今回はマンション管理組合会計のポイント②の「会計業務の1年間の流れ」について説明します。
ここでは、会計実務に関する基礎的な流れを理解しましょう。
マンション会計業務の1年間の流れ
マンション管理組合の会計業務の1年間の流れを見てみましょう。
管理組合は1年に1回、通常総会を開催し、1年間どのようなことを実施し、計画どおりにできたのか等について会計報告をします。
例えばマンションの決算月が3月だったとした場合、4月から翌年の3月までの1年間が会計年度となります。
一般的には理事長が管理者として、毎年、収支予算案を通常総会に提出し、組合員の皆さんから承認をもらうことからスタートします。
会計年度が終了したときは、1年間に、どのような業務を行ったのかをまとめた「事業報告書」と、会計についてまとめた「会計報告書」を作成します。
会計報告書は、管理組合の1年間の収入や支出がどれくらいあり、現金、預金その他のものが、どれだけ残っているのかをまとめたものです。
最後は、「監事」の監査を経て、収支決算案として、理事長から通常総会において、報告がされ、組合員の皆さんから承認をもらうことにより、会計年度における一連の作業が完了します。
決算業務について
■会計期間の開始日より通年業務として行うこと
- 会計帳簿の作成と収支状況を月1回報告する
- 管理費等の徴収と各種支払を実行
- 資金管理と債権債務の整理を行う
■会計期間の期末日に行うこと
- 現金等の実査
- 残高証明書の入手
- 証憑書類の整理
- 帳簿の閉鎖(締め切り)
- 勘定科目の内容検討
- 決算書類の作成
- 理事会で決算案を作成
- 監事による監査を受ける
■総会2週間前までに行うこと
- 総会開催案内に収支決算案を添付する
■総会日に行うこと
- 総会で収支決算案の承認を得る
予算編成について
- 当期実績および次期修繕計画や組合活動計画などに基づき、次期予算案を作成
- 理事会で予算案を作成
■総会2週間前までに行うこと
- 総会開催案内に収支決算案を添付する
■総会日に行うこと
- 総会で収支予算案の承認を得る
事業計画について
■会計期間開始日より
- 事業計画とともに、当期の修繕箇所や実施時期の再検討を行う
■会計期間の期末日には
- 修繕実績を確かめ、長期修繕計画の修正が必要かを検討する
- 事業の実施状況をみて、次期の事業計画を作成する
■総会2週間前までに行うこと
- 総会開催案内に来期の事業計画案および長期修繕計画に変更が必要であればその案を添付する
■総会日に行うこと
- 総会で事業計画案および長期修繕計画案の承認を得る
理事長は、管理組合の管理者として、毎年1回一定の時期に事務に関する報告をする義務があります。また、監事には、総会において監査内容を報告する義務があります。(区分所有法第43条、標準管理規約第59条、第41条)
会計業務の中で毎月実施するもの
管理組合の会計業務の中で毎月実施するものと、年1回決算時に実施するものがあります。
ここでは、毎月実施するものをまとめてみました。
- 財産の分別管理のハの方法(※)を採用している場合は、当月支払う請求書をまとめて、理事長に承認をもらい、支払いの手続きを行う。
- 通帳や請求書、領収書などから、必要な仕訳を起票する。
- 通帳を記帳する。
- 口座引落で支払う公共料金・リース料などの支払いについて、領収書、引落通知などと一致しているかを確かめる。
- 通帳に記帳された入金取引について、内容を確かめ、必要な仕訳を起票する。
- 管理費等の滞納者に対して、督促を行う。(適宜)
- 通帳の預金残高と帳簿の預金残高が一致していることを確かめる。
- 小口現金を利用している場合は、月末の実際の現金残高を実査し、帳簿残高が一致していることを確かめる。
- 役員などが立て替えた支払いがあれば、精算し、必要な仕訳を起票する。
- 収入・支出項目について、各勘定科目の予算額と比較する。
- 収入項目は、組合員別・月別の納付状況を補助簿に記入して、納付遅れがないかどうかを確かめる。
- 請求書・領収書を整理する。
- 前払金・未収入金・未払金・前受金を正しく計上する。
- 収入項目について、あるべき金額になっているかを確かめる。
- 会計報告書案を作成し、内容を確かめる。
- 理事会に報告する。
補足
※財産の分別管理ハの方法(マンション管理適正化法施行規則第87条第2項第1号 ハ)とは、マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金等金銭を収納・保管口座に預入し、②当該収納・保管口座において預貯金として管理する方法。(旧原則方式)
会計業務の中で年1回実施するもの
管理組合の会計業務の中で、年1回決算時に実施するものをまとめてみました。
すべての預金口座について、残高証明書を入手し、帳簿残高と一致していることを確かめる。
② 理事長が交代したら、預金口座の名義変更の手続きを行う。(交代時)
③ 小口現金を利用している場合には、決算月末の現金残高を実査し、できれば監事にも立ち会ってもらい、チェックを受ける
- 決算にあたり、仮払金・立替金・仮受金・預り金の残高の内訳を調べて、精算漏れや返金漏れとなっているものはないかを確かめる。
- 収入・支出項目について、各勘定科目の予算額と比較する。
- 請求書・領収書を整理する。
- 前払金・未収入金・未払金・前受金を正しく計上する。
- 収入項目について、あるべき金額になっているかを確かめる。
- 支出項目について、定額のものは予算額と一致していることを確かめ、差異が生じていた場合には、その発生理由を調べる。
- 次期予算案を作成する。
- 総会開催日と監事の監査実施日の日程を調整する。
- 理事会に報告する。
- 監事の監査を受ける。
- 総会開催資料を発送する。
- 総会で報告する。
- 帳簿や会計報告書作成資料などを保管する。
- 次期の会計担当理事に引き継ぎを行う。
まとめ
今回は、マンション会計業務の1年間の流れをまとめました。会計資料に目を通すだけで、マンションのことがよく分かってきます。
管理会社はお金の事故を予防するために、毎月の会計報告が義務付けられています。自主管理の会計担当理事にとっては、毎月の会計報告はきちんとした業務を証明することになります。管理組合の大切な財産を守るためにも、年1回の会計報告だけでなく、毎月報告することが重要ですね。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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