こんにちは。あなぶきハウジングサービスの松井です。
私が分譲マンションの役員の方と話をする中で、時々「管理組合の法人化」についてご質問をいただくことがあります。マンション管理組合の法人化とは一体何なのか、その目的やメリット・デメリットについてご紹介します。
この記事は、2018年2月22日に公開した記事を修正し、2019年9月3日に再公開しています。
目次
- そもそも管理組合とはどういう組織なのか?
- ポイント① 法人化する目的
- ポイント② 法人化する際の手続き
- ポイント③ 何が変わるのか
- ポイント④ 法人化のデメリット
- まとめ
そもそも管理組合とはどういう組織なのか?
区分所有法によると、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」と定められており、この区分所有者の団体が管理組合と呼ばれています(標準管理規約では、「区分所有者全員をもって、○○マンション管理組合を構成する」と定められています)
この管理組合は通常、団体としての組織を備え、多数決の原理が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、代表の選出・総会の運営・財産の管理その他団体としての主要な点が規約などで確定している等の要件をみたしているので、「権利能力なき社団」として扱われ、法律上の権利関係の主体となることができません。そのため、管理組合が権利能力を持つためには、法人化することが必要になるのです。
しかしながら、日本中のマンション管理組合の大部分は法人化していません。その理由は、法人化しなくても、通常の管理組合運営にはほとんど支障がないからです。
つまり、法人化しなければ対応できない問題が発生した時になって、初めて法人化を検討するのです。
ポイント① 法人化する目的
では、法人化しなければ対応できない問題とはどのようなものがあるのでしょうか。
マンション管理組合での事例をご紹介します。
・不動産を購入する際に、登記をするため(たとえば、隣地の駐車場を管理組合で購入した際に、管理組合として不動産登記ができないため、法人化して管理組合法人で登記する。法人化していない場合、代表者である理事長が登記することになります)
・管理組合で訴訟を提起するため(法人化していない場合、代表者である理事長が原告となります)
・銀行の口座名義を継続するため(法人化していない場合、口座名義は「○○マンション管理組合 理事長○○」となり、理事長が交代する度に名義変更が必要になります)
ポイント② 法人化する際の手続き
実際に法人化する必要が生じた場合の手続きについてご紹介します。
1.理事会での決議
2.総会での決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による特別決議が必要)
<総会決議のポイント>
◆①法人となる旨、②名称(「○○管理組合法人」または「管理組合法人○○」)、③事務所、の3つの要件を定めること
◆理事と監事を選任する(理事長という役職はありません。また、理事の任期は二年となり、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間となります)
◆通常、管理規約の変更も必要となります
◆登記諸費用を予算計上する
3.法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局において設立登記をする
ポイント③ 何が変わるのか
組合員や居住者の日常生活においては、何も変わらないと言っても過言ではありません。ただし、前述のとおり、管理組合が権利能力を持つため、権利関係が明確になり、団体の名称が変わり、理事長職がなくなる、銀行の名義が変わるなど、管理組合運営における変更点がいくつかありますので、整理して対応していくことが必要です。そして何より、法人化することに至った目的を遂行することが第一となります。
ポイント④ 法人化のデメリット
それでは、法人化にはデメリットはないのでしょうか?一般的には、下記のようなデメリットが考えられることから、法人化を検討する理事会や総会において、十分に確認しておくことが必要です。
・法人化する際に、登記諸費用が必要となる
・理事が改選されるたびに、登記が必要となり、手間と費用が発生する
・毎年、財産目録および区分所有者名簿を据え置かなければならない
・登記忘れ等があった場合には、20万円以下の過料が科せられる
まとめ
管理組合を法人化するタイミングは、管理組合が権利能力を持たなければならない問題が発生した時であり、理由・目的が無く、何となく法人化することはあり得ないと思います。その問題を対応するにあたって、法人化した場合・しない場合のメリット・デメリットや費用を十分に検討した上で、慎重な判断をするようになるでしょう。
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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