はじめに
皆様いかがお過ごしでしょうか。新型コロナウイルスとの闘いの日々が依然として続いています。ワクチン接種が全国的に進んできていますが、一方で感染者数は未だ高い水準にあり、予断を許さない状況です。
新型コロナウイルスの感染拡大を経て、私達の生活は大きく変わりました。それ以前の状態に完全に戻るためには相当な期間が必要と思われ、感染を予防しながら日常生活を送る「withコロナ」の時代となり、国や地方自治体だけでなく、多くの人々や企業がそれに即した対応を求められています。最近販売されている新築の分譲マンションの中には、エントランスドアから専有部分まで完全非接触で行くことができたり、共用部分にワークスペースが設けられていたりする等、専有部分だけでなく共用部分も、「ニューノーマル」や「新しい生活様式」を意識して設計されている物件をよく見かけます。
今回は、既存のマンションにおける新しい時代に適応するための施策案について、当社がマンション管理業務に携わる上で培った経験やノウハウをもとに、ソフト面とハード面に分けて考え、皆様にお示ししたいと思います。
ソフト面(規約・細則等ルールの見直し)
2021年6月22日に国土交通省が「マンション標準管理規約」を改正し複数の条文が変更されましたが、そのうち、新型コロナウイルス感染症対策に関係する改正点をご紹介します。「マンション標準管理規約」は国土交通省が示す管理規約の「見本」のようなものですので、これを参考に、皆様のマンションにも取り入れてはいかがでしょうか。
資料データは閲覧・ダウンロードもできますので、国土交通省のHPをご参照ください。
①ITを活用した総会・理事会
「zoom」等のweb会議ツールを利用した会議の実施が可能であることが明確化され、それに伴う留意事項等が記載されています。なお、当ブログの過去記事で詳しく紹介していますので、あわせてお読みください。
【マンション標準管理規約改正】オンライン理事会・総会において気を付けるべき留意点
②マンション内における感染症の拡大のおそれが高い場合等の対応
・必要と認められる場合における共用施設の使用停止等を使用細則で定めることができること
(例/集会室、キッズルーム、共用トイレ等)
・やむを得ない場合の総会の延期が可能であること。
が記載されています。
③置き配
・宅配ボックスが無い場合に配達物の置き配を認めることについて、使用細則等でルールを定められることが考えられることが記載されています。
第18条関係 ④
「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。」
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)コメント
※管理上の観点から、各住戸の玄関前にアルコーブ(共用廊下の壁面から凹んだスペース)やポーチがある等スペースに余裕がある場合に限ることが望ましいと思われます。
【玄関ポーチの例】
ハード面(建物・設備の変更・グレードアップ)
新築マンションと異なり、現状の構造や設備が基にあるためある程度制約はありますが、次のようなものが考えれます。特に費用が高額なものは、導入にあたり管理組合における十分な協議が必要となります。
共用部分ドアの自動化
手動ドアである場合、自動ドアに変更することで、非接触でドアを開閉させることができます。なお、ドアが横行するようになるため、工事を行うためには、ドア周りにある程度のスペースが必要です。
モニター付インターホンの導入
インターホンが未設置もしくはモニター無の製品が設置されている場合、カラーモニター付のインターホンを導入することで、室内に居ながら来客者の目視確認ができます。なお、インターホンがエントランスオートロックと一体のシステムである場合、マンション全体の設備改修が必要となります。
抗菌コーティング
共用部分の壁面等にコーティング剤を噴霧することで、そこに付着したウイルス等を不活性化します。効果の持続期間には制限があるので、定期的に実施することで効果を維持させることができます。
エレベーター関連設備の改修
カゴ内抗菌処理、カゴ内防犯カメラの導入(あわせてエレベーターホールにモニターを設置することで、事前に搭乗状況を確認することができます)等。工事が可能かどうかは、メーカーや型式等が関係しますので、エレベーター保守業者に相談するのが良いでしょう。
宅配ボックスの導入
配達員と対面せずに、ボックスに保管してもらうことで配達が完結するため、自分の都合が良い時に荷物を受け取ることができます。新設する場合、設置するためのスペースも必要ですし、費用もそれなりにかかるのでマンション内でアンケートをしてみるなど需要を確認してみてはいかがでしょう。
インターネット設備の改修・導入
テレワーク・在宅ワークが普及しオンライン会議も増えており、それに伴い自宅マンションのインターネット環境が重視されるようになっています。現在の通信速度が不十分な場合、建物の構造や設備による制限はありますが、共用部分通信設備の改修(例/電話回線を利用した方式→光ファイバーを利用した方式への変更、同じ方式であってもケーブルや機器をグレードアップ)を行うことで通信環境が改善することがありますので、通信会社に相談してみてはいかがでしょうか。
また、マンション全戸でインターネットサービスに一括加入することで、一世帯当たりの通信費用が非常にリーズナブルになるケースもあります。
まとめ
しばらくはこの状況が続きそうですので、是非検討してみてはいかがでしょうか。この記事が皆様のマンションライフにおける安心・安全の一助となれば幸いです。
綾部 祐太
綾部 祐太(あやべ ゆうた)
東京都出身。2013年入社。
入社から現在まで一貫して分譲マンション管理業務に従事しています。
日々の業務を通じて培った知識や経験をもとに、皆様がより快適なマンションライフを送ることができるよう、有益な情報を発信してまいります。
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士
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