突然ですが、みなさまは機械式駐車場を利用されたことがあるでしょうか。
引っ越し先のマンションの駐車場や、旅行で宿泊予定のホテルの駐車場が機械式だけど
「今まで利用したことがないから、ちょっと不安」という方もいるかもしれません。
そこで、今回は機械式駐車場ご利用時の注意点をいくつか紹介していきたいと思います。
1. 車の大きさの制限について
「少ないスペースで出来るだけ駐車できる台数を増やしたい」という声に応えるのが機械式駐車場ですが、それゆえ1台当たりに割り当てられるスペースは少なくなってしまい、どんな機械式駐車場でも駐車できる車の大きさに制限があります。
上の画像は機械式駐車場に取り付けられている注意事項や操作方法、入庫制限を知らせる銘板です。
この駐車場では全長×全幅×最低地上高×重量=5.30m以下×1.95m以下×115mm以上×2.5t以下、パレットNo.1とNo.2は全高2.00m以下の、それ以外のパレットは全高1.55m以下の車を駐車することが出来ます。
細かい話をすると、ホイールベース(前輪と後輪の間の長さ)や、オーバーハング(前輪と車体前端または後輪と車体後端の間の長さ)についても規定がありますが、規定を満たしていれば通常は問題なく駐車することが出来ます。
ちなみに古い機械式駐車場だと入庫制限が
全長×全幅×全高×重量=4.7~5.0m以下×1.70~1.85m以下×1.55m以下×1.8~2t以下
となっていることが多いです。
なぜ、こんな数値なのかというと、かつて多くの車の大きさがこの寸法以下だったからです。
自動車の区分として小型乗用車というものがあります。
通称『5ナンバー』と言って、ナンバープレートの上側に書いてある2桁か3桁の数字が5または7から始まる車がこれに当たります。
自動車の種類 – 一般財団法人 自動車検査登録情報協会 (https://www.airia.or.jp/info/system/02.html)
自動車の区分についての詳しい話は上のリンク先にお任せしますが、
全長×全幅×全高=4.7m以下×1.7m以下×2.0m以下で排気量が660cc以上2000cc以下の車が小型乗用車です。
2000年以前の国産車の大半は、このサイズの背の低いセダンやコンパクトカーでした。
高級車などはもう一回り大きかったのですが、全長×全幅=5.0m×1.85mもあれば事足りましたし、全高が1550m以上の車はそれほど多くなかったので問題はありませんでした。
上の表はあの時売れていた車は? 人気乗用車販売台数ランキング (https://www.sonysonpo.co.jp/infographic/ifga_car_ranking.html)を基に作成した小・中型車対応の機械式駐車場の収容一覧表です。
今から30年前の1993年時点では、販売台数トップ10で入庫できない車は1車種のみで、全高に注目すると1400mm以下の車が大半です。
しかし、10年後の2003年だと3位と8~10位にミニバンタイプの車がランクイン。
更に4位の日産 キューブのような背の高いコンパクトカーが出現し、ハイルーフ対応でないと入庫できない車が増えています。
10位のトヨタ エスティマ に関しては、全幅も制限値を超えています。
次の表は、2023年上半期の車名別新車販売台数ランキングを基に作成した小・中型車対応の機械式駐車場の収容一覧表です (2023年7月6日のCar Watchの記事 (https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1514286.html)を基に作成)。
こちらは普通乗用車のトップ10と軽自動車のトップ10の表ですが、計20台中13台は全高が1550mm以上のため標準ルーフ用の機械式駐車場には入庫できないという結果になりました。
また、日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が発表するブランド別及び通称名別新車販売数のランキングでは、例えば『カローラ』と名前の付く車は全て『カローラ』という1つの車扱いになるため、厳密にいえば上記の表は正確ではありません。
トヨタ 『ヤリス』にはヤリスクロス、トヨタ 『カローラ』にはカローラクロスと全高が1550mmを超える派生車が存在します。
標準ルーフ用駐車場に入庫で出来る車は、人気車種では減ってきているようです。
2.制限を無視して車を停めたら…?
