こんにちは。元気いっぱい夢いっぱい。あなぶき建設工業の西口です。
人生常に発見の連続、そして日々勉強。
マンション・ビル等の新築・大規模修繕工事の現場監督を経て、現在は建設統括本部という部署で各現場の安全、品質検査等の業務を行っております。
現場でのお客様との関わりを大切にして、日々の業務に努めております。
そんな業務の中での発見や気づきなどを発信し、
少しでもブログ読者の皆様に有益な情報がお届けできれば幸いです。
本記事では、主にマンション管理組合様・マンションオーナー様向けにブログを書いていこうと思います。特に大規模修繕工事など工事に関わる内容を中心に管理組合様に向けてブログを発信していきます。
今回は、エレベーター地下ピットに水が溜まって困っている管理組合様に『浸透系塗布防水』という工法をご紹介いたします。
エレベーターのある建物では法定点検(年1回の義務)や定期点検(任意)があり、点検報告書に地下ピット内に水が溜まっている旨の報告がある場合があります。放置するとエレベーターの電気系統の配線等もある為、あまり好ましくありません。溜まった水は定期的に抜いても、漏水箇所の処置を施さなければ、また水が溜まってしまいます。そんな状況を改善する方法を今回ご提案いたします。
『浸透系塗布防水』とはどんな防水か
『浸透系塗布防水』という防水材を聞いたことはありますでしょうか。
防水工法にはシート系防水と塗布系防水があり、『浸透系塗布防水』は塗布するタイプの防水に位置づけされます。また、塗布系防水の中でも、メンブレン防水(継ぎ目のない膜で防水)と浸透系防水(ひび割れ等に追従し、隙間を埋める)に分かれ、同じ塗布防水でも防水による性能の発揮の仕方が異なります。
『浸透系塗布防水』の特徴について
『浸透系塗布防水』はポルトランドセメントという一般的なコンクリートにも使用されるセメントにケイ酸質系の材料等を混合し、水で溶いたものです。コンクリートの表面に塗布することで、コンクリートを緻密化して防水を図る工法です。
膜をつくるメンブレン防水は、施工後に形成された継ぎ目のない膜により、水をはじくことで水の浸入を防止し、一般的には屋上やバルコニー・廊下の溝などに施す防水として使用されます。
一方、『浸透系塗布防水』はその名の通り、コンクリートの躯体内部に材料が浸透することで性能を発揮する防水工法です。
では、なぜ『浸透系塗布防水』は躯体内部に材料が浸透することで、防水機能を発揮することができるのでしょうか。その答えは、中学校や高校の化学の授業で習うような物質同士の化学反応を説明することで理解することができます。
躯体表面に浸透系塗布防水材を直接塗布することにより、特殊活性剤(シリカ成分)が躯体内部に浸透し、内部の遊離石灰(水酸化カルシウム)と反応して、安定した結晶体をつくりコンクリートを緻密にします。
つまり、躯体表面に塗った材料がひび割れの隙間に入り込み、成分同士の化学反応により膨張して隙間をふさぎ、コンクリートが緻密になることで、水がエレベーター地下ピット内に浸入するのを防ぐ防水工法です。
下の絵を見ていただくことで、『浸透系塗布防水』による漏水防止のメカニズムをイメージしやすいかと思います。
施工事例について
『浸透系塗布防水』は主に、雨水の浸入・湧水が発生するエレベーター地下ピット、受水槽、雨水槽等の地下躯体に使用されることが多く、湿潤状態でも施工できる特徴を持った防水工法です。
エレベーター地下ピットのほとんどは、地中に箱状のコンクリートを施工している為、経年劣化によるひび割れ等から雨水の浸入や地下水などの湧水がエレベーター地下ピット内に浸入し、水溜まりになる場合があります。エレベーターの法定点検などで水が溜まっていることが発見されるケースも珍しくはありません。
某物件では、当初30cm程度溜まっていた水が、『浸透系塗布防水』を施工することで半年~1年ほどで水かさが1~2センチ程度になっておりました。
実際の施工では、エレベーター地下ピット内に溜まった水をポンプで排水し、すべての水を抜き取った後に、『浸透系塗布防水』を施工します。また、『浸透系塗布防水』と合わせて、急結性高性能止水セメント(すぐに硬化して漏水を防止するセメント)と併用して使用する場合もありますが、どちらの材料も躯体が湿潤状態で、背面水圧がかかる側(エレベーター地下ピット内)への施工も可能な為、エレベーター地下ピット内の漏水改善の為に効果を発揮します。さらに、ポリマーセメント系塗膜防水(メンブレン防水)を併用してハイブリット仕様の施工をする場合もあります。
下の写真が実際に『浸透系塗布防水』による施工を行ったエレベーター地下ピットです。
まとめ
防水工法でまずイメージするのが、屋上のアスファルト系や塩ビ系のシート防水やバルコニー・廊下の溝等に用いるウレタン防水が有名だと思います。しかし、今回は、『浸透系塗布防水』という主に地下躯体に使用する防水についてご紹介させていただきました。
『浸透系塗布防水』は、エレベーター地下ピットの漏水のように、水の入り口が分からないだけでなく、出口の特定が難しい場合にも有効な防水工法です。
もし、エレベーター点検報告書等で、お住いのマンションのエレベーター地下ピットに漏水していることを確認した場合は、まず管理会社や弊社にご相談いただければ幸いです。
西口洸平
西口 洸平(にしぐち こうへい)
新築工事、大規模修繕工事の現場監督を経て、
現在は建設統括本部にて現場の後方支援を行っております。
趣味ではありませんが、好きなことは現場近くや出張先で美味しいご飯を食べることです。
ご飯を食べると思わず『ウマッ』と声に出てしまうので、会社の人によく笑われます。
経験豊富な上司や好奇心旺盛な後輩がいる会社で毎日楽しく働いております。
本ブログでは現場で培った経験等を活かし、ブログ読者の皆様に
有意義な情報発信となるよう努めて参ります。
保有資格:1級建築施工管理技士
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