マンション修繕委員会の方必見!これで分かる長期修繕計画と修繕積立金

福田 純行

こんにちは。あなぶきハウジングサービスの福田です。今回はマンションの長期修繕計画(案)の見直しについてお話をいたします。

 

 

マンションの長期修繕計画とは?

長期修繕計画とは、マンションの性能を維持し老朽化を防止するために、管理組合が作成するマンションの長期的な修繕計画のことを言います。

あくまでも”計画”なので、実施する修繕工事の内容や時期、費用等を確定するものではなく、一定期間ごとに見直していくことを前提としています。

というのも、修繕工事の内容は、計画作成時のマンションの現状を踏まえて設定されますが、実際に工事を実施する時になると、技術革新等により計画との異なるものになることがあるからです。

また、“計画期間を何年に設定するか”によって計画に盛り込まれる修繕工事の内容も異なります。(※新築時の計画期間が30年の場合、修繕周期がこれを超える修繕工事項目は盛り込まれていませんので注意が必要です)。

こうしたことからも、(繰り返しになりますが)長期修繕計画は一定期間ごとに見直していくことが必要となります。
みなさんがお住まいのマンションでは、一定期間ごとにきちんと見直しが行われていますでしょうか?

マンション標準管理規約の第32条-3には管理組合の業務として「長期修繕計画の作成又は変更に関する業務」が明示してありるように、長期修繕計画の作成は管理組合の義務!なのです。

さて、ここから長期修繕計画における収支の主人公『修繕積立金』についてのお話です。

※長期修繕計画の作成方法やそこに盛り込むべき内容については、平成20年6月に、国土交通省が作成・公表した「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」に基づいて作成されます。

マンションの修繕積立金とは?

修繕積立金とは、将来予想される修繕工事に要する費用を、長期間にわたり、計画的に積み立てていく金額のことを言います。

購入したマンションについて、安心・安全で快適な住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時・適切な修繕工事を行うことが必要ですが、マンションの共用部分の修繕工事は、12年、15年、30年といった長い周期で実施されるものが多く、修繕工事の実施時には、多額の費用を要します。

こうした多額の費用を修繕工事の実施時に一括で徴収することは、区分所有者にとって大きな負担となり、区分所有者間の合意形成が困難であるほか、場合によっては、「資金不足のために必要な修繕工事が実施できない」といった事態にもなりかねません。

なので、計画的に金額を積み立てて、マンションを長期間にわたって良好な状態に維持していく必要があるのです。

大規模修繕工事を行う箇所については、「大規模修繕工事とは?」で確認してみてくださいね。

修繕積立金、金額の目安について

修繕積立金は、一般的にマンション購入時に分譲事業者から、長期修繕計画とともに提示されますが、マンションごとにその金額や計画は変動します。
特に、機械式駐車場等の設備がある場合は、修繕工事に多額の費用を要しますので、修繕積立金の額に影響する度合いが大きいとされています。

あくまで目安ですが、修繕積立金の概算を算出するための方法は下記のとおりです。

概算算出方法

算出式  Y=AX(+B)
Y:購入予定のマンションの修繕積立金の額の目安
A:専有床面積当たりの修繕積立金の額(下表)
X:購入予定のマンションの専有床面積(㎡)
( B:機械式駐車場がある場合の加算額 )

※駐車場の維持管理・修繕工事費や駐車場使用料について、管理費や修繕積立金と区分して経理している場合など、機械式駐車場の修繕工事費を駐車場使用料収入で賄うこととする場合には、「機械式駐車場がある場合の加算額(B)」を加算する必要はありません。(+B)の詳細はまた改めてお話しします。

 

修繕積立金の金額目安

ガイドラインあくまでも”目安”なので、修繕積立金の額が目安の範囲に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断される訳ではありません。

修繕積立金改定の事例

現状

上図は、あるマンションにおける“現状の修繕積立金の金額のままで行ったシュミュレーション”です。

二回目の大規模修繕工事を迎える時点で赤字の結果となりました。二回目の大規模修繕工事から支出累計(水色の折れ線グラフ)がオレンジの収入累計より上回っています。

築14年・40戸の規模で、1回目の大規模修繕工事が終了したばかりのマンションですが、現状の積立金が戸あたり約9900円/月となっています。国交省の積立金の目安より引用した単価計算をすると平均専有部面積65㎡×250=16,000円となります。(小規模マンションなので単価が高い)目安の金額より13年間も収入減だったために改定は必至となりました。

解決案として、修繕積立金の金額改定を行った場合、下図のように収支が黒字になります。

案

この場合の積立金改訂は、

次年度から戸あたり平均5,000円UPを3年間、同様に4年目からさらに戸あたり平均5,000円UPを3年間、7年目からさらに戸あたり平均3,000円UP

という改定案です。3回目の大規模修繕工事時には借り入れも併用する計画です。

まとめ

分譲事業者は1戸でも多く売るために、修繕積立金を極力安く設定している傾向があり、「安すぎる修繕積立金」が社会問題だとして、平成23年に国会で審議され国交省より「マンションの修修繕積立金に関するガイドライン」が発表されました。
一般に、マンションの分譲段階では、分譲事業者が長期修繕計画と修繕積立金の額をマンション購入者に提示していますが、マンション購入者は、修繕積立金等に関して必ずしも十分な知識を有しているとは限らず、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定されるといった例も見られます。

その結果、必要な修繕積立金が十分に積み立てられずに修繕工事費が不足するといった問題が生じています。

当社でも、マンション管理会社として長期修繕計画(案)の見直し、作成を提案し、よりよい資産形成のためにお手伝いをしていますが、一般的には大きな工事金額を要する1回目の大規模修繕工事の時に、積立金の不足に気がつくマンションが多く見受けられる傾向にあります・・・。計画的な見直しを行い、場合によっては少しでも早い時点での修繕積立金の改定が必要ですね。

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福田 純行

あなぶきハウジングサービス:福田 純行(ふくだ よしゆき)
前職の設計事務所時代に手掛けた設計・監理物件は北海道は北見市から南は長崎の佐世保市まで。今となってはとても懐かしい。現在は主にマンションの大規模修繕工事に関するコンサルティング(大規模修繕工事の改修設計・長期修繕計画(案)の作成等)を担当。人が住むマンションのストーリーを一つずつ守るのが役目です。
目指せ、「チェンジ・ザ・ワールド」・E.クリプトン・・・・グルーブな仕事を
皆さんのために。
有資格:一級建築士
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