あなぶきハウジングサービスの生山です。人口の減少・・・・高齢化・・・マンションやアパートの空室も年々増加しています。「今は満室だから!」と安心していても今後解約が重なって空室が増える可能性もありますよね…。今回は空室が発生した場合にやっておきたい空室対策について「分析」「リフォーム」「コンディション」「募集条件変更」の4つの分野に分けてご紹介します。
- 1. 空室の分析を行う
- 2. 分析①問合せ数を知る
- 3. 分析②内見数を知る
- 4. 分析③ライバル物件を知る
- 5. 分析④空室率(入居率)を知る
- 6. 分析⑤平均入居期間を知る
- 7. 大家さんが把握しておくべきこと(分析リスト)
- 8. リフォームを行う
- 9. リフォームのポイント①どんなリフォームを行うか
- 10. リフォームのポイント②リフォーム打合せは誰と行うか
- 11. リフォームのポイント③いつリフォームを行うか
- 12. リフォームのポイント④リフォームと家賃設定
- 13. リフォームのポイント⑤リフォーム以外の設備導入
- 14. 空室コンディション
- 15. 空室のポイント①絶対に商品化しておく
- 16. 空室のポイント②電気と水道は使える状態にしておく
- 17. 空室のポイント③少しでも印象をよくするための裏ワザ
- 18. 募集条件変更
- 19. 募集条件変更①初期費用の変更
- 20. 募集条件変更②不動産会社に支払う広告料の変更
- 21. 募集条件変更③ペット飼育可物件にする
- 22. まとめ
空室の分析を行う
まず空室対策をする前に自分の物件が空いている原因を知っておく必要があります。
「家賃が高いから決まらない?」
「設備が古いから決まらない?」
「そもそも問合せがない?需要がほとんどない?」
それを知っているのは管理を任せている管理会社です。(管理会社なら知っているハズです…)
管理会社にお願いしていないときは、よくお部屋を決めてくれる不動産会社なら知っていると思います。
ということで、はじめに空室対策の一歩、“空室の分析”について、中でも重要なポイントを5つご紹介します。
分析①問合せ数を知る
リーシング(客付け)をお願いしている管理会社は、インターネットや店頭、業者間サイト等で募集を行っていますが、果たして1ヶ月間でどの位の問い合わせがあったのか。
これを毎月報告してもらうべきです。
2~3年データが貯まれば、自分の物件の問合せ数が減っているのか、増えているのかも分析することができます。
分析②内見数を知る
問合せに対して物件の内見(下見)がどの位あったのか、これも管理会社に毎月報告してもらいましょう。また、内見があった場合はその仲介会社名、成約か不成約か、不成約であればその理由と、最終的にどういう物件で決まったかもチェックしておきましょう。これが「③ライバル物件を知る」ということに繋がります。
分析③ライバル物件を知る
立地、家賃帯、築年数などの条件が近いライバル物件があるはずです。大家さんは“自分のライバル物件”を知っていますか?知らなければ管理会社にお願いし、1~2件のライバル物件の動向を捉えておいてください。可能であれば自分の物件に行ったついでにでも、一度はライバル物件を視察しておくと良いと思います。(空室があれば内見もしておくべきです。管理会社にお願いすれば手配してくれるかもしれません。)
分析④空室率(入居率)を知る
自分の物件の空室率(入居率)は知っていると思います。
(100戸のマンションで10戸空室なら10%(入居率は90%)です。)
1年間の空室率=各月の空室数の合計÷(総戸数×12)
例えば100戸のマンションの例で毎月10室ずつ空いていたとすれば、
各月の空室数の合計は120なので
1年間の空室率は120÷(100戸×12)=0.1 →10%です。
…自分の物件の空室率は分かりましたよね?他にそのエリアの空室率、ライバル物件の空室率、その管理会社の空室率を知っておきましょう。
エリアの空室率を知ることで、自分の物件はエリアの中でどうなのか、
ライバル物件の空室率を知ることで、何が勝っているのか、劣っているのか、
管理会社の空室率を知ることで、自分の物件は管理会社の中でどうなのか、
(管理会社の空室率が高すぎるようであれば、他の管理会社に変えるという選択肢もありますね) を知ることができます。
分析⑤平均入居期間を知る
