音に対して敏感な人は、できるだけ防音性の高い物件に住みたいと思いますよね。また多くの人が、アパートやマンションにおける近隣住人とのトラブルはなるべく避けたいと思っているのではないでしょうか。
今回は、防音性の高い物件の選び方や騒音トラブルの防ぎ方について話をしていきたいと思います。
防音性の違いは建築構造の違い
そもそもなぜ音が伝わるのか
音は固体や空気の振動によって伝わります。アパートやマンションで周囲の部屋の音が聞こえるのは、音の振動が物や空気、壁伝いに他の部屋まで伝わってしまうからなんです。
固体音と空気音の違い
音は物体を伝わって伝播しますが、固体音と空気音という2つの音があります。
固体音 |
建物の構造内部を通る音。空気に触れた瞬間空気音となり響く。足音・床や壁に直置きしたスピーカーの音・空調音・トイレの排水音・エレベーター等の機械振動が該当し、どこから聞えてくるのか分からない音となる |
空気音 |
空気を伝わる音。隣の部屋からの音楽・話し声などが該当。比較的防ぎやすい。高音よりも低音のほうが防ぎにくいという特徴がある |
壁の材質や構造によって振動の伝わりやすさは大きく異なります。つまり「防音性の違い=建築構造の違い」と言えるでしょう。
防音性に優れた建築構造とは
一般的なアパートやマンションの建築構造は以下の3つに分類されます。
●木造
●鉄骨
●鉄筋コンクリート(RC造・SRC造)
このなかでもっとも防音性に優れているのが鉄筋コンクリート。何本もの鉄の棒で骨組みを作って、そこにコンクリートを流し込んでいます。壁の密度が高いので空気音に対する遮音性はかなり高いです。
鉄筋コンクリート構造の物件なら、壁の厚さや構造にもよりますが、普段の生活音が周囲の部屋まで響くことはあまりありません。
逆に一番防音性が低いのは木造建築。木材は通気性が良い反面、音も通しやすいと言えます。壁そのものが薄く、隣人の咳の音や携帯電話のバイブレーションまで聞こえてくるという物件もあります。防音性の高い賃貸物件を求めるなら、木造物件はなるべく避けましょう。
この2つの中間にあたるのが鉄骨構造。建材に鉄材や鋼材を使っているぶん、木造建築よりもやや音を遮りやすいです。
しかし、鉄筋コンクリートの物件では騒音トラブルが起きないかというと、そんなことはありません。
同じ鉄筋コンクリートの物件でも、防音性の高さは物件によって様々です。静かに暮らせるかどうかは、同じ建物にどんな住人がいるかによっても変わってきます。
足音などの固体音は上の階の住人が直接床を振動させているため、鉄筋コンクリートの物件でも響きやすいです。子供の泣き声や楽器の音などの大きな音も、完全にシャットアウトするのは難しいでしょう。
防音性が高いアパートやマンションを選ぶメリットは?
音に対してそこまで過敏ではないという人でも、防音性の高い物件を選ぶことによって得られるメリットがあります。
1. 保温性がある
防音性が高いということは、壁の密度が高く窓の構造がしっかりしているということ。そのため外気が室内に入りづらく、室内の熱が外に逃げにくいので、おのずと保温性が高まるんです。
2. 気楽に生活できる
防音とは何も外から入ってくる音を遮断するだけではありません。自分自身が発する音も遮断してくれるのです。
アパートやマンションには多くの人が暮らしているので、他人の生活音が気になってしまう人もいます。自分の生活音が、隣人にとっては騒音になってしまうかもしれません。
また、子供がいたりペットを飼っていたりする人は、どんなに気をつけても大きな音を出さないようにすることは難しいですよね。近隣トラブルに巻き込まれることを未然に防ぐためには、防音性の高い物件を選んでおいた方が得策です。
静かな環境で暮らしたいならチェックしておくべきポイント
「音に対して敏感だから周囲の住人の生活音が聞こえない物件に住みたい」「近隣住民とトラブルが起こらないよう防音性の高さを重視したい」という方は、図面を見たとき、内見したときにチェックした方が良いポイントがあります。
幹線道路や線路沿いの物件でないこと
大前提として、音に敏感な人は幹線道路沿いに住むのはやめましょう。幹線道路は時間帯を問わず自動車が行き来するので、静かな時間帯はほとんどありません。
高速道路やバイパスなどの近くに住む場合は内見時、騒音を軽減してくれる遮音壁があるかどうかを確認しましょう。線路が近くにある場合も同様で、終電の時間まではずっと電車の音が響きます。
他にも大学や幼稚園が近くにあると、日中は周辺が賑やかになると予想できます。
