不活性ガス消火設備(二酸化炭素・窒素他)が作動した場合の行動について

北村順平

こんにちは。テクノ防災サービスの北村です。

今回は「不活性ガス消火設備」、特に「二酸化炭素消火設備」のお話をさせていただこうと思います。

この名称、普段からニュースをご覧になっている方ですと、「聞いたことがある名前だな」と思われたかもしれません。

実は、弊社の所在する東京都内でも今年に入ってから2度も不活性ガス消火設備の一種である「二酸化炭素消火設備」が誤作動し、人命が失われる事故が発生してており、マスコミのニュース等でも取り上げられているのは記憶に新しいところかと思います。

その時の現場での事情等につきましては、関係機関等で調査を進めておられることもありコメントできる立場ではございませんが、今回は一般的な事例として「不活性ガス消火設備による窒息の危険性」と、「不活性ガス消火設備が起動してしまったら」について記載したいと思います。

I. 不活性ガス消火設備による窒息の危険性

1. 不活性ガス消火設備が消火を行う原理

一般に、物が燃えるためには下記の要素が同時に必要とされます。(燃焼の3要素といいます)

可燃物:燃えるもの(木材・紙・油脂・ガス等。金属も条件によっては燃えます)

酸素:酸素供給源となるもの(空気中の酸素・酸化剤等)

熱源:燃焼する温度に達するエネルギー(火炎・電気火花・摩擦熱・化学反応熱等)

このことから、消火するには以下のことをすればよいことがおわかりいただけるかと思います。(消火の4要素といいます)

除去効果:可燃物を取り除き消火する。

窒息効果:酸素の供給を絶ち消火する。

冷却効果:燃焼物の温度を下げ燃焼を中断させる。

負触媒効果:可燃物の酸化が進まないようして燃焼を中断させる。

不活性ガス消火設備の場合、上記のうち「窒息効果」により消火する仕組みとなります。

即ち、防護区画(ガスが放出される区域)内の酸素を二酸化炭素によって燃焼が不可能な濃度に下げることで消火を図るわけです。

 

2. 二酸化炭素消火設備による窒息とは

一般に、人体にとって二酸化炭素消火設備による窒息は以下のように起きるとされます。

酸素濃度の低下によるもの

人間は肺に外気を取り入れて呼吸をしますが、このとき人体が放出するガスの酸素濃度は16%程度であるとされます。通常は外気中の酸素濃度が21%程度である為、外気中から人体内に酸素が入ってくる形となりますが、外気の酸素濃度が16%を割る状態の場合には逆に体内の酸素を奪われてしまう状態になり、死に至る危険性があります。

二酸化炭素濃度の上昇によるもの

また、二酸化炭素の場合は毒性(麻酔性)があり、外気中に3%以上存在すると「めまい・吐き気・頭痛」などを及ぼし、更に濃度が上がると意識消失や死に至る状況となります。

 

II. 火災でないのに不活性ガス消火設備が起動してしまったら

不活性ガス消火設備が起動される場合、けたたましいサイレンと共に「火事です。消火剤を放出します。危険ですので避難してください」という音声が繰り返し流れ、その後消火剤が放出されます(特に二酸化炭素消火設備の場合は20秒以上の「遅延時間」をおくこととなっています)。

この場合の「消火剤」とはガス消火設備の場合「ガス」であり、殊に二酸化炭素など窒息効果により消火するガスの場合、「窒息の危険がある」ことを意識していただきたいと思います。

(「消火剤」という表現からか、「液体や粉末の消火剤が噴射されるもの」と誤解されている例が見受けられます)

もし、火災が発生しておらず、または作業中などの理由で防護区画(ガスが放出される区域)に人が立ち入っている場合には、以下のように回避します。

 

1. 手動起動装置付近にいる方の場合

手動起動装置(操作盤)の付近にいる場合、遅延時間が経過する前に「非常停止」ボタンを押下することで、ガスの放出が中止されます。

(遅延時間が経過しガスの放出が始まってしまった場合、止めることはできませんので後項2に従い防護区画内の方を避難させる以外に方法はありません)

但し、この場合消火剤が放出されませんので、実際に火災があった場合、消火自体は全員の退避確認後に手動により再起動して対応することとなります。

 

2. 防護区画内にいる方の場合

防護区画にいる方の場合、一刻も早く防護区画から退避します

(通常、防護区画は誘導灯・扉等により容易に脱出できるように設計されています)

更に、二酸化炭素消火設備の場合、隣接区画にもガスが漏れだして危険な状態となりますので、近づかずに少しでも離れる(可能ならば建物外に避難する)ようにします。

 

III. 結び

このような事態が起こらないよう、行政機関や消防機関では二酸化炭素消火設備がある区域で作業を行う場合、その建物の二酸化炭素消火設備を熟知した消防設備士や消防設備点検資格者を立ち会わせるよう呼び掛けています。

それに加えて、個人レベルでも日頃から設備の意味や警告の意味を把握していただくことで少しでも安全に寄与できるならば幸いです。

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北村順平

テクノ防災サービス 北村 順平(きたむら じゅんぺい)
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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