部屋毎に入居期間を把握しておくことで、自分の物件の平均入居期間を算出することができます。入居期間は空室対策と直接関係ないようにも見えますが、ライバル物件や他の物件と比べて自分の物件の入居期間が短いようであれば何か原因があり、対策が必要です。
空室対策は空室をどう埋めるかだけでなく、いかに防げた解約を発生させないか。つまり“住んでいる方に満足してもらい、長く住んでもらうこと”も同時に考えて行くべきです。
大家さんが把握しておくべきこと(分析リスト)
これは大家さんが把握しておくべきことをまとめた分析リストの例です。
リフォームを行う
分析をしたうえで、「内見はあるが決まらない」という場合は、リフォームが必要な場合があります。ということで、次はリフォームを行う際の5つのポイントをご紹介します。
リフォームのポイント①どんなリフォームを行うか
リフォームをしないといけないのは分かるがどんなリフォームをすればよいか。もちろん築年数や今付いている設備によって、どこをどうリフォームするかは異なりますが、一番のヒントは直接内見に来たお客様の声にあります。先にお話ししたように管理会社や仲介会社から「決まらなかった理由」を収集しましょう。ライバル物件と設備を含めて比較することも大事ですね。
リフォームのポイント②リフォーム打合せは誰と行うか
どんなリフォームにするか、リフォーム会社(内装業者さん)と大家さんとで決めてしまうのはお勧めできません。できればリフォーム範囲の打合せは現地(空室)で、①大家さん、②管理会社の担当者、③仲介担当者、④リフォーム会社の4者が意見交換をしながら決定するのが良いと思います。
リフォームのポイント③いつリフォームを行うか
大家さんにリフォームの提案を行うと、たまに「じゃあ決まったらリフォームするよ。」という大家さんがいます。ところが “決まったらリフォームする”という物件に限ってなかなか決まりません。お客様に成約後にリフォームをすることを伝えてもなかなか決まりません。お部屋探しでは内見に行った時の第一印象が大事です。
どんなリフォームを行うか決めたら、お部屋探しシーズンに入る前にできるだけ早くリフォームしましょう。
リフォームのポイント④リフォームと家賃設定
クロスを張り替えたり、エアコンを設置したりするだけでは家賃を上げることはできませんよね。しかしフルリフォーム(リノベーション)をすれば、家賃を上げることができます。(もちろん現状の家賃設定が適性であるという前提です。)
賃貸経営をする中で家賃と物件の価格から利回り計算をすると思いますが、リフォームも投資と考えることができます。例えば200万円かけてフルリフォームをして、家賃が10,000円上がったとします。(どの位家賃が上がるかはリフォーム前に管理会社に確認しておく必要があります。)この200万円のリフォームを投資と考えると、投資利回りは6%だと考えることができます。
(10,000円×12ヶ月)÷200万円
リフォームのポイント⑤リフォーム以外の設備導入
空室対策はリフォームだけではありません。近年、単身物件・ファミリー物件ともに圧倒的に需要が高いのが“インターネット無料”です。マンション全体にインターネット無料を導入することで空室対策だけでなく、既に住んでいる方にも喜ばれますので解約防止に繋げることもできるかもしれません。毎月の費用は大家さんが負担することになりますので、あわせて家賃の見直しを行っても良いかもしれませんね。
空室対策のリフォームは大家さんの独断だけでなく、幅広い情報収集をしたうえで行うべきです。年々空き家が増えて行く中で高い入居率を保つには常に最新の流行も捉えておくべきです。
苦戦しがちな3点ユニットの1R(1K)の大家さんにはコチラの記事も参考にしてみてください。
→投資用ワンルームで苦戦中の大家さんへ。「決まらない5つの理由とその対策」
空室コンディション
ここまでリフォームを行う際のポイントをご紹介しましたが、次は空室コンディションのポイントをご紹介します。賃貸物件は空室のコンディションを良い状態に保っておくことが重要です。インターネットでお部屋探しをする人が増えてきていますが、最終的な判断は実際にお部屋を内見してから決める、という人がほとんどです。内見時に少しでも良い印象を持ってもらうことが成約率のアップに繋がります。管理会社に任せっぱなしにするのではなく、自分の物件で今からご紹介するポイントができているかチェックしてみてくださいね。
空室のポイント①絶対に商品化しておく
