大規模修繕工事時の注意事項~アスベストの危険性~

石岡健太

こんにちは、あなぶき加賀城建設の石岡です。

私どもの会社は、マンションの大規模修繕工事を得意分野とし、マンション住戸部分の工事やマンション内外の点検、保守および建物診断、コンサルティング業務などといった「住まい」という皆様の大切な資産の価値向上のお手伝いをさせていただいております。

 

今回のブログは、大規模修繕工事を行う際の注意事項、アスベストについてお話ししたいと思います。

 

①アスベストとは

               出展:茨城労働局 石綿(アスベスト)対策のしおりより

 

 

アスベストとは天然に産出する繊維状のケイ酸塩鉱物の総称です。

・クリソタイル ・クロシドライト ・アモサイト ・アンソフィライト

・トレモライト ・アクチノライト   の6種類

その繊維は極めて細く0.02-0.35μm(1μm=1/1000mm)程度で防音性・耐火性・電気絶縁性などの性質を持ち、かつ加工性も優れているうえ安価なことから『奇跡の鉱物』・『夢の建材』・『魔法の鉱物』などと言われ、過去建築材料として多く使用されていました。

②アスベストが原因で発症する病気は?

 

石綿(アスベスト)の繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています(WHO報告)。 石綿による健康被害は、石綿を扱ってから長い年月を経て出てきます。例えば、中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いとされてい ます。仕事を通して石綿を扱っている方、あるいは扱っていた方は、その作業方法にもよりますが、石綿を扱う機会が多いことになりますので、定期的に健康診 断を受けることをお勧めします。現に仕事で扱っている方(労働者)の健康診断は、事業主にその実施義務があります。(労働安全衛生法)
石綿を吸うことにより発生する疾病としては主に次のものがあります。労働基準監督署の認定を受け、業務上疾病とされると、労災保険で治療できます。

 

(1)石綿肺

 肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられますが、石綿のばく露によっておきた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しています。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、潜伏期間は15~20年といわれております。アスベスト曝露をやめたあとでも進行することもあります。

 

(2)肺がん

石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、 肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。 また、喫煙と深い関係にあることも知られています。アスベストばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、 ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。 治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。

(3)悪性中皮腫

肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方の ほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。

※ここでは厚生労働省の「アスベスト(石綿)に関するQ&A」にて解説した文章を使用しています。

③アスベスト規制の歴史

 

『夢の材料』などと言われたアスベストですが、石綿肺や肺がん、中皮腫などの健康被害の指摘を受け下記(石綿関係法規の変遷抜粋)による規制を受けることとなりました。

 

  ・1975年 特定化学物質等予防規則(以下 特化則)の改定

   鉄骨の耐火被覆などに用いられる吹付石綿及び重量の5%を超えて石綿を含有する吹付ロックウールの

   原則禁止。

  ・1995年 労働安全衛生法施行令(以下安衛令)の改正

   アモサイトおよびクロシドライトの製造、輸入、譲渡、提供または使用(以下製造等という)が禁止。

 

  ・1995年 特化則改正

   特化則における石綿の規制対象含有率が5%から1%超まで拡大。

 

  ・2004年 10月1日施行の安衛令

   石綿含有率が1%を超える建材、接着剤、摩擦材等の10品目については、

   クリソタイルも含め全石綿の製造等禁止。

   ただし、仕上げ塗材は指定なし。

 

  ・2006年9月1日施行の安衛令

   石綿含有率が0.1%を超えるすべての製品の製造等の全面禁止。

 

※ここでは日本ペイント株式会社 建設塗料技術部 「建築物の改修・解体時における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針」にて解説した文章を使用しています。

 

2006年9月1日施行の安衛令により、現在アスベストの使用は全面的に禁止されていますが、それ以前に建てられた建築物には使用されている可能性があります。

④事前調査

アスベストは仕上塗材に含まれていることがあるため、大規模修繕工事の外壁補修の際、ケレンや削孔を行うことにより飛散し、作業員及びマンションの住民にも健康障害を引き起こすおそれがあります。

そのため、施工部位に特定建築材料(吹付け材、断熱材、保温材、耐火被覆材のうち、石綿を意図的に含有させたもの又は石綿が質量の0.1%を超えて含まれているもの)が使われていないか事前調査が必要となります。

 

≪分析サンプル採取状況≫

 


出展:日本ペイント株式会社  建設塗料技術部

   建築物の改修・解体時における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針についての解説より

 

事前調査の結果の掲示については

(1)調査の結果概要

(2)調査終了年月日

(3)調査の方法

など、工事の場所において、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければなりません。

 

⑤まとめ

アスベストの健康被害は15~50年の潜伏期間を経て石綿肺や肺がんなどの形で現れます。工事を行う作業員、マンション住民の安全を守るため大規模修繕工事を行う際は、竣工日が2006年9月1日以前か以後かの確認を。
2006年9月1日以前の場合は必ず事前調査を行いましょう。

 

 

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石岡健太

あなぶき建設工業  石岡 健太 (いしおか けんた)
岡山県出身で、2015年の入社以前は港湾の土木工事や新築住宅の工事にたずさわっておりました。
現在は岡山エリアでマンションの大規模修繕工事の現場管理をしています。
以前の新築住宅や港の修繕工事と違い【住みながら】の工事となるので、工事方の安全と居住者様の安全、両者の安全を第一にこれからも努めてまいります。
保有資格:一級建築施工、土木施工管理技士

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