「特定建築物定期調査」で調査する内容とは②

北村順平

こんにちは。テクノ防災サービスの北村です。
今回も前回に引き続き、「特定建築物定期調査」の調査内容についてお話させていただきたいと思います。
前回の記事は下記からご覧いただけますので、併せてお読みいただけますと幸いです。

「特定建築物定期調査」で調査する内容とは①

1.【屋上及び屋根】の調査内容

今回はじめにご説明するのは“屋上及び屋根”の調査項目です。

〈屋上面〉
屋根や屋上等は雨を直接受ける位置にありますが、コンクリートの躯体のみでは水の侵入を防ぐことが難しいためアスファルト等で防水層が設けられることが一般的です。更にその上から断熱ブロックやクリンカータイル、防水モルタル等の仕上げ材で保護層を構成しており、それらに劣化や損傷がないか調査しています。

〈屋上回り〉
屋上の周囲にある立上がり壁のことをパラペットといいます。これは防水層の端部の処理や、屋上を利用するための危険対策などとしての役割を持っています。パラペットの天端部には金属やモルタルなどの笠木が施されておりますので、これらに変形や錆などがないか調査しています。
また、屋上に設置された排水溝に不具合が発生すると漏水だけでなく屋上全体の劣化に直結するため、その状況を調査することも大切です。

〈屋根〉
屋根の材質には瓦、ガラス、プラスチックや金属など多種多様なものが使用されており、材質により耐用年数や劣化の現象が異なります。それらに劣化や破損が見られると強風時等に飛散の恐れがあるため、事前に調査することが重要となっております。

〈機器及び工作物〉
みなさんの住んでいるマンションの屋上には生活を支えるための設備機器や、工作物などが設置されていることがあります。マンションによって設置されているものは様々ですが、よく見かけるものをいくつかご紹介します。

◇広告塔
鋼材で組立てられた架台に広告板を取付けたもので、基礎となる「支持部」、骨組等の「接合部」に分けられます。

◇高置水槽
金属製の物もありますが、多くの場合は強化プラスチック製です。材質により、劣化の現象は異なります。

◇手すり
パラペットに埋め込まれたものや、離れた場所に独立して設置されたものがあります。鉄製のものは錆びやすく、設置個所の周辺に劣化等の悪影響を与える他、落下事故につながる恐れもあります。

2.【避難施設等】の調査内容

つぎに“避難施設等”の項目についてご説明いたします。
建築物には原則として2つ以上避難経路を設けることとされています。これは災害時に火や煙によって片方の避難経路が通行不可能となった場合でも、もう一方から安全に避難ができるようにするためです。
避難経路は階段だけとは限らず、建築物の用途や規模、階数によっては(避難上有効な)バルコニー屋外通路等も認められています。2021年12月17日に発生した大阪のビル火災では階段が1つしか無く、バルコニー等も設置されていなかったようです。もし避難経路が正しく確保されていれば、救われた命があったかも知れません。

〈廊下〉
廊下の幅員は新築当初は問題がなくても、家具や自動販売機が置かれたり、間仕切りの変更などがあると必要な幅員が失われることがあります。特に多くの人が利用する避難経路においては避難時間が長引くことに繋がるので、常日頃から気を配ることが必要です。

〈出入口〉
建築物の避難階にある出口は、その建築物から避難してきた多くの人々が外へ避難するために重要なものです。
改修や撤去等によって封鎖されていたり、不適切な方法で施錠されていると必要な時に使用できないため、常に使用できるよう確保されていることが大切です。また、荷物やごみ等で塞がれていたり、扉が開かなくなっていいないかも調査しています。

〈バルコニー〉
共同住宅に設置されたバルコニーの内、ほとんどが隣接住戸への脱出口や下階への避難器具が設置されており、避難経路としての機能を備えています。バルコニーに荷物が多く積まれているとそれらの機能を失ってしまい、災害時に避難できなくなる恐れがあります。また、荷物が可燃物であった場合はそれらに火が燃え移り上階まで延焼が拡大してしまう可能性もありますので、バルコニーを物置代わりに使用することは避けるべきだと言えます。

〈階段〉
みなさんの住んでいるマンションに設置された避難用の階段は、屋内のものと屋外のものがあります。
屋内のものは階段室を囲む壁や天井の材質、壁に設ける開口部の位置や大きさなどに規定があり、階段の出入口の扉は避難する方向に手動で開放することが可能で自動的に閉鎖する、などの規定があります。
屋外のものは外気に開放されているため屋内に比べて煙に対する安全性は高いと言えますが、日常的に使用されていないことが多いため物品放置や不適切な施錠など、避難に支障がある可能性があります。また、風雨にさらされることから錆や腐食等の恐れもあるため、これらについても調査しております。

〈排煙設備等〉
火災時に発生する煙は有毒ガスによる呼吸困難、視界の遮断などを引き起こす非常に恐ろしいものです。煙は横方向より縦方向への移動が何倍も速く、避難者を煙から守るために防煙区画を設置することは重要な対策であり、床面積500㎡以内毎に間仕切りや垂れ壁によって区画されるよう規定されています。
区画によって拡大を抑制された煙は排煙設備によって排出されます。排煙設備には機械排煙と自然排煙がありますが、皆さんの住んでいるマンションでは多くの場合が自然排煙です。下記に自然排煙装置を実際に作動させた様子を動画で載せておりますので、是非ご覧ください。

【動画】自然排煙装置の作動の様子

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は特定建築物定期調査の調査項目の内、【屋上及び屋根】と【避難施設等】についてご説明させて頂きました。特に【避難施設等】については皆さんの命に直接関わる可能性がある内容ですので、普段から意識して頂ければ幸いです。

今回はこれで終わりとなります。
それではまた次回もよろしくお願いいたします。

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北村順平

テクノ防災サービス 北村 順平(きたむら じゅんぺい)
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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