何らかの事情で募集を止めているお部屋は別として、募集中のお部屋は絶対に商品化しておく必要があります。商品化というと「他の物件と差別化を図っておく」という意味もありますが、ココでいう商品化とは「きちんと原状回復工事やリフォームを行って、すぐに貸し出せる状態にしておく」ということです。たまに「決まってからリフォームします」という状態で募集を行う物件がありますが、絶対におすすめできません。リフォーム前のお部屋を見せて、「住むときにはリフォームをするのでキレイになりますよ」と言っても、成約にならないケースがほとんどです。お部屋を見に行く側の気持ちになれば分かると思いますが、やはり第一印象はとても大事ですよね。
空室のポイント②電気と水道は使える状態にしておく
募集中のお部屋は空室でも通電しておいて、内見がないときはブレーカーを下ろしておく、内見時にはブレーカーを上げれば電気がつく状態にしておくというのが一般的です。
通電しておく理由として大きく2つあります。ひとつは夕方や夜やお天気の悪い日の内見があるから、もうひとつは電気がないと見えないところがあるからです。トイレ、洗面所、キッチンなどは電気がないと真っ暗で何も見えないという物件もあります。
水道は定期的(月に1~2回)に通水するために使えるようにしておく必要があります。キッチン、洗面、浴室、トイレは定期的に通水(水を流すこと)をしておかないと、排水管内の封水が蒸発してしまいます。封水が蒸発してしまうと、においや虫の発生原因になってしまいます。(封水とは排水トラップに貯まる水のことで、においや虫の逆流を防ぐ役割があります。)特に夏場は気をつけておかなければなりませんが、においや虫が発生してしまうと内見時に大きなマイナスポイントとなってしまいます。
封水の蒸発を防ぐための蒸発防止剤というものもありますが、これを使うときには内見時に水を流されないよう注意書きを貼っておく必要があります。
空室のポイント③少しでも印象をよくするための裏ワザ
他に少しでも印象をよくするための裏ワザ?をご紹介します。できること、まだやっていないことがあれば是非やってみてくださいね。
カーテン設置
単身用物件には効果的で、特に景色の悪い物件にはお勧めです。レースカーテンだけでも十分ですが、予めレースを閉めた状態にしておくことでマイナスポイントをうまく隠すことができます。より具体的な生活イメージを持ってもらうこともできますよね。ただし中古品は絶対にNGで、借りてくれた人にプレゼントするものとしてキレイな新品のカーテンを設置しましょう。
室内ポップ
物件の設備には説明しないと伝わらないこともあります。案内をする不動産会社の担当者が全て理解して説明してくれるとも限りません。ひとことコメントを書いたポップを設置しておくことで、知ってほしいことを確実に伝えることができます。
例えばエアコンを新設したときは、エアコンに「新品のエアコンを設置しました♪」といった感じでポップを貼っておくだけでもプラスのイメージを持ってもらうことができますよね。
消臭剤
においには人それぞれの好みがありますので、あまり特徴の強いものはおススメできませんが消臭剤を置いて嫌なにおいを消しておくのも効果的です。
お手紙
大家さんからのお手紙(内見の御礼や物件に対する思い)や入居者の声(現居住者や旧居住者の声)を空室においておくと好印象を持ってもらうことができます。お部屋を借りる人からすればインターネットや物件の資料では得ることのできないとても貴重な情報です。
お部屋探しでインターネットから簡単に大量の情報を得られるようになりましたが、実際に新生活を始めるとなると、それだけでは分からないことや不安なこともたくさんありますよね。インターネットや物件のチラシ等で、ある程度その物件に興味をもった方が内見にくることが多いと思いますが、せっかく内見にきてくれたお客様には、少しでも良い印象を持ってもらって成約率を上げたいですよね。空室のコンディションは常に最高の状態を保つようにしておきましょう。
募集条件変更
ここまで空室コンディションに関する3つのポイントをご紹介しました。最後は募集条件変更のポイントを3つご紹介します。単純に「家賃を下げる」というのも募集条件の変更ですが、家賃を下げると賃料収入が下がり、利回りが低くなる…。つまり物件の価値(価格)が下がってしまうことになります。賃貸物件を所有している理由が投資目的でない大家さんでも、できれば家賃の値下げは最後の切り札にしておきたいですよね。ということで、今回は家賃の値下げ以外にできる募集条件の変更をご紹介します。
募集条件変更①初期費用の変更