前述のとおり、全高1550mmまでという高さ制限のある機械式駐車場が多いですが、ここにもし全高がそれよりも高い車を停めてしまうと…
動くパレット(車を乗せる板)と装置を構成する鉄骨や上下にある他のパレットに車が挟まる形になり、ボディが大きく凹んだり、大きな傷がついたり、ガラスが割れてしまったり…
2t近くのものを運ぶので運搬装置には結構パワーがあり、そのぶん車のダメージも大きくなってしまうのです。
しかも、機械式駐車場の方も通常では加わらない力が部品にかかる状態になるので、場合によっては部品が壊れてしまいます。
機械式駐車場は異常な動きを感知すると、被害拡大を防ぐために緊急停止するようになっていますが、部品が壊れていなくても、作業員が事故の連絡を受けて駆け付けるまで駐車場が使えなくなってしまうので、他の利用者の方々にもご迷惑をかけることになります。
マンションにある機械式駐車場では上記のような事故はよく発生しています。
- 自分のものとは違う番号を間違って呼び出し、それに気づかずにそのまま停めてしまった
- 車検や修理のための代車、友人や親族の車など普段とは違う車だったため車両制限を超えていることに気づかず停めてしまった
など、いくつか原因があります。
現在の機械式駐車場には様々なセンサーが搭載されており、誤入庫した時点で警告音が鳴り、車を駐車場から出すまで操作が出来なくなるなど事故を未然に防ぐ機能があります。
また、入出庫時に暗証番号を入力する、カードキーを利用するタイプの機械式駐車場では違う番号を呼び出してしまう可能性は減ります。
とはいえ、機械式駐車場に駐車する際は車検証で自分が乗っている車のサイズを確認するなどして、事故に遭わないようにするのが大切です。
3.車の諸元には要注意!
車検証に載っている車のサイズを確認しようと書いたばかりですが、この数字、ちょっと厄介なところがあります。
例として車の寸法図を用意しました。寸法線の両端の線に注目してください。
例えば全幅を見ると、サイドミラーが寸法に含まれていないことが分かると思います。
実はカタログに載っている諸元表や車検証に載っている全幅にはサイドミラー部分は含まれていないのです。
また、全長に注目すると、後ろのスペアタイヤの出っ張った部分は全長に含まれていません
(スペアタイヤは積載物扱いのため、車の全長には含まれないのです)。
参考として実在する自動車の諸元表へのリンクも貼っておきます。
ジムニーシエラ 主要装備・主要諸元 (https://www.suzuki.co.jp/car/jimny_sierra/detail/pdf/detail.pdf)
リンク先を確認していただくと、スズキ株式会社のジムニーシエラという車の諸元表で、右下に三面図が掲載されています。
先ほどの説明と同じくサイドミラーは全幅に含まれておらず、背面タイヤは全長に含まれていないのが分かると思います。
このように諸元表や車検証に載っている寸法と、実際に車が占有するスペースで食い違いが起こることがあります。
機械式駐車場に駐車するにはちょっとサイズが怪しい…、と思ったらお買い求めのディーラーやメーカーにお問い合わせいただくか、実際に巻き尺などを使ってサイズを測ってみることをおすすめします。
4.まとめ
機械式駐車場で車を停める際にはその車のサイズに要注意ということをご理解していただければ幸いです。
文中にもあるように、もし事故が起こると、大切な愛車が壊れてしまうだけでなく、機械式駐車場そのものも壊れてしまう可能性があります。
機械式駐車場に限らず、自走式駐車場やガード下、幅の狭い道路など通行時に制限のある場所は結構存在するので、車の大きさについて良く理解することは一つのトラブル回避術です。
川村京祐
川村 京祐 (かわむら きょうすけ)
大阪府出身。2018年入社。
入社以来、機械式駐車装置の新設の営業に携わり、2023年より既存の装置の保守の営業に携わっています。
機械式駐車装置についてまだまだ勉強中ですが、皆様のお役に立てそうな情報を発信出来たら幸いです。
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