安心な住環境のための基本: アスベスト含有検査と報告義務の理解

田村翔

皆さま、こんにちは!
私、あなぶきデザイン&リフォームの田村と申します。
あなぶきグループにてリフォーム専門のお仕事をさせていただいている会社で、リフォームプランナーをさせていただいてます。

今回は、リフォームを検討されておられる方、またリフォームに興味をお持ちの方に向けてお役立ち情報をご紹介したいと思います。

皆さまは、「アスベスト(石綿:いしわた)」という言葉を耳にされたことはありますか?
実際のところ、あまり目にする物でもなく、私生活においてほぼ触れることが無い言葉なので、自分には遠い存在の言葉とお考えの方もいらっしゃるのではないかと思います。
実際、私もリフォーム工事をしてきましたがつい最近になり、アスベストの建材含有調査や事前報告が定められ、戸惑いを実感しながら正しく仕事をしているところです。

「どのような仕組みなのか?」、「リフォーム工事において、施主は何をしなくてはいけないのか?」といったことについて、始まったばかりのアスベスト事前調査の義務化に対して、今回は、私たちの住環境を守るために不可欠な要素についてお話したいと思います。

 

アスベスト(石綿:いしわた)って何?

アスベスト(石綿)とは、自然界に存在するけい酸塩鉱物のうち繊維状を呈している物質の一部の総称です。蛇紋石や角閃石に含まれる鉱物の一種で、天然に産出する発がん性物質であることが判明しています。

 

アスベスト(石綿:いしわた)の物性と用途をもう少し詳しく

石綿は、鉱物種によってそれぞれ性状は異なりますが基本的には鉱物を破砕すると繊維状物質にほぐれます。繊維状材料としての利用以外にも、紡織品として加工され利用されたこともあります。

石綿には下記にあるように様々な特性を有しています。

鉱物を細かく破砕するだけで数多くの特性を有する天然繊維を得られながら、製造コストは安価であったため、世界中のあらゆる場面で利用されていました。

今ではアスベストの危険性が明確になった

ここで、アスベストが健康に及ぼすリスクについてお話いたします。
石綿一本の直径(幅)は、髪の毛の5,000分の1の細さと言われています。通常はこれらが束状になっていますが、切ったり、削ったりするとほぐれ、束が細くなり、肉眼では見えない大きさで空気中を浮遊します。石綿粉塵を吸い込むと、小さいものだけが肺胞に到達し沈着します。

石綿が原因となる病気には癌(がん)以外にも石綿肺、良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚があり、さらに重い症状として、中皮腫、石綿関連肺がんなどがあります。これらの病気はアスベスト(石綿)を吸い込んだ直後に発病するのではなく、吸い込んで数十年後に時限爆弾のように発病するのが恐ろしいところです。

 

アスベスト(石綿:いしわた)含有調査・検査

2023年10月1日より、リフォーム工事をする前に、アスベスト(石綿)を含有する建材が廃棄建材の中に潜んでいないか、必ず有資格者が事前調査をしなければならなくなりました。

 

建築物の石綿含有建材調査という用語は、労働安全衛生法及び石綿障害予防規則の「事前調査及び分析調査」や大気汚染防止法等の「解体工事に係る調査及び説明等」、建築基準法の「報告、検査等」に位置づけられています。「建築物石綿建材含有調査資格」という長い名前の資格は、これら関係法令に基づく調査義務の発生時や通常の建築物利用時における石綿含有建材使用実態調査を行う際に必要となる重要な資格となりました。

 

ちなみに労働安全衛生法(安衛法)では、労働者の保護を目的として、主に事業者の義務等を定めた法律があります。この法律では、アスベスト(石綿)製造等の禁止等の重要な規則、作業主任者等の体制と責任の規定を定めており、労働安全衛生法の細則が石綿障害予防規則(石綿則)として更に詳しく禁止事項が定められています。

 

安衛法及び石綿則において、事業者(工事の施工者)は、建築物、工作物又は船舶の解体又は改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておくことが義務づけられています。

事前調査の結果、石綿の使用が確認された場合、事業者は作業計画の策定や工事の届出、作業員への特別教育の実施、作業主任者の選任を行い、定められた方法に従って工事を行う必要があります。

 

アスベスト(石綿)が非常に危険な物質であることが分かっている以上、私たちリフォーム工事を担う企業はルールを守り、社会的責任を果たすことが求められています。

 

事前調査の記録について

事前調査を行った際は、大防法及び石綿則に基づき、元請業者等及び事業者は事前調査結果の記録を作成し、当該記録の写しを除去等の作業中に現場に備え付けるとともに、作業終了後も保存しなければなりません。

保存期間は、大防法では解体等工事が終了した日から3年間、石綿則ではすべての事前調査が終了した日(分析調査を行った場合にあたっては、解体等の作業に係るすべての事前調査を終了した日または分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)から3年間としています。

 

所有者等への報告について

石綿則及び大防法では、解体・改修工事の施工者は事前調査結果を3年間、石綿則では事前調査結果の概要(常時作業に従事する労働者の記録の一部)は40年間保存することが義務付けられています。調査者は、事前調査結果の記録を3年間保存することが望ましいとされています。建築物等の所有者も、石綿飛散防止対策に責務を有していることから、解体・改修工事や石綿の除去までではなく、事業者と同様に調査終了後も保存することが望ましいとされます。

建築物の解体等工事の元請業者は、発注者に対して書面により事前調査の結果等を報告し、説明書面を3年間保存しなければなりません。

 

アスベスト含有検査の手続きについて

検査の手続きは、以下のステップに分かれます。

 

専門家の選定:

専門的な知識を持ち、経験豊富な専門家を選ぶことが重要です。(調査機関)

 

サンプリングと検査:

専門家は建物内の潜在的なアスベスト含有材料からサンプルを取り、それを検査します。このプロセスは慎重に行われ、安全を最優先にします。

 

結果の報告:

検査の結果は報告書として提供されます。これには、アスベストの存在、量、場所などが含まれます。

 

報告義務の正確な実施

次に、アスベスト含有報告義務について理解しましょう。

事業者は、下記のいずれかの工事を行おうとするときは、あらかじめ電子情報処理組織を使用して事前調査結果等所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。

【報告が必要な工事】(石綿含有建材の使用の有無にかかわらない)

・建築物の解体工事 : 解体部分の床面積が合計の80㎡以上

・建築物の改修工事 : 請負金額が100万円以上(税込)

・工作物の解体・改修工事 : 請負金額が100万円以上(税込)

特定の工作物のみ:ボイラー、焼却設備、発電設備等

鋼製の船舶の解体・改修工事 : 総トン数20トン以上

※電子システムの使用が困難な場合は、書面によっても行えます。

※請負金額については、請負契約が発生していない場合でも請負人に施工させた場合の適正な請負代金相当額で判別。

 

 

まとめ

アスベスト含有検査と報告義務は、私たちの健康と安全を守るために欠かせないものです。
正しい理解と実践が、安心な住環境を築く第一歩です。この義務は私たちの健康を守るための基盤であり、私たちの住環境の安全を確保する役割を果たします。
是非、この義務について正しい知識を持ち、実践していきましょう。安心な住環境を手に入れるために、アスベスト含有検査と報告義務を遵守しましょう!

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田村翔

田村 翔(たむら しょう)
あなぶきデザイン&リフォーム
広島出身 2019年入社

管理物件のマンションだけでなく管理外の戸建てのリフォームも行っております。
休みの日はバスケをして体力維持に励んでます。
最近は釣りも始めたりと多方向に趣味を持ちインスピレーションの感じる場を増やしています。
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