お部屋を借りる側としては、「初期費用は少しでも安く抑えたい!」という気持ちがあります。法人契約の多い物件ですとそれほど影響はありませんが、個人契約の多い物件には効果が期待できます。お部屋を借りるときの初期費用としては、「敷金」「礼金」「仲介手数料」「前家賃」「保険料」「鍵交換料」「家賃保証会社の利用料」などがあります。
(詳しく知りたい方は下の記事で紹介していますので参考にしてみてくださいね。)
この中で「仲介手数料」「保険料」は大家さんがコントロールできないところですよね。
初期費用でまず最初に注目したいのが「敷金」です。
敷金はあくまでも借主から「預っているお金」、借主からすれば「預けているお金」です。国交省の“原状回復をめぐるトラブルとガイドライン”でも示されているように敷金は普通に利用していれば、解約後ほとんど借主に返さなければなりません。もし自分の物件が「敷金2ヶ月(もしくは3ヶ月)」という募集条件で、解約になったときいつも2ヶ月分くらいは返金しているのであれば「敷金1ヶ月」に変更した方が良いかもしれません。
「礼金」についてはゼロにすれば借主のメリットが大きく、条件変更のインパクトもありますので、ある程度効果が期待できます。
「鍵交換料」、「家賃保証会社の利用料」については、現状が借主負担であれば、大家さん負担にするという方法もありますが、ココの項目はインターネット等でもアピールしづらいため、条件を変更したからといって内見が増えるという直接的な効果はあまり期待できません。
「前家賃」についてはサービス、つまり「フリーレント○ヶ月」といったかたちで募集することができます。フリーレントは借主にとってもメリットが大きいので比較的効果が期待できます。
(フリーレントについては下の記事で詳しく説明していますので、よく分からない方は参考にしてみてください)
募集条件変更②不動産会社に支払う広告料の変更
大家さんなら「広告料」というものを知っていると思いますし、不動産会社に支払ったことのある方も多いのではないでしょうか。「募集に関して依頼した広告等に対する費用として大家さんが不動産会社支払う費用」という業界の慣習ですが、これを増額するだけでもある程度の効果が期待できます。
募集条件変更③ペット飼育可物件にする
「ペット(犬・猫)飼育可物件にする」というのも選択肢のひとつです。ペット可物件は増えてきましたが、まだまだ数としては少ないのが現状ですので、大きな効果が期待できます。ただ、ペット飼育不可の物件をペット可物件にするには既に入居している方の理解が必要です。たとえば猫アレルギーの人がいれば相当の配慮が必要ですし、「犬がキライだからペット飼育不可の物件に入ったのに!!」という人がいるとスムーズに変更できません。また、ペット飼育可にする場合には届出書・初期費用・ルール(どこまでOKとするかなど)なども細かく決めて行く必要があります。ペット飼育可物件にする場合は不動産会社(賃貸管理会社)と綿密に打合せを行いましょう。
募集条件の変更で家賃を下げる前にできることとして、紹介した他にもインターネット上の検索条件に引っかけるために「家賃と共益費のバランスを変える」という裏ワザ?もあります。が、ほとんどのお客さんは最終的に月々の総支払額を計算しますので、反響は増えても決定要素にはなりませんよね。
「負担が増えるのはイヤだ!」と、なかなか条件変更に踏み切れない大家さんもいると思いますが、例えば“礼金1ヶ月分サービスして成約になる”のと、“2ヶ月以上決まらなかったとき”のことを考えてみるといかがでしょうか…。
まとめ
空室対策の手段は色々とありますが、まず「空室の分析を行うこと」、「コンディションを最高の状態に保っておくこと」が基本です。そのうえで自分の物件に合った「リフォーム」や「条件変更」を検討すべきです。「無意味な家賃の値下げ」「根拠のない家賃の値下げ」はやるべきではありません。賃貸経営は管理会社まかせにするのではなく、大家さん自身が実際に物件を見て、顧客の声を聞いて空室対策をおこなってくださいね。
生山 亨
分譲マンションの管理担当(フロント)を経て賃貸仲介・賃貸管理・売買仲介・総務業務を経験。長年やってきた賃貸業務、中でも特に空室の改善、対策は得意分野です。現在は、あなぶきスペースシェアにおいて宿泊事業・マンスリー事業を行っています。
保有資格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者
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