前回のテーマは、「マンションの空き駐車場対策」でした。今回は、これに付随して、マンションの収益事業について考えてみましょう。
最初に、断っておきたいことがあります。
税理士法では、税理士又は税理士法人でない者は、税務代理、税務書類の作成、税務相談を行ってはならないと定められています。
税務情報等の提供を行う際に、マンション管理会社の社員は、税務相談等および税務に関するアドバイスはできません。
個々の具体的事例については、所轄の税務署等に問い合わせが必要です。
1.最近の管理組合の税金事情
最近、携帯電話会社や駐車場リース会社の情報をもとに、税務署からマンションの収益事業に関する税務調査を受けたマンションがあります。
管理組合は、法人税法上「人格のない社団等」に該当しますが、駐車場の外部貸しが収益事業に当たるという意識はなく、納税をしていないのが現状でした。
これまでは税務署もマンション管理組合から積極的に税金を取ろうと思っていなかったようであり、税務申告が必要となる収益事業を行っても、いくら税金が掛かるか税理士もよく分からなかったのが現実のようです。
2012年に国税庁が駐車場の外部貸し出しについての「課税の範囲の見解」を出しました。いままでグレーだった部分の課税関係がはっきりしたわけです。
今後、無申告(脱税)は、違法行為となります。
時代は変わっており、管理組合の納税意識を変えていく必要があります。
ここで、ちょっと一息。
空き駐車場の有効活用、そして雨水の有効利用、いいですね。
2・分譲マンションの収益事業とは?
昨今、マンションに設置された駐車場に空き駐車場が生じた場合の利用方法として、管理組合が区分所有者以外の方に駐車場の使用を認める場合があります。従来、不明確でしたが、「マンション駐車場の外部使用(イメージ)」のとおり、3つのモデルケースの課税の有無について、国税庁が管理組合の収益事業となる場合の見解を示しました。
【国税庁の見解の前提条件】
・マンションの管理規約が区分所有者以外の方(非区分所有者)に対して駐車場の外部使用を行うことが可能となっていること。
・区分所有者への駐車場の使用による収益は、管理費又は修繕積立金に充当し、 区分所有者へは分配しないこと。
・特に記載していない事項については、標準管理規約どおりであること。
駐車場の使用者と収益事業性について要約しますと、
①区分所有者のみ使用の場合、非収益事業にあたる。
②区分所有者と外部の第三者が、区別・優劣はなく、同条件で使用する場合、す べてが収益事業になる。
③区分所有者と外部の第三者が区別され、区分所有者が優先的に使用する場合、外部の第三者の使用部分のみが収益事業となる。
詳細は、国税庁から外部貸し駐車場についての見解の公表をご覧ください。
【掲載先】国税庁HP 文書回答事例 取引等に係る税務上の取扱い等に関する照会(同業者団体用)
マンション管理組合の収益事業に該当する可能性のある取引例
物品貸付業 | 外部者からの自転車レンタル収入 |
不動産貸付業 | 携帯基地局設置収入、自動販売機収入、電柱設置収入 |
不動産貸付業 | 看板・広告塔使用料収入、公衆電話設置収入 |
不動産貸付業 | CATV設備設置収入、インターネット設備設置収入 |
席貸業 | 外部者からの会議室使用料収入 |
旅館業 | 外部者からのゲストルーム宿泊料収入 |
駐車場業 | 外部者からの駐車場収入、駐車場サブリース収入 |
遊戯所業 | 外部者からのフィットネススタジオ使用料収入 |
収益事業と想定される個別判断が必要なケース
利用者が入居者に限定されないような、以下のマンション施設利用料については、入居者分も含め、全体を収益事業と認定される可能性があるので、課税リスクを踏まえた運用ルールを設ける必要があります。
・駐車場使用料
・会議室使用料
・ゲストルーム宿泊料
・プール、フィットネスルーム等の利用料など
3.収益事業の申告に関するあれこれ
税務署は、マンション管理組合の駐車場の外部貸し収入、屋上の携帯基地局(アンテナ)の借地料、看板・広告料等の収益事業に目を光らせ、税務調査を行っています。
収益事業を行う場合に考慮する必要のある税金は、以下のとおりです。
・法人税(国税)
・法人住民税(地方税)
・事業税(地方税)
・地方法人特別税(国税)
・消費税(国税および地方税)
・固定資産税<償却資産税>(地方税)
管理組合が税務申告に添付する計算書類は、以下のとおりです。
・収益事業に係る損益計算書
・収益事業に係る貸借対照表
収益事業に係る損益計算書 概算イメージ(単位:円)
売上高(例:携帯基地局) | 1,100,000 |
売上原価 | 0 |
売上総利益 | 1,100,000 |
販売費及び一般管理費 | 0 |
業務委託費 | 100,000 |
営業利益 | 1,000,000 |
法人税等 | 329,900 |
当期純利益 | 670,100 |
収益事業を行ない、申告しなかった場合のペナルティは、以下のとおり。
・無申告加算税(税務調査後の期限後申告・自主的な期限後申告)
・延滞税・延滞金
まとめ
これまでは、「見つかるまでやっちゃいましょう」ということで、無申告で収益事業を行ってきた管理組合もあるかもしれません・・・。今後は正々堂々と税務申告をしたうえで、収益事業を行う必要があります。ただし、税金を考えると、面倒なだけでたいして儲からない可能性もありますね。
税務相談や申告代行は税理士にしかできません。早めのご相談をお勧めします。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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