空き家問題 改善どころか深刻化!?
今回は、2023年12月に施行された、新たな空き家問題に関する法律について解説していきます。
みなさんも十分ご存知だと思いますが、全国的に放置された空き家が増え続けており、深刻な問題になっています。『放置された空き家問題』は私が子供の頃から言われていましたが、それから数十年経って対策が進むどころか、さらに深刻化しています。
出典:住宅・土地統計調査(総務省)
1998年からの20年間で使用目的のない空き家は1.9倍にも増え、今後も更に増えると予測されています。
…私は関係ないから大丈夫だと思っている方はいませんか?
・両親が亡くなり、「空き家」を相続することになった!
・高齢の両親が施設に入居し、それまで住んでいた家が「空き家」になった!
・ある日、数代にわたり名義が放置されている不動産が発覚した!
しかも相続人は数十人もいて全く知らない人たち…
以上の3点は実際に起きていることです。これらのケースを見ると自分には関係ないと思っていたのに、ある日突然当事者になる可能性は十分にありますね。さらに、2024年4月には相続登記が義務化されるので、今まで放置されてきた3つ目の案件も今後増えることが予想されます。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」とは?
以前は、朽ち果てたまま放置された危険な状態の空き家でもあっても、市町村が勝手に除去することはできず、周辺住民への危害や生活への悪影響の問題を抱えていました。
そこで、2015年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が制定されました。
法律の内容は?
周辺住民に迷惑がかかる空き家は…
・市町村より助言・指導・勧告・命令を受けます
・勧告を受けると住宅用地特例が解除され、固定資産税が高くなります
・市町村からの命令に従わなければ、過料が課されます
・市町村の判断で除去が可能であり、除去費用の請求がきます
というものです。この法律の対象になる空き家を特定空家といいます。
特定空家とは?
特定空家とは空き家のうち、
・倒壊や崩壊の危険性がある
・衛生上有害となる
・著しく景観を損なう
・周辺の生活環境の保全上不適切
といった状態の空き家のことを指し、市町村の調査のもと指定されます。
出典:総務省
特定空家に指定されると…
・住宅用地特例が解除され、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります
・命令に従わない場合、50万円以下の過料があります
・行政代執行により、撤去費用等の徴収があります
…恐ろしいですね。しかし実際のところ、朽ち果てていない空き家であれば特定空家に指定されないため、結局は放置されたままの空き家が数多く存在しているのが現状です。
空き家を放置してしまう人は、
・解体に費用が掛かる
・荷物を片付けられない
・売却が面倒
・将来、自分や子供が使うかもしれない
との理由でそのままにしているケースが多いです。
また、目の前に自分が所有する朽ち果てた空き家があればいざ知らず、移住をして空き家から遠く離れたところに住んでいる、相続が繰り返された果てによくわからない土地建物の所有権を持ってしまった、なんて状況だと実感もわかないのでしょう。
特定空家になる前の対策
この「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が制定されて数年…国は気が付きました。
特定空家になってからの対応では限界!
そもそも特定空家になってからでは遅い。そうなる前の対策が必要じゃないか!
ということに…。
そこで「空き家」がこれ以上増えないように、「空き家じまい」と「空き家の新たな活用」を推進すべく2023年12月に法改正されました。
改正点、一番のポイントは?
ということです。
管理不全空家とは
管理がされておらず、そのまま放置すれば特定空家になる恐れのある空き家のことをいいます。
特定空家のように命令や代執行はできません。
なので、過料を科されることや代執行による空き家の除去は行われません。しかし…
指導・勧告は行われます。
勧告を受けると住宅用地特例が解除され、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります。
まだ大丈夫だと空き家を放置している人も、市町村から指導や勧告がきたり、支払う固定資産税が増えるとなると早くどうにかしなければ!と考える人が多くなりますね。
主な改正点は…
この法律では、
「所有者は国、自治体の施策に協力することが求められます。」
①活用
・所有者が空き家の用途変更や建替えをしやすくなるように規制が緩和されました
・所有者への情報提供や相談対応、市町村の所有者探索等のサポートを行う支援法人制度ができました
②管理
・「管理不全空家」の指定
指導・勧告を受ける可能性と、住宅用地特例の解除による固定資産税増額の可能性が加わりました
・市町村が電力業者等からの情報提供を要請できるようになりました
③特定空家の除去
・特定空家がさらに除去しやすくなりました
以上のことが新たに制定されました。
金銭面での改正点
次に、この法律の金銭面での改正点を見ていきましょう。
フラット35の地域連携型の金利引き下げ期間を5年間から10年間に延長
→従来、空き家の取得や改修を対象とした住宅ローンを組んだ場合、金利が5年間下がる(-0.25%)制度がありました。改正後はさらに5年間、金利引き下げ期間が延長されます。
相続した空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の期限延長と拡充
→従来、相続人が相続した空き家を売却した場合、税金の対象となる利益が、最大で3,000万円特別控除される税制の特例がありました。この特例の期限が4年間延長され、2027年12月31日までになりました。
また、買主が譲渡後に耐震改修または除去した場合も同様に適用できるように拡充されました。
特定空家だけではなく、管理不全空家についても固定資産税の住宅用地特例が解除されるケースが発生します。
まとめ
今後も、日本では人口が減少する一方で高齢者が増えると共に、空き家も増えていきます。現在所有している空き家を放置しないことは当然ですが、両親が亡くなった後の家をどうするか、大量の荷物を整理しておくなど、事前に家族で話し合っておくことも重要ですね。
遠藤佳代
財務・経理本部 経理課
遠藤 佳代(えんどう かよ)
東京都出身 2008年入社後、2011年にあなぶきグループの一員になりました。
マンション会計課にて管理組合の会計業務に携わったのち、現在は経理課で会社の経理業務に従事しています。
皆様の身近で関心のある、お金にまつわる情報を発信していきます。
趣味:旅行(国内外問わず)・サッカー観戦(Jリーグ)
資格:日商簿記二級・管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
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