消防設備点検に関するお話し

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こんにちは。東京ファシリティサービスの西部です。
弊社は日頃、皆様のマンションに定期的にお伺いをさせていただいて、万一の火災に備えた機器の点検をさせていただいております。
そこで今回は、弊社主要事業の1つであるこの消防点検のお話しをさせていただきます。

1. 消防点検の概略

「消防設備点検」とは消防法第17条で定められている法定点検制度となっており、同法文は下記のように記載されています。(※さらっと、赤字だけ読んでいただいても大丈夫です。
【消防法第十七条】
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるもの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するよう、政令で定める技術上の基準に従って設置し、及び維持しなければならない。
 (第二項以下省略) 消防法第十七条の三の三
第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあっては自ら点検、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。

法律の条文なので専門的でかつ、法令が階層構造 (消防法にすべてを書くのではなく、下位の法令として「消防法施行令」「消防法施行規則」が存在し、細かい内容はこちらで定めている) になっているので、分かり辛い文章であると思われます。しかしながら皆様には、「消防点検」とその「報告」は国が定めた法律に則った義務であることを理解していただければと思います。

2. 点検・報告の責任を負う者

【消防法第十七条第三の三】
原則としてその建物の管理組合理事長やオーナー等 (法令上は「関係者」・以下「オーナー等」とします) 実施する (実施させる) 責任を負います 後項に記載する通り、実際の点検・報告作業を専門業者に依頼することが一般的ですが、あくまでも責任はオーナー等の方が負うことになります。その為、該当の方は「業者に全て任せているから、設備が不良であることを知らなかった」や「点検記録の報告をしていなかった」等と責任を逃れることはできないのでご注意下さい。

3. 点検する時期及び頻度

【消防法第十七条第三の三】
消防設備点検にお伺いすると「この前にやったばかりじゃない!」とか「あれ? 1年に1回だっけ?」というお声をよくいただきますが、点検の頻度も以下の通り法令で決められています。
・機器点検  ⇒  6か月に 1回
・総合点検  ⇒   1年に 1回
と言うことで、通常の場合「機器点検のみの点検回」と「機器点検 + 総合点検の点検回」が6か月ごとに交互に到来することとなります。
例外はあります。例えば、下記のようなサイクルとなります。
3月:機器点検のみ ⇒(6か月後)⇒ 9月:機器点検 + 総合点検

※ 機器点検とは・・・目視による外観点検や簡易な操作による確認を点検項目に基づいて行う点検
  総合点検とは・・・消防設備の全部もしくは一部を作動させ総合的な機能を点検項目に基づいて行う点検
つまり総合点検は、機器プラス総合の点検となり、点検項目は機器点検より実質増えます。

4. 点検・報告をしないと・・・

消防設備点検を実施するために業者に委託した場合、費用が発生します。仮に消防設備点検を実施しないまま放置していたり、実施していないのに「実施した」と虚偽の報告をした場合、当該の関係者(依頼元)以下の記述の通り、罰則を受けることとなります。

【消防法第四十四条】
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処す
(十一項以外省略)
十一 第八条の二の二第一項(第三十六条第一項において準用する場合を含む)又は第十七条の三の三の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

5. 誰が点検するのか

【消防法施行令第三十六条第二項】
通常の場合、オーナー等の依頼を受けた消防設備士・消防設備点検資格者(以下「有資格者」とします)が実施ます。これには、以下の事情があります。
一定の規模の建物の点検については有資格者に点検させなければならないこととなっています。
① 延べ面積1,000㎡以上の建物
② 地下又は3階以上の階に特定用途(物品販売店舗、ホテル、病院、飲食店など不特定多数の人が出入りする事業所等)がありかつ、屋内階段が1か所のみの建物

・法的には上記以外の防火対象物であれば無資格者でも点検を行えますが、改修や整備は消防設備士(各設備の種類ごとに工事が行える資格=「甲種」と点検・整備のみ行える資格=「乙種」)しか行うことができません。また点検にあたっては専用の工具や点検機器等を所有している必要がある為、有資格者(所属する点検業者)が点検を行うことが望ましいとされています。

6. どのような設備があるのか

建物の規模や用途によっても異なりますが、マンションでみられる設備は概ね以下の通りとなります。
尚、記述の上位にあるものほど高頻度で存在します。
・消火器具・避難器具(避難はしご・避難ハッチ他)
・自動火災報知設備(住宅用火災警報器は対象外)
・非常警報設備(非常警報設備・非常放送設備)
・誘導灯及び誘導標識(誘導灯・誘導標識)
・連結送水管
・屋内消火栓設備
・防排煙制御設備(防火戸・防火シャッター・垂れ壁・ダンパー)
・スプリンクラー設備・粉末消火設備
・不活性ガス消火設備(二酸化炭素・ハロゲン化物・窒素等)
・非常電源(自家発電・専用受電・蓄電池)
※その他にも設備はありますが、今回の紹介ではここまでとします。

 

7. 点検後の依頼元への報告

消防設備点検を依頼し実際の点検が終わった後、点検業者は「消防用設備等点検結果報告書」に点検結果を記載し、依頼元に送付します。(管理会社を通じて送付する場合もあります)
・設備検査項目毎に「良・不良」の別を記載します。
・不良があった場合や改善が望ましい設備箇所がある場合、その内容を記載します。
・不良個所が分かる写真帳が報告書に添付される場合も多くあります。
※点検業者が指摘箇所の改修工事ができる場合には、改修見積書も併せて送付するのが通例です。

8. 点検結果の報告義務

【消防法施行規則第三十一条の六】
報告先管轄の消防本部・消防署・消防出張所(以下消防署等)になります。
(市町村により消防本部が異なり、受付箇所やその名称が異なるので詳しくは消防署にお問い合わせください)
報告頻度下記の報告頻度に応じて依頼元(契約に応じて管理会社・点検業者が代行する場合があります)は消  防署等への報告(提出)を行います。
 ・特定防火対象物・・・・1年に1回の総合点検実施後。
 ・非特定防火対象物・・・3年に1回の総合点検実施後。
 ・連結送水管耐圧試験及び自家発電設備負荷試験など・・・随時
報告書の提出正本 (消防署保管用)・副本 (届出者保管用)の2冊は必ず必要となります。その他控え(関係先でも保管する場合など) として必要な部数を用意して消防署等に持参しますと、正本を除き押印されて返却されます。現在は、郵送(=信書便)による報告も合わせて認められるようにもなっています。
その後返却された副本は必ず保管するようになります。(※消防署の査察の際に提示を求められる場合があります)

9. 不良があった場合の対応

不良箇所または消防署等からの指摘箇所があった場合は速やかに改修が必要となりますので、まずは消防設備業者(不明な場合は管理会社等)に相談されることをお勧めします。また消防本部によりますが、改修計画書を記載の上で提出を求められる場合があります。その場合、業者等と相談の上で改修計画書を完成して消防署等に再提する流れとなります。

まとめ

消防設備点検に関して、何となくでも理解していただけたでしょうか?
万が一の火災から建物の安全を守る為にも、決められた時期に消防設備点検を適切にいただき、不良箇所があった場合はその改修を確実に実施していただくことをお勧めいたします。(記事協力者:岩田和之氏)

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