掃除のプロが教えるキッチン錆のメカニズム

今回はキッチン周りのお悩みに必ずと言っていいほど入ってくる【錆(さび)】について書いてみたいと思います。
私も現場で目にすることが多くよく悩まされているのですが、皆さんの中にも悩んでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか?
実際に『入居して1カ月もしないうちに錆が出てきた』や『掃除をしているのに錆が出てくる』などの相談を受けることがありますが、『錆の発生するメカニズムを知らない』や『ステンレスの知識や認識が間違っている』といった場合がほとんどだったりします。
この【錆のメカニズム】と【ステンレスの知識・認識】が変わるとお掃除方法などが激変し、一気に悩みが解決するかもしれませんので、キッチン錆に悩まれている方はぜひご一読ください。

ステンレスと錆

『ステンレスは錆びない』といった認識を持たれている方いらっしゃいませんか?
結論から言うとステンレスは’’錆びにくい’’だけで 錆びます
なぜ『錆びない』という認識が存在しているのかというと、諸説ありますがステンレスが日本へ入ってきた当時は【腐食鋼(ふしょくこう)】と呼ばれていたため『腐食しない金属=錆びない金属』という認識として広まったと考えられています。

なぜステンレスが錆びにくいのかというとステンレスは【不動態皮膜(ふどうたいひまく)】と呼ばれる耐食性を持った保護皮膜に覆われており、この皮膜が破られてもステンレス自身が不動態皮膜を自己修復しているからなのです!(・□・;)スゲー
しかし、この皮膜は数ミクロンというとても薄い皮膜で、硬いものが接触したりや強い洗剤などが付着してしまうと簡単に破壊されてしまいます。Σ(゚д゚lll)ガーン
皮膜自体は瞬時に回復しようとしますが、破壊物質が接触したままだと回復するよりも早く破壊され、そこに錆の原因となるものが付着することで錆が発生してしまいます。


錆の種類と原因物質

ステンレスに発生する錆は大きく分けて3種類に分類することができます。原因となる物質に違いがありますので見ていきましょう。

赤錆(あかさび)

自転車のチェーンなどに多く見られる赤茶色の錆を【赤錆】といい、この錆の原因となる物質は塩分】になります。塩分は不動態皮膜を破壊し、そこに残留し続けることで腐食させていきます。
お料理をする際に調味料を使いますよね?実はその調味料などに含まれる塩分こそが、錆を発生させている最大の原因になっているのです。
また、カビ取り剤に含まれる【塩素】や油汚れ用の強力な洗剤も不動態皮膜を破壊してしまい、錆を発生させる原因になりますので、カビ取り剤や強い洗剤を使用する際は長時間放置しないようにしましょう。

蛇口やシンクの周りに発生した赤錆の事例

黒錆(くろさび)

黒錆は赤錆と違い『良性』の錆に分類され、『黒錆を発生させておくとそこに赤錆が発生しない』といった特徴があり、わざと黒錆でコーティングする『黒錆加工』と言われるものまであります。
しかし、ステンレスに発生するとクレーター状にえぐれた黒い錆が発生し、見た目が悪くなるのであまりいいものではありません。
この黒錆が発生する原因は【熱】になります。キッチンでは火を使いますよね?そこで熱したフライパンやヤカンなどを直接ステンレスに置くと発生してしまいます。また、飛び散った食材や油を放置したまま料理をすると放置された食材などが何度も温められコゲとなり、そこから黒錆が発生してしまうこともあります。

コンロの周りなどに発生した黒錆の事例

もらい錆び

これは金属と金属が長期間に渡って接触し続けること発生する錆になります。
キッチンには金属でできている調理器具や調味料入れがたくさんありますよね?それらを直接ステンレス部分に長期間置いてしまうとお互いの不動態皮膜を破壊してしまい、そこから錆が発生してしまいます。基本的には赤錆が発生しますが、そこに熱が加わると上に書いた黒錆が発生してしまいます。また、すでに錆の発生しているものとの接触や錆水ももらい錆の原因となりますので注意しましょう。

予防策と除去方法

錆の予防をするにあたってまず大事なことは原因物質を除去し長期間に渡る不動態皮膜の破壊を防ぐことにあります。そして、表面を中性に保ちつつ乾燥した状態を作ってあげる必要があります。

赤錆の予防と除去

キッチンを使った後は『中性洗剤』と研磨剤の入っていない『柔らかいスポンジ』を使ってお掃除をしましょう。仕上げに水拭き・カラ拭きをしてあげると格段に発生が少なくなります

注意としては日常的に研磨剤(メラミンスポンジも含む)や強力な油汚れ洗剤を使った掃除をしないようにしましょう。(研磨粒子や洗剤の残留が皮膜の破壊の原因になるからです)
初期段階の赤錆はクエン酸とやわらかいスポンジを使うことで簡単に除去することができます。しかし、長期間発生したままにしていると腐食が進行し除去できなくなってしまいますので赤錆の放置は絶対にやめましょう。(進行すると穴が開き、シンクの取り換えが必要になります

黒錆の予防と除去

こちらも赤錆と同様に使った後のお掃除をしましょう。また、主な原因となる熱した調理器具などを直接置かないことも重要です。
そして発生してしまうと完全な除去は難しくなります。金属用研磨剤などを使い、丹念に磨いていくと黒い色は目立ちにくくなりますが、クレーター状にえぐれてしまった部分は元に戻りませんのでできる限り発生しないように注意する必要があります。

もらい錆の予防

とにかく金属製のものをステンレスに直接置かないことが重要です。また、すでに錆の発生しているものがないか確認をしておきましょう。
金属製品に限らずシンクやコンロの周りにものを置かないようにすることは火災などのトラブルを回避したり、お掃除がしやすくなるなど良い事が多いですので率先して行いましょう。

まとめ

小難しい内容になりましたが、簡単にまとめさせてもらうと

・それぞれの錆の原因物質を除去する
・柔らかいスポンジと中性洗剤を使った日々のお掃除を行う
・お掃除の後は水拭き、カラ拭きを行い乾燥した状態にする

この3つを守ることでステンレスを錆びさせることは激減します。腐食が進行しシンクを交換しなければならなくなると、物によっては10万円以上掛かる場合もありますので大切にしてあげて下さい。

実際に現場で錆を除去した様子を動画にしていますのでよかったら見てくださいね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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神中一記

あなぶきクリーンサービス:神中 一記(かみなか かずき)

愛媛県出身。広島にて清掃管理業務を担当。
21歳で清掃の業界に入りマンション・アパート・戸建て・テナントビル・製造工場 etc...様々な建物の様々な ”汚れ” と向き合い、高所ロープ作業や樹木の剪定作業にいたるまで現場の最前線で磨いたスキルとキャリアには自信を持っております。
プライベートではわんぱく盛りの2児の父親として子育てに奮闘中。
根っからの職人気質の頑固でせっかちな若造が、『究極のハイスピード・ハイクオリティの探求』をモットーに日々精進しております。
掃除のプロとしての経験や実体験を交えながら皆様のお役に立てる情報を発信していけたらと思っております。
【保有資格】
ビルクリーニング技能士・電気工事士・消防設備士・消防設備点検資格者
高所ロープ作業技能修了・高所作業車技能修了 など
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