皆さんこんにちは。あなぶきグループの後藤です。
様々なモノやコトが変わる年度変わりですが、その中で2016年6月に成立した改正宅地建物取引業法(以下、改正宅建業法という。)がいよいよ2018年4月1日より施行されます。
この改正宅建業法のなかで管理組合が今後対応必要となる場合があるため、理事会で協議していくことについてご紹介いたします。
目次
- 改正宅建業法の概要
- 建物状況調査(インスペクション)とは
- 管理組合の対応について
- まとめ
改正宅建業法の概要
皆さんもご存じのとおり現在日本では人口減少や少子高齢化社会を迎えており、既存住宅の戸数が世帯数を上回っていて世の中では家が余っている状態です。
いわゆる“空き家”については2013年の総務省の調べでは全国で820万戸もあり、さらに2033年になると2,150万戸に増加するという予想もされております。
そんな状態であるにもかかわらず、現在の日本では中古住宅の流通(売買)が新築も含めた全体のわずか14.7%で欧米各国の約60%~90%と比べて非常に低い状態です。今なお日本には新築神話が根強いことが分かります。
そこで国(政府)は中古住宅の売買が進まない理由の一つとして購入者が住宅の質に対する不安を抱えていることや売主も一般の方である場合瑕疵担保の責任を負わせるのは困難であることなどを問題とし、不動産取引のプロである宅建業者(不動産業者)は中古住宅の売買契約時に主要構造部分(基礎・壁・柱・床・はり・屋根など)の“建物状況調査(インスペクション)”を実施する検査事業者の斡旋と建物状況調査が行われた中古住宅が取引される際に調査結果を重要事項として説明することが義務付けられます。
建物状況調査(インスペクション)とは
中古住宅を売る際に売主が建物状況調査(インスペクション)を依頼し売買する住宅に買主が安心して購入してもらえるようにする一つの手段として活用できます。
また、当該調査の結果で既存住宅売買瑕疵保険に加入できるなどメリットもあります。
建物状況調査とは実際に何をするのでしょうか?
既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、建物の基礎や外壁の部分ごとに生じているひび割れ、雨漏りなどの劣化状況を目視・計測などにより調査をするものです。
【調査対象部位の例】
・構造体力上主要な部分は基礎・土台および床組・床・柱および梁・外壁および軒裏・バルコニー・内壁・小屋組
・雨水の侵入を防止する部分は外壁・内壁・天井・屋根
なお、検査料については実施業者によりますが約4万円~約6万円程度で検査時間は2時間~3時間程度とのことです。
管理組合の対応について
上記のとおり建物状況調査(インスペクション)には戸建て住宅のみのものではなくマンションの場合には共用部分も調査対象範囲となります。
そのため、今後マンションの区分所有者が売却を検討する際に建物状況調査(インスペクション)を実施する方が出てくることが予想されます。
予想される質問は以下のとおりです。
「建物状況調査をするのですが、共用部分の調査について許可をください。」
「コンクリート強度試験をするためマンションの壁に穴をあけて調査したいのですが」
「管理組合で保管している耐震性に関する書類の閲覧をお願いします。」
「共用部の調査で屋上などを見るため、理事会で立ち会っていただけますか。」
など様々なことが予想されます。あらかじめ管理組合のルールである管理規約を見直す必要があります。
建物状況調査(インスペクション)の許可・不許可を決める
管理規約で建物状況調査(インスペクション)の不許可をしてしまった場合には売主が既存住宅売買瑕疵保険に加入できないなどの弊害が発生する可能性がありますので十分に検討する必要があります。
建物状況調査(インスペクション)の許可をする場合申請手続き方法を決める
管理規約の条文変更または細則・申請書式などを新たに制定する必要があります。
依頼者が組合員以外の場合の対応方法を決める
住宅の購入を希望する組合以外の方の場合に備え組合員からの申請に限定するなどの検討が必要です。(マンション管理業協会からは組合員限定にするのが望ましいという見解です。
コンクリート圧縮強度試験の申請があった場合の対応方法を決める
基本的に建物状況調査(インスペクション)ではマンションの壁に穴をあけてコンクリートをくり抜く調査(コア抜き調査)ではなく穴をあけない反発測定による調査を実施するが、コア抜きを希望された場合の対応として管理組合として事前にコア抜き調査をし、その結果を提供するなどの対応を検討する必要があります。
調査に必要となる管理組合で保管する書類の有無を確認しておく
書類保管リストを作成し用意する必要が望ましいです。(書類の詳細については管理会社へお問い合わせください。)
共用部分の調査が必要な場合の対応方法を決める
オートロックの解錠や屋上入り口の解錠など対応者なども検討する必要があります。
また、管理会社へ依頼する場合には費用が発生する可能性がありますので費用負担についても合わせて検討する必要があります。
調査に協力した際の調査報告書写しの提供を決める
基本的には依頼者が調査報告書を保管することとなりますが、調査終了後に管理組合へ当該報告書の写しの提供を義務付けるなど検討する必要がります。
まとめ
今回は2018年4月に施行される改正宅建業法に伴う管理組合での対応方法について紹介しました。あらかじめルールを管理組合で決めておくことにより今後のトラブル回避にもなりますので是非参考にしていただければと思います。
後藤隆史
北海道出身。管理組合様用火災保険の提案や管理委託契約書の作成、各種設備点検の発注業務を行っています。
フロント担当者の経験を生かし管理組合様の費用負担軽減ができるような火災保険の更新提案や各種設備点検項目の見直しなどを目指しています。少林寺拳法有段者(小学校2年生からやっていました)。火災保険や点検項目の見直しの際にはぜひとも御用命ください!
保有資格:管理業務主任者・宅地建物取引士
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