- 管理費や修繕積立金等はきちんと納められているか。
- どのような損害保険をかけているのか。
- どのような設備があり、どれだけ経費が掛かっているのか。
- 組合活動費などは有効に使われているだろうか。
マンションを安心・安全・快適にするには、様々な業務があることが分かります。日常清掃から定期点検、その他組合活動に関する項目などが存在すること、また、1年間だけの計画だけでなく、大規模修繕工事や給水設備の更新計画など、あらかじめ計画しておくことが必要な項目が存在することも分かります。
まとめ
今回は、会計業務の報告の重要性についてまとめました。会計報告書に目を通すことにより、マンションの現状を知ることができます。管理費、修繕積立金等の金額がマンションを快適に保つための適正な水準であるのかも判断できます。また、マンションの財政的な健康度もわかります。年1回の決算報告については、興味を持って、総会の資料に目を通すことをお勧めします。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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