「You Know タイノウ?」~マンション管理費の滞納発生を防げ!~

濱崎修一

こんにちは!あなぶきハウジングサービスの濱崎です。大型連休中、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私たち管理会社のマンション担当社員(いわゆるフロント社員)は、日ごろ土曜、日曜日、祝日に理事会や総会などの会合で出勤していることが多いこともあり、ゴールデンウィーク等の大型連休にまとめて休暇をいただくことが多いような印象を受けます。
皆様のマンションの担当フロントも、この期間お休みされている?かも知れません。。

(※緊急時等お急ぎの場合は、あなぶきコールセンターにご連絡ください~0800-500-5505~。24時間365日対応しております)

さて、大型連休といえば、どうしても支出がかさんでしまうものです。臨時的・突発的な出費が増えてしまうと、結果として定期的な支払いが滞ってしまいかねません。

今回は、皆様が定期的に支払われる管理費等の支払が滞った際に生じる、管理組合会計の「滞納」について、ご紹介いたします。

✅マンションの管理費とは?

さて、今回のテーマである滞納ですが、管理組合へのマンション管理費、修繕積立金といった定期的な支払があって、その支払いが滞ってしまうためめ発生することとなります。
ここでは、マンションの管理費等の役割と、滞納することでどのような問題が発生するのかをお話ししましょう。
滞納についてご説明する前に、管理組合の会計は、「一般会計」と「特別会計」に分類しております。管理組合によっては、「駐車場会計」「災害積立金会計」といった会計区分を設けている管理組合もございます。
皆様が毎月負担されている管理費は、通常「一般会計」の収入に区分されることとなります。一般会計とは、日常の管理に要する収入と費用に関する会計区分です。
管理費も含め、分譲マンションにおける、所有者や占有者が支払わなければならない費用には、主に以下のものがあります。
① 管理費
② 修繕積立金
③ 専用使用料(例:駐車場使用料、専用庭使用料、ルーフバルコニー使用料等)
④ その他費用
これらについては、区分所有法により、所有者であれば、管理費・修繕積立金の支払い義務があります。また、マンション管理規約に基づき、各種専用使用料やその他費用の支払いが必要なこともありますし、賃借人が専用使用料(具体的には、駐車場代や水道料など)を負担することもあります。一般的には、管理費等の支払いは毎月発生しますので、1ヶ月分でもその支払いが滞ると未収金が発生してしまいます。
また管理費等を滞納している場合は、当然修繕積立金も含まれるため、両方を同時に請求することになります。
出来る限り、滞納はない方が望ましいですが、お住いになられている方にも事情があり、結果として管理組合の収支上、滞納が発生することがございます。
管理費等の会計区分については、以前の私のブログもご参照下さい。

「だから管理費は払いません!」~マンション管理費の使い道、お話しします~ | もっとわくわくマンションライフ|マンションライフのお役立ち情報 (anabuki-m.jp)

✅どうして「滞納」が発生するの?

では、どうして滞納が発生してしまうのでしょうか?
多くの管理組合様は、指定の銀行口座からの引き落としにより、管理費や修繕積立金をお支払いされているケースが多いかと存じます。ごくまれに、毎月管理組合の指定口座に、都度お振込みされている場合も存在しますが、その際、通常1ヶ月分のお引き落としですと、指定の口座の残高不足等も考えられます。管理費等の口座に「あると思っていた」金額がなく、引落が出来なかったケースです。
その際、原則としては管理組合の指定口座にお振込みをいただくことをお願いしておりますが、例外的に、滞納者との合議の上「合算での指定口座からのお引き落とし」をさせていただくこともございます。1ヶ月や2ヶ月の短期間(それでも滞納は滞納ですが)の場合、ご本人が残高不足に気づかなかったことも想定されるため、上記のような措置を行うこともあります。

一方、昨今の経済状況により、支払いが困難な区分所有者もいらっしゃいます。
そのため、「払いたくても払えない」場合が発生し、滞納となるケースがございます。
支払能力が低下した際、例えば電気代やガス代といった所謂「ライフライン」に関連する支払いが滞ると、即電気やガスの供給停止といった措置を行われることとなり、日常生活に支障が生じます。
それに対して、マンションの管理費や修繕積立金の支払が滞ったとしても、(管理組合によって異なりますが)、即強制退去となるケースは低く、フローに基づいて督促を行っていく場合が多いと言えます。
いうなれば、管理費等を滞納した場合の「支払優先順位」が、後回しにされることが多いといえるでしょう。

✅滞納が続けばどうなる?

