今回は管理組合会計のポイント③の「会計の3つの重要ポイント」について説明します。ここでは、会計実務に関する基礎的なポイントを理解しましょう。
目次
- 管理費と修繕積立金は分けて管理
- 区分経理のメリット
- 予算作りの重要性と予算準拠主義
- まとめ
管理費と修繕積立金は分けて管理
管理費は、マンションの通常の管理を行うために必要な費用に充当するために集めるものです。例として、管理員人件費、共用設備の保守維持費、備品費、事務費などの経費に充てられます。(標準管理規約第27条)
修繕積立金は、計画的に行われる修繕工事費や臨時の修繕費などに充当するために集めるものです。
管理組合の会計業務においては、目的別に会計を区分する(区分経理といいます。)ことが重要です。管理組合の会計は、管理費と修繕積立金とでは集める目的が異なるため、両者は分けて報告をしなければなりません。
目的別に会計を区分するとは、日常の維持管理費用に充当するために集めた管理費と、一定年数が経過する都度、計画的に行われる大規模修繕工事や特別な維持管理のために集めた修繕積立金を、別々に処理するというものです。異なる目的のために集めた資金は明瞭に区分し、会計処理を行う必要があります。(標準管理規約第28条第4項)収入と支出を目的別に対応させるために、以下のように区分して経理します。
管理費会計:日常の維持管理に関する会計を行う。
修繕積立金会計:大規模修繕工事をはじめ建物維持に関する会計を行う。
一方、分けなければならないものは、会計上の収入と支出だけではありせん。ちょっと、ここで問題です。頭の体操をしてみましょう。
Q.決算書は管理費会計と修繕積立金会計に分けていますが、銀行の手続きが面倒なので通帳を一緒にしたいのですが、ダメなのでしょうか?
管理費会計のお金と修繕積立金会計のお金が同じ金融機関の同じ預金口座に預けた場合、管理費会計のお金が5万円しかなくても、修繕積立金のお金が500万円あれば、同じ口座には505万円あることになります。一時的に管理費会計の支払いのための20万円を引き出すことができて便利じゃないですか?
A.マンション標準管理規約では、「修繕積立金を管理費とは区分して経理する」とあり、管理費と修繕積立金のお金を別々の口座に保管する必要があります。管理組合のお金に限らず、性質が異なる2種類のものを、間違いなく、正しく、分けて管理するには、最初から最後まで別々にしておく必要があります。
管理費会計のお金と修繕積立金会計のお金を別々の口座に保管していると、修繕積立金会計から管理費会計の支払いのための20万円は引き出せません。預金の残高以上にお金は使えないことになり、管理費会計の支払いのために、修繕積立金会計のお金を引き出してしまうなどの間違いは防止できます。繰り返しになりますが、管理費は管理費として、専用の口座に保管して、管理費会計の支払いだけにお金を使います。修繕積立金は修繕積立金として、専用の口座に保管して、取り崩してよい場合にだけお金を使います。区分経理することで、お金の流れが分かります。
区分経理のメリット
管理費と修繕積立金をそれぞれ専用の口座に分けていると、決算書を見なくても、預金の残高をみれば、現在の管理費会計の残高が分かり、積立てられた修繕積立金がいくらあるかが分かります。
マンションに機械式駐車場がある場合は、管理費会計と修繕積立金会計とは区分して、別途、駐車場会計に分けることもできます。。(標準管理規約コメント第29条関係)駐車場など敷地および共用部分に関して使用料収入がある場合は、これらの施設の維持管理に要する費用に充当した後、余ったお金があれば、これを修繕積立金として積み立てることができます。区分経理していると、駐車場等の使用料収入をどのように会計処理するか、または、お金が足りなくなった場合に、どの会計から不足分を出すかという考え方の拠り所となります。会計上の問題点は個々の管理組合が検討することになります。
管理費会計の余剰金が生じた場合、その一部を将来の修繕に備えて、修繕積立金会計へ繰り入れることについては、管理組合の総会決議であらかじめ定めておけば実施可能です。
予算作りの重要性と予算準拠主義
管理組合では、組合員の皆さんから集めた管理費や修繕積立金が、当初の予定どおり、良好な住環境を確保するため、敷地および共用部分等の管理に必要となる費用に正しく使われたのかどうか、そして、その結果、いくら残っているのかを明らかにする必要があります。これらを説明するのに必要となるのが「予算」です。管理組合では、目的となる業務を実施するための支出を、限られた収入の中でやりくりすることが必要です。どのくらいの収入や支出が生じるのかを想定して予算を作り、その予算を目安にして、実績を管理する「予算準拠主義」の考え方がとても重要です。
管理組合の運営上欠くことのできない収支予算は、以下の特徴を持っています。
- 収支予算案は事業計画とともに、理事会および総会で承認を得ることが必要。
- 理事長に対して、収支予算書の範囲内で支出の執行権限が付与される。
管理費や修繕積立金等について、ある会計年度に計画された個々の業務に関して、具体的に収入や支出として、いくらのお金が入る予定で、支払いにいくら必要なのかを数字(金額)で表し、お金の裏付けを明らかにしたのが「収支予算」です。
収支予算を作成することにより、管理組合全体として実施する事業およびその規模がお金の収支として明確化され、その年における事業計画の遂行状況を把握することが可能になります。
予算は決算と比較して、その予算と決算に開きがあったら、その差異を分析することが重要です。予算に従ったお金の使い方ができていたのか、予算を超えた支出はなかったのか、予算に含まれていない支出があった場合には、その責任を明確にすることも可能になります。
管理組合は、企業のようにお金を使って利益を得る性格の団体ではなく、組合員の皆さんから集めた管理費や修繕積立金等を収入の基礎とし、マンションの維持と管理組合の運営のために必要となる支出を行うことを前提としますので、定められた予算の範囲内で、いかに効率よく事業計画を達成するかを追求することが、管理組合の会計に求められます。(予算準拠主義)
事業計画の遂行状況を検証して次年度の予算編成の参考とし、収支のバランスを考えて、必要な措置を図ることが大切です。
まとめ
今回は、会計の3つの重要ポイントとして
- 管理費と修繕積立金は分けて管理
- 区分経理のメリット
- 予算作りの重要性と予算準拠主義
について、まとめてみました。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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