こんにちは。松井です。
ここ数年、分譲マンションの建替えに関するご質問をお客様からいただくことが増えています。しかも「ちょっと興味がある」というレベルではなく、実際に建替えをした場合の建築プランや費用についてマンション住人で共有したい、というような具体的な提案の要請をいただきます。
今回は、マンション建替えの検討を進めていく上で、初回検討段階の進め方についてご案内いたします。
目次
- どうして建替えを検討するのか
- まず最初に考えること
- マンション建替えにおけるハード上の問題点
- マンション建替えにおけるソフト上の問題点
- 問題点を解決するためには
- まとめ
※2016年1月14日に公開した記事を修正し、2017年3月23日に再公開しています。
どうして建替えを検討するのか
マンションの建替えを考えるきっかけとして、①老朽化、②旧耐震、③地震等による損害、のいずれか(若しくは複合的要素)により検討を始めることが多いのではないでしょうか(稀に投資目的でマンション建替えを検討する人もいますが、合意形成の難しさや検討から竣工までの期間、実際に建替えができるような条件かどうか等を考えると、なかなか難しい投資だと思います)
現状のマンションを維持修繕していくよりも建替えた方が良い(建替えなければ将来の生活に支障がある)と判断できるようなタイミングになった時に、初めてマンション建替えが動き始めるのだと思います。これは、多くの所有者がいる分譲マンションにおいて、ごく少数の建替え賛成派の意見だけでは決して合意形成ができない(5分の4の承認が得られない)というマンション建替えの特性があるためです。「合理的な必要性」と「感情(勘定)」との両方が揃わないと、住宅という大きな財産を、みんなで揃って処分するという決定はできないのです。
老朽化の場合には、物理的劣化(経年による建物の劣化)、機能的劣化(設備の陳腐化による機能の劣化)、社会的劣化(生活要求水準の変化に伴う劣化)により、現状マンションで改善・対応するためには多額の費用を要する為、建替えを検討するというものです。
旧耐震の場合は、1981 年6月1日以前に建築確認申請を受けて建築されたマンションは、旧建築基準法の基準のため耐震性に不安があるケースが多く、耐震診断をおこなった結果、対応が必要と判断されたが、耐震補強には多額の費用を要するため、建替えを検討するというものです。
また、地震等による損害の場合、それを修繕するために多額の費用が必要となるため、建替えを検討するというものです。
いずれの場合も、前述のとおり「現状のマンションを維持修繕していくよりも建替えた方が良い」合理的な理由がないと難しいのです。
まず最初に考えること
相談いただく所有者の方は「建替えありき」の方が非常に多いです。一方で、マンションには様々な所有者が存在しており、少なくともこの時点では、全員が建替え賛成派ではないことを理解することが重要です。最初から建替えを前提とするのではなく、現状の建物を維持修繕していくことも選択肢の一つなのです。以前、建替えのプラン説明会に出席した際、強烈な反対意見を浴びせられた経験があります。その時も決して建替えありきではなかったのですが、反対派の方からすると、建替えすることが既に決まっていて、これから具体的に進めていくように見えたのだと思います。
マンション建替えでは、住人の合意形成が欠かせません。所有者一人ひとりは、全員個人の事情が異なります。これから建替えを検討するマンションにおいては、現状建物の維持(修繕)と建替えの2パターンについて、十分に比較検討していく姿勢が求められます。
マンション建替えにおけるハード上の問題点
とは言え、建替えに賛成する人も反対する人も、具体的なプラン(再建築建物の概要や手出し費用の有無)が分からなければ、判断のしようがないのが事実です(プランが出る前から賛成している賛成派の人が、プランを見た途端に反対派になったり、その逆もあります)
但し、建替えのプランを管理組合だけで立案することは難しく、専門会社へ相談するケースが多いでしょう。その際に、どこに相談すれば良いかわからないということで、私どもへご相談をいただいております。
現状の立地や法律に基づいて再建築した場合、どのような建物が建築できるか、そのために必要な費用はどれくらい必要か、間取りや建替えまでの期間はどうなのか、と言ったハード上の問題については、やはりプロに提案してもらうのが一番早いでしょうか。
一昔前までは、容積率や高さ制限等の問題から、建替えに好条件の立地は少ない状況でしたが、最近では容積率緩和や補助金など、行政による後押しが進んできました。
あなぶきグループでは、マンション建替えのご相談を承っておりますので、お悩みの際はお気軽にご相談ください。
マンション建替えにおけるソフト上の問題点
建替えプランが提出されたら、次は現状建物の維持修繕と建替えを比較検討することになります。金銭面だけでなく、引越し・仮住まいや各種手続きによる居住者への負担も踏まえて、フラットな状態で比較することが求められます。その過程において、住民説明会やアンケート調査を活用して、建替えの必要性やメリット・デメリットをしっかりと説明していきます。また、建替えを進めていくための専門委員会等を発足させて、所有者の中からリーダーシップを取れる人物が中心となって合意形成を進めていく形が望まれます。私たちのような専門会社がコンサルタントで入らせていただいた場合でも、やはり所有者の中から建替えを進めていく推進メンバーを選出して、推進していく形をお願いしています。部外者が中心で進めていくか、所有者の代表者が進めていくかでは、最後の承認の段階で差が出てくるものです。
問題点を解決するためには
マンション建替えに限った事ではありませんが、管理組合で合意形成をするために、日頃からコミュニティ形成を意識した運営を心掛けることと、透明性を持った進行をすることが求められます。普段の総会にほとんど出席者がいないマンションで、5分の4の承認を取る為に活発な議論を重ねていくことは本当に難しいです。所有者が管理組合の活動へ興味を持っていただき、イベント等を通じてお互いの顔が分かり、エントランス等で挨拶がおこなわれるようなマンションにしておきたいですね。
また、大きなお金が必要な議論だからこそ、資料や検討の過程を出来る限りオープンな形にしておくことも重要です。進めている当事者に意識がなくても、一部の所有者だけで進めていると思われることがあり、一旦そのような状況になると、信用を取り戻すのにも時間がかかります。
まとめ
マンション建替えは、マンションの中で行われる合意形成の中でも、一番難しく、時間のかかる問題です。急いで進めようとせずに、自分たちのマンションにおいて、何がベストな判断なのか、全所有者でしっかりと協議してください。
特に、最初の段階では、時間をかけて進めていくことが、結果的には建替え成功の近道になると思います。また、所有者全員の同意を得ることは極めて難しいと割り切って進めていくことも必要です(場合によっては、訴訟になるようなケースもあります)。
マンションというコンクリートを作るハード面の話なのですが、結局は、ソフト面である所有者の合意形成が成否の決め手となるのです。
マンション建替えの詳細は、あなぶきグループのマンション建替え専用HPサイトをご覧ください。
<参考記事>
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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