支払能力が低下し、支払いが滞ってしまっている居住者は支払額(未収金)がどんどん増えてしまい、一般的に10万円を超えると、なかなか一括での支払いが難しく、ますます支払いが滞りがちとなります。
一方、マンション管理組合としては、滞納額が増加することで現金資産の目減りが生じてしまいます。
わかりやすく言えば、管理組合の決算時、貸借対照表内に「未収金」といったかたちで計上されてしまいます。
すなわち、資産として計上されていることで、本来収入として存在していたお金が管理組合に入っていないことを示しています。
その結果、本来あるはずの収入がなく、マンションの維持に係る修繕工事や定期的な点検を実施しようにも、現金資産がなく、実施できなくなってしまう恐れが生じます。
ひいては、マンションにとって「滞納が増えれば、マンションが朽ちてしまう」こととなってしまいます。

✅滞納からの脱出

では、滞納を未然に防ぐ、また滞納額を増やさない方法としてはどのような方法があるのでしょうか? 当然最終的には全額返済を行っていただきますが、ここでは通常管理組合(管理会社)が行っている督促方法についてご紹介します。

【フェーズ1】~まずはお知らせから~

① 手紙(文書)
② 電話
③ 訪問

第一段階としては、管理会社から滞納している住戸に対し、文書や通知等の手紙をお届けいたします。こちらについては、比較的滞納されている日数が少ない方に適用する方法といえます。また、数ヶ月滞納が続いた場合、電話での督促や、手紙や電話でつながらない場合には、実際にご自宅へ訪問することもございます。フェーズ1に関しては、比較的滞納金額が少額であったり、滞納日数が短い等の場合に適用することが多いと言えます。

【フェーズ2】~実効性の高い方法へ~

① 駐車場・駐輪場等の契約解除
② 支払確約書の提出
③ 内容証明の送付

先の段階にて効果が出なかった場合(支払がなかった、支払う意思が見られなかった)、次の方法を検討します(フェーズ2)。この時点から、管理会社からの督促だけでなく、管理組合としての対応を求められますので、より「効力の高い」方法にシフトしていきます。
また、管理費や修繕積立金だけでなく、駐車場や駐輪場等の共用部に係る使用料も滞納している場合は、予め通達した上で①駐車場や駐輪場等の契約解除(解約)することもひとつの方法です。
ただし、この場合は予め「管理費等を○か月滞納した場合は駐車場及び駐輪場の契約を解除する」等、駐車場契約書や規約に定めておく必要があります。駐車場代や駐輪場代も、規約で「管理費等」に含む定めをしておけば、訴訟になり、競売され所有者が変わった場合でも、買主に未納分は引き継がれますので、そのような規約に変更検討することも効果的です。
また、②支払確約書の提出を求めたり、③内容証明の送付等、滞納者より強制力のある方法で督促を行う方法もございます。

【フェーズ3】~法的措置などの手続きへ~

① 訴訟(少額訴訟、通常訴訟)
② 支払督促手続き
③ 任意売却の提案
④ 強制執行

上記のような段階を経たにもかかわらず、管理費等の滞納が解消されない場合、滞納状況はかなり深刻といえます。このような状況になると、①少額訴訟等、法的措置を取ることをお勧めします。この時点になると、管理会社による通常業務の範囲での督促期間を超えてきますので、管理組合として本格的な法的手続きを検討していただくこととなります。
並行して、②支払督促手続き③任意売却の提案(残債等に注意)を模索することとなりますが、なおも支払いがない場合、④強制執行の措置を取ることもございます。
強制執行手続とは、申立人の申し立てに基づき、裁判所が強制的に相手方(管理費等の滞納者)に対して請求権を実行してくれる手続です。強制執行の申し立てをして承認されると、まず債務者(管理費等の滞納者)の給料が差し押さえられ、次に銀行の預貯金が差し押さえられるといった債権執行手続きが取られます。
ただし、相手方の勤務先や金融機関の口座情報を調べる義務は債権者(この場合管理組合)にありますので、予めこのような情報を集めておくことも必要です。

✅マンション管理認定計画制度と滞納

さて、2022年4月に施行された「マンション管理計画認定制度」では、管理組合が認定を得るため、認定基準のなかに滞納金額の割合が明示されております。

3 管理組合の経理
(1)管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること。
(2)修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと。
(3)直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
「3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること」、という文言を紐解くと、「100戸のマンションで、3ヶ月以上の滞納が10戸」の滞納額ですので、おおよその管理組合様においてば該当しない可能性が高いと言えますが、滞納額の大小により、認定を受けられないケースも出てくると言えます。

✅「滞納」は逃げ切れるのか?

