分譲マンションでは、輪番制などで何年かに1回は『管理組合の役員』を務めなければなりませんが、とりわけ監事に就任した場合には、どんなことをすればよいのでしょうか。
今回は、監事の監査(その1)について考えてみましょう。
監事は、以下のような書面に署名と押印をします。
【監査報告書】
○○マンション管理組合
0000年度(0000年00月00日~0000年00月00日まで)
の会計及び業務監査を実施しましたので、つぎのとおり報告いたします。
記
1.管理費会計及び修繕積立金会計について、それぞれの収支証憑書類を照合した結果、その会計処理状況は適正でした。
2.理事会及び理事の業務執行及び職務執行について、妥当性を検証した結果、その執行状況は適正でした。
以上
0000年00月00日
監事 ○○ ○○ 印
監事の仕事
管理組合の業務を執行するのが理事会であれば、監事の仕事は、理事会をチェックすることです。監事は、「理事会活動や会計処理が適正か」、「理事会の業務が管理規約や総会の決議に違反していないか」などをチェックし、その結果を総会で報告します。理事会に出席して意見を述べることはできますが、監事と理事を兼ねることはできません。また、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集できます。
①業務監査の内容
業務監査では、管理規約や使用細則ならびに総会決議に従い、管理組合が運営されているかどうか、年度当初に計画された点検・清掃及び改修工事等が適切に行われているかどうかを理事会の出席や議事録・各種報告書により確認します。
②会計監査の内容
会計監査では、“前年度の総会で決議された予算に基づいて適正に執行され、支払等に関する帳票等に従って適正に処理されているかどうか、各戸の管理費等の額及び未収納金の督促状況等を確かめ、総会に提出される収支報告書(案)及び貸借対照表(案)が適正に作成されているかどうか”などを確認します。
③是正処置
監査の結果、『管理組合の業務の執行や財産の状況に関して不正がある』と認められた場合、監事は、理事長や理事に対してこれらを指摘し、是正を要請します。これらの指摘事項が是正されない場合など必要と認めた場合には、監事は臨時総会を招集することができます。
管理組合法人の監事は、理事と同様な法人の必須機関であり、管理組合法人の財産状況および理事の業務状況を監査する内部機関とされています。紙面の関係上、詳細を省きますが、以下のような規定があります。
①監事の設置
②兼任禁止
③監事の職務
④監事の選任および解任
⑤監事の任期
⑥監事の代表権など。
内部の監査と外部の監査
平成23年改正前のマンション標準管理規約では、役員の資格要件を「マンションに現に居住する組合員」としていましたが、改正後はその資格要件を変更しています。それぞれのマンションの実情に応じて、資格要件を決めればよいと思います。
旧マンション標準管理規約第41条によれば、監事はマンションに現に居住する組合員の中から選ばれ、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければなりません。そして、理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければなりません。
現在の標準管理規約では、外部の専門家である公認会計士による監査までは求められていませんが、「管理者がマンション管理業者」である場合には、管理業者以外の独立した第三者による監査が望ましいとされています。
監事資料
監事は、監査を実施するにあたって、理事長に対して必要な証憑・書類や資料を提出するようにお願いします。監査にあたって必要な証憑・書類や資料は、以下のとおりです。
- 前年度の総会議事録
- 理事会議事録
- 管理組合理事長名で発信した書類がある場合はその書類
- 収支決算及び事業報告に関する資料(帳票含む)
- 収支予算及び事業計画に関する資料
- 管理費等及び使用料の額の一覧表
- 管理規約及び使用細則
- 長期修繕計画書
- 資金の借入がある場合は借入の残高を証する書類
- 預金残高(管理費会計・主膳積立金会計)を証する書類
- 各種設備点検報告書
- 保険契約書等を証する書類
- 管理委託契約書
- その他必要と認められる資料
なお、臨時総会を行うにあたっては、監事は監査に必要な証憑・書類や資料の提出を担当理事に要請することになります。
次回は、監事監査のチェックポイントについてお話します。
まとめ
「監査」という言葉を辞書で調べると、「監督し検査すること」と書かれています。どちらかというとマイナスのイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。最近、多くの企業では監査部門を強化し、内部監査の強化に乗り出しています。管理組合における監査についても、管理者のメリット、区分所有者のメリットを考えれば、監査業務はますます重要になってきます。監事監査の仕事次第によっては、管理組合の運営に活力が生まれる場合があります。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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