「特定建築物定期調査」で調査する内容とは①

北村順平

こんにちは。テクノ防災サービスの北村です。今回は以前ご紹介させて頂いた特定建築物定期調査について、もう少し詳しくお話したいと思います。
特定建築物定期調査の概要につきましては、下記の記事で触れておりますので併せてご覧いただけますと幸いです。

※平成28年6月の建築基準法改正で、「特殊建築物定期調査」から「特定建築物定期調査」へ名称が変更になりました。

特定建築物定期調査とは?既存不適格について

特定建築物定期調査では、大きく分類して以下の6つが調査項目となっております。

①敷地及び地盤
②建築物の外部
③屋上及び屋根
④建築物の内部
⑤避難施設等
⑥その他

それぞれの項目で劣化や損傷の状況を調査し把握することにより、事故等を未然に防いで利用する人の安全を守ることに役立ちます。

 

1.【敷地及び地盤】の調査内容

一つ目の項目では“敷地及び地盤”について調査します。

〈地盤〉
敷地内にはマンション等の建築物や門・植栽といった目で直接見る事ができるものの他に、建築物の機能や環境を維持するために必要な電気・ガス・給水などの引込み配管や、排水管及びそれらに付属される弁類やマスなどの比較的目立たない設備が多く設置されています。
特に通路や排水溝、マンホール等の周辺は一旦掘り起こした土で埋め戻しされているので、年月の経過とともに局部的な沈下が生じる可能性があります。
敷地内の本来は平らであるべき場所に凹凸ができてしまうと設備の機能に支障をきたすことや、通行時のつまづきなどの危険があるため不陸状態を調査しています。

〈敷地内の排水の状況〉
敷地内に設置された、雨水や汚水を排水するための下水管などには、スムーズに水が流れるように一定の勾配が設けられています。この上に車や重量物が乗ったりすると勾配が崩れてしまい、汚水溢れ等の原因になりかねません。正常に排水されているか、という点も調査の対象となります。

〈敷地内の通路〉
敷地内には、建築物の用途や規模等により通路を設けなければならない規定があります。これは避難活動や消火活動のためのもので、ここでいう通路は道路まで通じているものを指します。
この項目でよく見かける問題点としまして、“避難通路に塀や柵が設置されていて通路が遮断されている(通路が確保されていない)”や“敷地内の通路が自転車置き場として利用されており避難上支障がある”といったことが挙げられます。

〈塀〉
ブロックの塀は比較的簡単に施工できるため、全国的にかなりの数が設置されています。その中には耐震対策を施した新しいものから古いものまで混在しているので、倒壊の危険性について調査しています。
正常なブロック塀はブロックがお互いに支えあっているのでしっかりと安定したものですが、一部が破壊されてしまうと連携の力が弱まり、地震が無くても倒壊してしまう可能性があるので、特に道路や人通りの多い場所に面する塀は十分に注意して調査をいたします。
また、塀は板状の形をしているため横からの圧力に弱いという性質を持っています。これを改善するために塀に対して直角に設置された補助的な壁(控壁)があり、1.2mより高い塀には“長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの5分の1以上突出したものを設けること。”と規定があります。

【写真】控壁が設置されていない塀

上の写真では控壁が設置されておらず、地震が発生した際に倒壊して通行人に被害を及ぼす危険性があります。2018年の大阪府北部地震では女児が犠牲になってしまうという痛ましい事故も発生しておりますので、「たかがブロック塀」と侮ることなく対策を取る必要があります。

〈擁壁〉
擁壁は高低差のある地面で、土砂が崩れないように設けられた壁のことです。主に雑割石積み、コンクリートブロック積み、玉石積み、コンクリート擁壁などの種類があり、盛り土か切り土かによって構造が異なります。
特定建築物定期調査では、建築物からの距離が近いもの、道路や人が頻繁に通行する通路に面するもの、消防車用通路等に面するものなどに重点を絞って調査します。
擁壁は土砂崩れを防ぐことが目的ですので、擁壁自体の破損や劣化のほかにも排水処理が適切になされているかが非常に大切です。壁面には水抜きパイプが設置されているので、それらが詰まっていないか注意が必要です。

2.【建築物の外部】の調査内容

二つ目の項目では“建築物の外部”について調査します。

〈基礎〉
建築物の基礎部は上部構造の安定を図るために十分な剛性が必要で、基礎部に損傷が生じると建築物全体に影響が出てしまう非常に重要な部位です。
地盤沈下に伴う傾斜の発生や著しいひび割れの有無、扉等の開閉に支障が無いか等を調査します。

〈外壁〉
外壁には周囲の建物に火災が拡大しないよう、延焼の恐れのある部分の壁や軒裏及び開口部には、建築物の用途や規模に応じた防火性能が求められています。
また、鉄骨部分の錆や腐食は建築物の強度に影響があるため、防錆塗料等で適切に保護されているか調査することも重要です。
柱、梁、壁、バルコニー、庇等に使用されているコンクリートや、外装の仕上げに使用されるタイルや石貼りにおいては剥離やひび割れなどを調査して、歩行者への落下の危険性を事前に把握することも目的となっております。

【写真】大壁タイルの打診調査の様子

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は特定建築物定期調査の調査項目の内、【敷地及び地盤】【建築物の外部】について調査内容をご説明させて頂きました。他にもまだご紹介できていない項目がありますので、次回以降ご説明できればと考えております。

今回はこれで終わりとなります。
それではまた次回もよろしくお願いいたします。

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北村順平

テクノ防災サービス 北村 順平(きたむら じゅんぺい)
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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