こんにちは、仲井でございます。今回もマンション標準管理委託契約書の学習で、「管理費等滞納者に対する督促」がテーマです。では早速中身に入ります。
- マンション標準管理委託契約書上の規定
- マンション標準管理規約上の規定
マンション標準管理委託契約書上の規定
建物の区分所有等に関する法律では、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と定められています。また、マンション標準管理規約では、「区分所有者は、敷地および共用部分等の管理に要する経費にあてるため、管理費・修繕積立金を管理組合に納入しなければならない」「管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする」と定められています。
この管理費等の滞納があった場合につき、マンション標準管理委託契約書上、「管理費等滞納者に対する督促」の規定があります。以下、説明していきましょう。
マンション標準管理委託契約書上、管理業者が受託している管理事務の内容は、事務管理業務、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務の4つに大別されます。事務管理業務は、基幹事務(管理組合の会計の収入および支出の調定、出納、専有部を除く管理対象のマンションの維持または修繕に関する企画または実施の調整)と基幹事務以外の事務管理業務(理事会支援業務、総会支援業務、その他)に分かれます。
そして、事務管理業務のうち、出納業務において、管理費等滞納者に対する督促の規定があります(別表および第10条)。
1 別表の規定
まず、マンション標準管理委託契約書「別表」では、「毎月、管理組合の組合員の管理費等の滞納状況を、管理組合に報告する」「管理組合の組合員が管理費等を滞納したときは、支払期限後○月の間(各管理組合に応じて定められます)、電話もしくは自宅訪問または督促状の方法により、その支払いの督促をおこなう」「この方法により督促しても管理組合の組合員がなお管理費等を支払わないときは、管理業者はその業務を終了する」と定められています。
滞納状況の報告では、「毎月」という部分に注意しましょう。
なお、この別表に関する「コメント」では、「マンション管理業者が、本契約書…に基づく管理費等の滞納者に対する督促をおこなう場合は、その旨を記載するものとする」「滞納者に対する督促については、マンション管理業者は組合員異動届等により管理組合から提供を受けた情報の範囲内で督促するものとする。なお、督促の方法(電話もしくは自宅訪問または督促状)については、滞納者の居住地、督促に係る費用等を踏まえ、合理的な方法でおこなうものとする。また、その結果については滞納状況とあわせて書面で報告するものとする」との記載があります。
2 第10条の規定
また、マンション標準管理委託契約書第10条でも、「管理業者は、…別表の督促をおこなっても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は管理組合がおこなうものとする」「この場合において、管理組合が管理業者の協力を必要とするときは、管理組合および管理業者は、その協力方法について協議するものとする」と定められています。「責めを免れる」と定められていますが、管理業者は一切何もやらなくなるわけではないのです。
なお、この第10条の「管理業者の協力」に関する「コメント」では、「弁護士法第72条の規定を踏まえ、債権回収はあくまで管理組合がおこなうものであることに留意し、…マンション管理業者の協力について、事前に協議が整っている場合は、協力内容(管理組合の名義による配達証明付内容証明郵便による督促等)、費用の負担等に関し、具体的に規定するものとする」との記載があります。
「管理費等滞納者に対する督促」についての規定は以上の通りです。
管理費等滞納の場合、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、競売請求等の法的手段も考えられますが、そういった手段に発展しないよう、滞納期間が短い場合、電話・自宅訪問・督促状等による督促を効果的に実施することが重要といえます。
3 その他の規定
なお、マンション標準管理委託契約書第14条では、「管理業者は、宅地建物取引業者が、管理組合の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために管理規約の提供および所定の事項の開示を求めてきたときは、管理組合に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、および所定の事項を書面をもって開示するものとする」と定められており、その「所定の事項」の1つとして、「当該組合員の負担に係る管理費および修繕積立金等の月額ならびに滞納があるときはその金額」「管理組合の修繕積立金積立総額ならびに管理費および修繕積立金等に滞納があるときはその金額」が掲げられています。
マンション標準管理規約上の規定
マンション標準管理規約でも管理費等滞納に関する規定がありますので、あわせて確認しておきましょう。
1 承継人に対する債権の行使
管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の包括承継人(相続人等)および特定承継人(この特定承継には、売却や贈与のみならず、競売を含む)に対してもおこなうことができます(特定承継人の善意・悪意を問わず、債権を行使することができます)。建物の区分所有等に関する法律にも同じような規定があります。
2 管理費等の徴収
管理費等について、組合員が所定の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%(各管理組合によって異なります)の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用ならびに督促および徴収の諸費用(郵便代、印紙代等の実費)を加算して、その組合員に対して請求することができます。これはよく本試験に出題されます。
…今日はこのぐらいにしておきましょう。民法や民事訴訟法を含め、管理費等滞納関連は頻出分野ですので、しっかりとポイントを押さえるようにしましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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