先ほどより、管理費等の滞納についてご紹介しておりますが、滞納金額を払わずに「逃げ切れる」ことは可能でしょうか。
結果から言うと、・・・「逃げ切れません」
というのも、滞納が存在するままお部屋を売却したとしても、その住戸の管理費等がきちんと納められていない場合、新しい買主が管理費等の滞納分を負担(引き継ぐ)することになります(この場合の買主を「特定承継人」といい、特定承継人は前の持ち主の管理組合に対する負債も負担します)。
即ち、以前住んでいた区分所有者の借金を、新しい買主が引き継ぐこととなってしまいます。

なお標準管理規約では、第26条に以下のように記載されております。

(承継人に対する債権の行使)
第26条 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承 継人に対しても行うことができる。

✅時効の成立に注意!

さて、管理費等の滞納で気を付けるべきことが時効の成立です。
管理費等などの「定期給付債権」(民法第169条 定期給付債権の短期消滅時効)の請求権5年間行使しなければ時効が成立して、債務者が時効の援用(債務者が債権者に対し「時効により借金は消滅しています。」という意思表示を行う事)を主張すれば、未回収の管理費等は消滅してしまうため注意が必要です。
但し、時効を中断することも可能であり、民法が定める時効中断事由は以下の3つです。

  1. 請求
  2. 差押え、仮差押え又は仮処分
  3. 承認

時効の中断があると、それまでの時効期間は無効になって、その時から改めて時効の進行がスタートします。
例えば裁判上の請求とは、裁判手続きによる権利の存在を主張する行為で、通常の訴訟がこれに当たります。
一方、内容証明郵便による督促は6カ月間だけ時効成立を遅らせますが、その後、裁判等の手続きに移行しないと時効中断の効力がなくなるので注意が必要です。

✅滞納を未然に防ぐ方法

では、皆様自身が滞納を未然に防ぐには、どのようなことが挙げられるでしょうか。
基本的には口座振替の場合、残高の確認を行ってください。先にも述べたように、多くの方は「残高不足」での滞納となってしまっているからです。
そのため、指定口座の残高状況には必ず指定日前日までに残高の確認を行うようにする等、くれぐれもご留意ください。
なかには、管理組合(マンションのローン等も含め)の毎月の支払のため専用の口座を設定されている方もいらっしゃると思いますので、なおのこと気にかけていただくとよいでしょう。

✅まとめ

いかがでしたでしょうか。マンションの区分所有者である以上、管理費・修繕積立金は毎月支払わなければなりません。
管理費等を滞納すると、管理組合の資金が足りなくなり、ひいては皆様のマンションの建物の維持に必要な点検や工事を実施することができなくなってしまいます。
マンションの管理運営は、未収金がなく全員が管理費等を支払うことを前提に試算しています。誰か一人が払わないと、全体に影響を与えることになるため、未収金がある場合には、理事会等において詳細を把握した上で、問題意識をもって解消に取り組んでいくことが必要です。そして、初期の段階から迅速に督促対応することが未収金を常態化させない最大の対策になります。
滞納をされる方は、滞納をするつもりで滞納となったわけではないと思いますが、分譲マンションにお住まいの皆様にとっては、滞納の有無によって、快適なマンションライフが左右されることもございます。そのため、管理組合の収支(決算等の際にご確認ください)に興味を持っていただけるようサポートしてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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濱崎修一

あなぶきハウジングサービス 西神戸支店
濱崎 修一(はまざき しゅういち)

香川県高松市出身。
メーカー、人材サービス業の営業を経て、2010年入社。

入社以来、分譲管理部門に一貫して従事、四国(松山)、中国(山口)、そして2016年の熊本地震直後より九州・熊本にて赴任しました。
現在は、数十年ぶりの関西(西神戸支店)にて勤務しております。
様々なご入居者様との交流を通じて、自分自身日々成長を感じながら業務を行っています。

これからもマンションにお住いの皆様にとって、日々の住生活がより豊かになるよう、「しあわせ『感』理」の情報発信を行っていければと思います。

保有資格:管理業務主任者
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