分譲マンションで入居者名簿を整備・運用する際のルールづくり

松井 久弥

 

最近分譲マンションでよく取り上げられる問題として「入居者名簿が管理されていないために、入居者の構成や緊急連絡先が把握できない」という声を聞きます。
マンションという共同住宅だからこそ、災害時の迅速な安全確認や高齢者の孤独死を防ぐためにも、入居者名簿や緊急連絡先を完備しておくことが必要となり、これにより一層共助の機能が働きます。

今回は分譲マンションで入居者名簿を整備・運用する際のルールづくりについてご紹介します。

 

 

0908A

 

 

入居者名簿を作るには

標準管理規約の第64条(帳票類の作成、保管)では、

「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これを閲覧させなければならない。」

と記載されています。
お住まいのマンション管理規約に同様の記載がされている場合には、管理組合として入居者名簿の作成と保管が必要となりますので、これに基づいて名簿の整備を進めていきます。もし管理規約に記載が無い場合には、総会において入居者名簿を整備することを決議したり、管理規約の改定も検討します。

標準管理規約コメントにも記載があるように、入居者名簿の取り扱いは組合員のプライバシーに十分留意する必要がありますので、できれば「入居者名簿運用細則」を作成して、ルールを明確に決めておいた方が良いと言えます。

 

具体的な運用細則の作り方

入居者名簿運用細則案は理事会や専門委員会で検討を重ねたうえで、最終的には総会での承認が必要となります。今回は実際に他のマンションで導入した入居者名簿運用細則を例に、具体的なルール内容を確認しましょう。

 

<入居者名簿運用細則の例>

第1条(趣旨)

この細則は、○○マンション管理規約(以下「規約」という。)第○○条に基づき、入居者名簿(以下「名簿」という。)の運用(作成、保管など)に関し、必要な事項を定めるものとする。

第2条(名簿の作成、利用の目的)

理事長は、名簿を次の各号に掲げる目的のために利用するものとし、他の目的に供してはならない。

一 総会の通知(開催、決議事項等)

ニ 理事会の通知(開催、決議事項等)

三 管理規約第○○条に定める管理組合の業務履行

四 管理規約第○○条に定める管理組合業務の全部又は一部をマンション管理業者等に委託し、又は請け負わせる場合

五 緊急時の連絡

六 マンション管理業者が公表している利用目的の範囲内で利用する場合

七 その他理事会が必要と判断した業務

第3条(名簿掲載情報)

名簿に掲載する情報は、次の各号に掲げるものとする。

一 部屋番号

ニ 組合員及び占有者の氏名

三 組合員及び占有者の同居人氏名

四 組合員及び占有者の住所

五 組合員及び占有者の連絡先(電話番号(自宅及び緊急連絡先)、電子メールアドレス等)

六 勤務先・学校等

七 その他緊急連絡先

第4条(名簿情報の取得)

名簿に掲載する情報は、規約第○○条に基づき、管理組合が取得し、記載項目に変更がある場合は、本人の申出に基づく届出による。

第5条(名簿の更新)

管理組合は、名簿を更新する必要性があると判断した場合は、理事会の決議を経て、調査し、更新することができるものとする。

第6条(名簿の管理、保管)

理事長は、名簿を保管し、安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。ただし、理事長は当該保管をマンション管理業者に委託することができる。

第7条(名簿の閲覧)

理事長は、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による閲覧請求があった場合は、閲覧を拒否する正当な理由がある場合を除いて、閲覧させなければならない。この場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

2 前項により名簿を閲覧する者は、閲覧した情報について閲覧の目的以外にこれを利用してはならない。

3 第1項のうち、利害関係人に対する名簿の閲覧については、住戸番号、氏名等必要な範囲内に限定することができるものとする。

第8条(細則の改廃)

この細則の変更又は廃止は、総会の決議を経なければならない。ただし、この細則の変更が規約の変更を必要とする事項であるときは規約の変更を経なければ、することができない。

 

入居者名簿の例

運用細則が出来れば、次に組合員や居住者に対して入居者名簿を配布して、回収につとめます。

名簿の書式については特に定めはありませんが、次のような事項は最低限押さえておく必要があります。

 

2021

 

まとめ

近年の個人情報保護の流れの中で入居者名簿を作成することに抵抗がある組合員もいると思いますが、目的と運用ルールをしっかりと説明することで解消できる部分も多いので、災害時の対応や孤独死対策も含めて管理組合でしっかりと議論していくべき問題なのです。

 

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松井 久弥

あなぶきハウジングサービス:松井 久弥(まつい ひさや)
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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