こういった周辺の騒音は窓から入ってくるので、あわせて窓の構造もチェックしておくと良いでしょう。ガラスが厚かったり、二重窓になっていたりすれば、外の騒音はほとんどカットできます。
角部屋の方が生活音が気になりにくい
隣り合う部屋の数、隣り合う面積が少ない分、角部屋の方が隣人の生活音は気になりません。角部屋は他の部屋より家賃が高いことが多いですが、音に敏感でどうしても気になってしまう人ははじめから角部屋に住むようにした方が賢明です。
但し階段・エレベーターがある方の部屋の場合は、角部屋であっても人の行き来が気になる場合もあります。なるべくなら階段やエレベーターから遠いほうの角部屋を選ぶと良いでしょう。
内見時に、時間帯や曜日によって周囲の状況に変化が無いか確認しよう
昼の時間帯はそもそも多くの住人が出払っているので静かなのは当たり前です。寝ている時間帯に内見することは難しいですが、夜を静かに過ごしたいなら日中だけではなく、なるべく遅めの時間帯にも内見を入れて防音性を確認した方がいいと思います。
時間帯や曜日によって周りの状況が変わることもあります。たとえば周囲に飲食店が多い街は、昼間は静かでも夜になると途端に騒がしくなることがあります。逆に、幼稚園や小学校が近くにあって昼間は騒がしいものの、夜になると閑静な雰囲気になる街もあります。
最後に、防音性の高さを重視するなら、建築構造が鉄筋コンクリートの物件を選ぶのが確実。すべての音を遮断できるわけではありませんが、木造や鉄骨造より外からの音が伝わりにくいです。
騒音トラブル事例を知って回避しよう
防音性が低い物件に住むと、自分が音を発してしまう側としても、騒音に悩まされる側としても、住人同士のトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。騒音問題は集合住宅で起こりやすいトラブルのひとつ。実際に多くの事例があります。
ファミリーも単身者も学生も住んでいるというような、住人の属性がバラバラな物件は騒音トラブルが起こりやすいでしょう。それぞれの生活時間帯が違うため、たとえば子供が寝ている時間に帰宅してテレビを見はじめる住人がいたり、夜勤の仕事をしていて深夜にバタバタと音を立てる住人がいたりと、やむを得ない生活音が騒音になってしまうことがあります。
内見時のチェックポイントでもお話しましたが、できるだけ自分と生活時間帯が似ている人が多く住んでいるアパートやマンションを選ぶようにするのがよいでしょう。
音に対する過敏さは人それぞれです。洗濯機や掃除機の音といった自分ではどうしようもない生活音さえ我慢できないという人も実際にいます。
自分がどんなに気をつけていても、そういった人が隣や上下の部屋に住んでいたらトラブルの避けようがありません。
今すぐできるアパートで静かに暮らすための工夫
家賃の予算が足りないことや防音性が高い空き物件がないなどの理由で、静かな環境で暮らしたいと思いつつ、防音性が必ずしも高いとはいえないアパートに住んでいる方もいるでしょう。
そんな時、今すぐにでも自分でできる工夫は「家具の配置を変える」こと。
隣の部屋と生活空間がぴったり隣接している場合、壁際に居るとどうしても音が聞こえてしまいます。例えば、生活空間が隣接している壁に本棚を置けば、それだけで効果的でしょう。一方ベッドは生活空間と隣接していない部分に置くことで、隣人の生活音のせいで安眠を阻害されることは少なくなるでしょう。
まとめ
防音性の高い物件を選ぶと、静かな暮らしができる以外にも、室内の保温性が高まったり、近隣の騒音トラブルを未然に防ぐことができたりというメリットがあります。
私自身、以前、防音性の低い物件に住んでいたときは、あまり気にしていなかったものの、一度防音性の高い物件に住むと、騒音のない生活がどんなに快適なものか気付きました。物件選びのポイントのひとつとして、防音性の高さを意識してみることをおすすめします。
馬場景子
馬場 景子 (ばば けいこ)
岡山県出身 。2010年入社
入社以降、賃貸仲介業務、賃貸管理業務、分譲賃貸業務といろいろな業務をさせていただいています。
少しでも皆さんのお役に立てる情報を発信していきますので、宜しくお願いします。
保有資格: 宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、管理業務主任者、相続支援コンサルタント
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