こんにちは。あなぶきハウジングサービスの立花です。
前回のブログで、社会問題にもなっている「管理組合の役員のなり手不足問題」について取り上げました。
<前回記事>【マンション管理組合】役員のなり手不足に関わる相談事例①~理事会の代理出席~
今回も引き続いて、お客様から実際に承った役員のなり手不足に関連するご相談事例をいくつか紹介いたします。まずは以下のようなご相談です。
理事長からのご相談①(協力金の徴収)
管理組合役員を輪番制で決めていますが、「仕事が忙しい」「高齢なので難しい」等、様々な理由で就任を辞退する方が多く、困っています。
このような状況において、ある役員から、「就任を辞退した方から『協力金』を徴収することで辞退者を減らすことはできないか」との提案がありました。
役員就任を辞退した方から「協力金」を徴収することは可能でしょうか。
実際、管理費等以外に求める金銭(協力金)を徴収しているマンションはあります。
この協力金に関しては、過去に外部区分所有者に対して協力金を求めた管理組合とそれを不服とした区分所有者が争い、最高裁の判決が出ています。この裁判で、協力金を請求することが認められ以降、「協力金」を導入する管理組合を増えてきました。
<協力金請求事件(最高裁平成22年1月26日判決平20受666号)>https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38357%EF%BC%BD
協力金徴収の対象としている例として以下のようなものがあります。
①外部区分所有者に対して一律で徴収
②外部区分所有者かつ役員辞退者に対して徴収
③役員辞退者、役員会不参加者から徴収
外部区分所有者は遠方に住んでいる場合もあり、物理的に理事会等に出席しづらいという理由から協力金制度を取り入れているケースが多いようです。
今回の相談事例を当てはめると、「③役員辞退者、役員不参加者から徴収」の範囲で検討することになるのではないでしょうか。この場合も、総会にて承認を経る等、然るべき手順を踏んでルールを決めていれば、徴収すること自体は問題ありません。
しかし、協力金を導入する場合、よく検討しなければならないことがいくつかあります。
まず、協力金を求める場合、免除(例外)規定を設けるかどうかです。高齢であることや健康上の理由で辞退する場合の取り扱いについては様々な意見が出てこようかと思います。
一部のマンションでは、協力金を導入したうえで免除規定を設け、該当する場合は協力金の負担を免除するという運用をしています。
【免除規定の例】
・高齢者(80歳以上)の場合は辞退をしても協力金を求めない
・高齢等の理由による辞退と、その他の理由での辞退で金額に差をつける 等
ただ、免除規定を設ける場合、確認書類(診断書や身分証等)の提出まで求めるかどうか等も検討が必要になろうかと思いますし、管理組合として個人情報を取り扱う場合には細心の注意が必要となります。
また、協力金の設定額についてもご相談を受けます。設定額は、組合員間の不均衡を是正し適正な維持管理の実現を図るために社会通念上妥当な額であることが求められます。
私が知る限りでは、1区分所有者あたり月額 500円~2,000円程度に設定している管理組合が多いように思います。
理事長からのご相談②(役員報酬の支払い)
現在、当管理組合では役員報酬の支払いはしていません。しかし、役員なり手不足の対策のひとつとして、報酬を支払うことを検討しています。実際に役員報酬を支払っている管理組合はどのくらいあるのでしょうか。また、どのくらいの金額が妥当なのでしょうか。
マンション標準管理規約(単棟型)では、「第37条(役員の誠実義務当)第2項 役員は別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けとることができる。」とあり、役員報酬を支払うことを認めています。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」を参照すると以下のような調査結果となっています。
・報酬を支払っていない 73.3%
・役員全員に報酬を支払っている 23.1%
建物の完成年次が新しくなるほど「報酬を支払っていない」の割合が高くなる傾向にあるそうで、築年数が経過すればするほどなり手不足が深刻であるということが背景にあるのかもしれません。
また、報酬額についての調査結果は以下のとおりです。
【各役員一律の場合】
平均 約3,900円/月
【一律ではない場合】
<理事長>平均 約9,500円/月
<理事> 平均 約3,900円/月
<監事> 平均 約3,200円/月
マンションによって、役員の業務内容や理事会の開催頻度も異なりますので、上記を参考に各役員の業務負担量等を考慮し、役員一律か役職ごとに定めるかも含めて、報酬額を検討する必要があります。
また、理事会を欠席した場合の支払額を減額するかどうか等のルールを事前に決めておくこともトラブル回避のために必要になってくるのではないでしょうか。
最後に
以上、役員のなり手不足に対する対策について、事例をご紹介しました。
このような事例により一定の効果が出たという管理組合もあります。
しかし、根本的には区分所有者ひとりひとりが、自分たちの大切な資産を適切に維持管理していくという意識を持ち、管理組合運営に関心を持ってもらう必要があるのではないかと思います。
あるマンションの役員の方は、「今まで積極的に管理組合運営に関わってきたとは言えない状況だったが、今期初めて管理組合の役員になり、勉強させられることが多くあった」「自分たちのマンションという意識が高まった」とお話されていました。
管理組合役員はもちろん大変なこともあろうかと思いますが、上記の方のようにプラスになる部分もきっとあるのではないかと思います。就任の機会が訪れたらぜひ積極的にお引き受けいただきたいと思います。
立花晴太郎
宮城県仙台市出身。分譲マンション管理(フロント)業務、新規受託営業に従事し、様々な地域の様々なマンションに携わらせていただきました。「より快適なマンション」へのヒントになるような情報を提供していきます。
保有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、マンション維持修繕技術者
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