こんにちは、仲井でございます。今回も、近年の改正点を含む分野の主なポイントを説明します。今回は、民法の「制限行為能力」の分野について、「成年被後見人」の主なポイントを説明します。では、早速中身に入りましょう。
目次
- 「制限行為能力」とは
- 成年被後見人の主なポイント
- 近年の改正点について
「制限行為能力」とは
本題に入る前に、まずは、「制限行為能力」とは何かを説明しましょう。
制限行為能力制度は、子供等の経済的判断能力が不十分な者について、契約等の行為を制限すること等を通じて、保護を図る制度というイメージです。
制限行為能力者には、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4つの類型が定められています。たとえば、未成年者が単独でおこなった契約等は原則として取り消すことができます。これによって、本人の財産保護等が図られるのです。
もし、このような制度がなければ、契約等の効力を争う際に「私は契約時に判断能力が不十分だった」ということをいちいち証明しなければなりません。そこで、民法は、経済的判断能力が不十分な者を制限行為能力者として類型化し、これらにあたれば、民法の定める保護が受けられるとしているのです(契約の相手方にとっても、「この人は制限行為能力者だから、契約をしても、後で取り消されるかもしれないな」と予測がつきやすいのです)。
では、ここから成年被後見人について主なポイントを説明します。
成年被後見人の主なポイント
1 成年被後見人とは
民法では「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる」「後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する」とされています。すなわち、年齢に関係なく、事理弁識能力を欠く常況にあり、後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人として、保護者である成年後見人が付されるということです。
2 成年被後見人の法律行為
民法では、「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない」とされています。
すなわち、「事理を弁識する能力を欠く常況」のもとでの法律行為ですので、取消しの範囲は広く、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外は、取り消すことができます。
たとえ、同意を得た行為でも、単に権利を得る行為(たとえば、物をもらうこと)でも、行為の意味が分かっていないため、取り消すことができることにご注意ください。
なお、一時的に事理弁識能力を回復したとしても、後見開始の審判が取り消されていないときは、原則通り「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる」とお考えください。
なお、「取消し」自体は、原則として、成年被後見人が単独でおこなうことができます。
3 成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可
成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可についても触れておきましょう。
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
成年被後見人の居住の安定を図るための規定で、たまに本試験で出題されます。
近年の改正点について
ここからは、成年被後見人に関する近年の改正点について、説明します。
1 成年後見人による郵便物等の管理
家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物等を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができます(この嘱託の期間は、6か月を超えることができません)。郵便物の転送を嘱託できるということですね。
そして、成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができます。もっとも、成年後見人は、その受け取った郵便物等で成年後見人の事務(=財産に関するものというイメージで十分です)に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければなりません(なお、この交付された郵便物等を除き、成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った郵便物等の閲覧を求めることができます)。
2 成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限
成年被後見人が死亡した場合、成年後見人の任務は終了するのですが、それでは火葬ができないなど、一定の不都合が生じてしまいます。
そこで、成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、一定の行為をすることができます。
一定の行為として、①相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為、②相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済、③その死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(①②を除く)が挙げられます(ただし、③の行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません)。
…今日はこれくらいにしておきましょう。成年被後見人自体は、出題頻度が多くないのですが、改正点は選択肢の一つとして出題される可能性がありますので、周辺知識も含めざっと内容を把握しておきましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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