こんにちは。あなぶきハウジングサービスの綾部です。
皆さんがお住まいのマンションでは、防火管理者は選任されていますか?
あまり馴染みがなく何となく責任が重そうということで、なかなか決まらず困っているという方々も多いと思います。今回は、防火管理者とはどういうものか知りたい、防火管理者の選任がなかなか進まないので何とかしたい、という管理組合や区分所有者の皆様のために、防火管理者について記載したいと思います。
※この記事では、一般的な例として居住用マンションの場合を説明します。建物の用途や規模等によって必要な資格の種類や防火管理者の業務内容も変わってきますのでご注意ください。
【防火管理者の選任義務について】
消防法8条1項により、建物の管理権原者(分譲マンションの場合、通常は管理者=理事長がこれにあたります)は防火管理者を定め防火管理上必要な業務を行なわせなければならない、という趣旨の文言が規定されています。防火管理者の選任が必要な建物かどうかについては、消防法施行令に定められています。防火管理者には甲種・乙種の2種類があり、マンションのような共同住宅の場合は規模によって次のように分けられています。
・収容人数50人以上・延床面積500㎡未満:乙種防火対象物 →乙種防火管理者の選任が必要
・収容人数50人以上・延床面積500㎡以上:甲種防火対象物 →甲種防火管理者の選任が必要
・収容人数50人未満 →選任不要
なお、防火管理者の選任が必要なのに選任していない場合は、罰則規定がありますのでご注意ください。(消防長が選任命令(消防法第8条第3項)を出し当該命令に違反して防火管理者を定めない場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(消防法第42条)、防火管理者を定めても届出を怠った場合は30万円以下の罰金又は拘留(消防法第44条))
【資格取得について】
防火管理者に選任されるためには、防火管理者資格(国家資格)を取得する必要があります。資格には甲種と乙種がありますが、一般的な居住用マンションの場合は概ね甲種資格が必要であり、講習期間は2日間です。講習は全国で通年実施されていますが、地域により実施機関や日程が異なりますので、事前に調べてみてください。(東京都、鳥取県、岐阜県、他一部の市町村では消防本部(局)が講習を実施、それ以外の地域では一般財団法人日本防火・防災協会が講習を実施しています)
インターネットやFAX等でも申し込めますが、方法がよくわからない場合は最寄りの消防署に行けば案内してもらえるでしょう。
なお、資格取得のためには費用や手間(講習費、交通費、お仕事を休む等)が発生しますが、所有マンションの防火管理者に就任するために受講する場合は、管理組合から費用や手当を支給してもらえるか、事前に確認してみてください。
【防火管理者の仕事について】
消防法施行令第三条の二において、次の内容が規定されています。
・消防計画の作成、届出を行うこと
・消火、通報及び避難の訓練を実施すること
・消防用設備等の点検・整備を行うこと
・火気の使用又は取扱いに関する監督を行うこと
・避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を行うこと
・収容人員の管理を行うこと
・その他防火管理上必要な業務を行うこと
なお、実際には、消防設備等の点検・整備・維持管理は管理会社(もしくは専門業者)へ委託しているケースが多いと思います。防火管理者は、それらが適正に行われているかチェックし、点検結果や設備の状況を自ら把握するようにしましょう。
【消防訓練について】
一般的な居住用マンションの場合、消防計画で定めた回数(頻度は法定されていません)の消防訓練を実施する必要があります。訓練の形式や内容は細かく定められていませんので、消火・通報・避難訓練を軸として、マンションごとに適した形で行うのがよいでしょう。防火管理者の方だけで全てを段取るのは大変なので、訓練内容の決定や案内文の作成、当日の段取り等、管理会社や理事会に協力を求めてはいかがでしょうか。
また、マンション関係者のみで行う(自主訓練)こともできますが、消防署隊員の方に来ていただき指導を受けながら訓練することもできますので、よりしっかりとした形式で行いたい場合は事前に消防署へ申し込んでください。
一般的な訓練内容は次のとおりです。必要に応じてアレンジすることもできます。
・消火訓練
消火器(消防署が貸し出してくれます)の放射訓練、屋内消火栓がある場合はその使用方法のレクチャー等を行います。
・通報訓練
火災を発見した場合における消防署への通報を訓練します。
・避難訓練
エレベーターは使用せずに、避難経路に沿って、予め決めておいた一時避難場所(駐車場や近隣の公園等)まで避難します。
・その他
AED使用訓練、煙体験(テント内に煙を充満させた状況での避難を体験する訓練)、消防署隊員の方による講話、地震体験訓練(事前に消防署へ依頼し起震車に出動してもらう)、非常食の試食 等
【消防計画の作成について】
消防計画は記載事項が多数あり作成するのが大変そうですが、各消防本部(局)消防庁や地方自治体のホームページ上でひな形や作成例が公開されていますので、是非活用してください。
なお、消防計画への記載事項は、消防法施行規則に規定されています。
第三条
一 令第一条の二第三項第一号に掲げる防火対象物及び同項第二号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分に限る。)
イ 自衛消防の組織に関すること。
ロ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。
ハ 消防用設備等又は法第十七条第三項に規定する特殊消防用設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)の点検及び整備に関すること。
ニ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
ホ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。
ヘ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。
ト 防火管理上必要な教育に関すること。
チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
ヌ 防火管理についての消防機関との連絡に関すること。
ル 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取扱いの監督に関すること。
ヲ イからルまでに掲げるもののほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項消防法施行規則 抜粋
【防火管理者の選任方法】
管理組合の役員と同じように、防火管理者のなり手不足に苦慮しているマンションは多いと思います。必要に応じて、選任に関する制度(例/輪番制、その年の役員の中から選出する、報酬制度を設ける、防火管理者に就任したら役員は免除する等)を制定することで、選任しやすくなるかもしれません。それでも決まらない場合は、防火管理者の業務を有償で請け負う会社もありますので、管理組合で検討してみてはいかがかでしょうか。
防火管理者は、災害発生時等万が一の時に重大な責任を負うおそれがあるということで忌避されることが多いですが、そういった意味では管理組合役員もマンション管理に関して一定の責任を負っています。防火管理者の業務内容をしっかりと把握・周知し、継続していける制度づくりが大切だと思います。
いかがでしょうか。貴方のマンションの防火管理者選任に少しでも役立てば幸いです。
綾部 祐太
綾部 祐太(あやべ ゆうた)
東京都出身。2013年入社。
入社から現在まで一貫して分譲マンション管理業務に従事しています。
日々の業務を通じて培った知識や経験をもとに、皆様がより快適なマンションライフを送ることができるよう、有益な情報を発信してまいります。
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士
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